ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月13日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。自民党・甘利明税調会長が党内に「半導体戦略推進議員連盟」を発足させるというニュースを受け、国際的な半導体産業の現状について、国際技術ジャーナリストの津田健二氏を電話ゲストに迎えて解説した。
自民党、5月中に「半導体戦略推進議員連盟」創設へ
自民党の甘利明税調会長は5月12日、党内に新たに「半導体戦略推進議員連盟」を発足させる考えを、産経新聞のインタビューで明らかにした。5月下旬に初会合を開き、甘利氏が会長を務め、安倍前総理と麻生副総理兼財務大臣が最高顧問に就任する。
飯田)5月13日の産経に詳しくインタビューが掲載されていますが、甘利さんは「半導体戦略」をかなり推していらっしゃるということです。
鈴木)「政治的に動き出さなければいけないところまで来ている」という証明でもあるわけです。アメリカは、危機感を持って早くから動いていました。日本も動かざるを得ない状況まで来ているということです。
世界の半導体産業のなかで取り残されている日本
飯田)実際に半導体の業界はどうなのか。半導体不足というものもいろいろ報じられていますが、国際技術ジャーナリストでセミコンポータル編集兼News & Chips編集長の津田健二さんとお電話をつないでいます。津田さん、おはようございます。
津田)おはようございます。
飯田)まず、国際的な半導体産業の現状というのは、いまどうなっているのですか?
津田)ここ20年以上、世界の半導体は成長し続けています。これに対して日本はまったく停滞しているという、国際的にはそういう状況です。
飯田)日本も昔はよかったのにと。
津田)一時はよかったのですが、現在、日本は真っ平です。世界は伸びています。日本だけが取り残されている状況です。
日本の半導体企業で世界で戦えるのは3社のみ
飯田)最近、半導体が足りないと言われていますが、どうなのでしょうか? 日本企業でできるものなのですか?
津田)現在、日本企業で世界と戦えるところは3社しかありません。ルネサスと、キオクシアと、ソニーの3社しかないのですが、それぞれ、例えばキオクシアさんはNAND型フラッシュという、USBメモリに使われているものですけれど、それしかやらない。ソニーさんは、ほとんどはイメージセンサーと言いまして、スマホのカメラなどに使うのですが、それしかやらない。ルネサスさんだけは、車にはいろいろな半導体が使われていますが、それをほとんど一手につくれるという状況です。
飯田)みんな分業化しているのですね。
津田)そうです。だから、日本の得意なところは、大手のうち特にキオクシアとソニーはかなりのレベルまで来ているのですが、どちらもあまりにも単品です。そういう状況です。
日本国内がメインであった日本メーカーは設備投資して来なかった
飯田)日本の状況は海外の流れとは違うのですか?
津田)海外も分業が多いのですが、特に韓国と比べると量があまりにも少な過ぎます。サムスンというのはメモリの量がとても多いのです。ほとんどメモリだけでやっているような会社ですから。
飯田)技術開発にお金を注ぎ込んだということですか?
津田)技術開発というよりも、設備投資に韓国はお金を注ぎ込んだのです。工場のキャパシティを増やして、たくさんつくれるようにした。いろいろなお客さんに対応できるようにしました。日本の場合、最近はグローバルに見るようになっているのですが、いままで日本国内がメインだったものだから、小さいままで行かざるを得ない。いま、東芝のキオクシアなり、ソニーなりは、大きなスマホメーカーに納めているのです。だから、海外と一緒になって成長できているのです。国内のメーカーと一緒になったら、なかなか成長できないというのが現状です。
半導体の「設計と製造」どちらも中途半端な日本
飯田)そうなると海外、特にアメリカなどの会社と組むようなことになるわけですか?
津田)そういうことです。アメリカなり、ヨーロッパなりと組んで、スマホをつくるとか、パソコンをつくるということになるわけです。
飯田)台湾の会社が伸びているというのは、その辺りに事情がありますか?
津田)台湾はファウンドリーと言いまして、製造だけに特化しているのです。
飯田)設計などはやらないのですね。
津田)半導体を大きく分けると、「設計と製造」に分かれるのですが、アメリカは設計が強く台湾は製造が強いという、そういう棲み分けになっています。日本は両方やるのだけれど、どちらも中途半端という状況です。世界の流れに比べると、日本だけが浮いているという感じです。
半導体はシステムの頭脳
飯田)半導体が重要になって来ると、サプライチェーンの話も日米首脳会談などで出ますが、この先、半導体を日本はどのようにやって行けばいいですか?
津田)海外と日本のいちばん大きな違いは、日本は総合電気という親会社が上にいて、その下に子会社として半導体産業があるのです。しかしアメリカもヨーロッパも台湾も、どこの国もそうですが、半導体だけで独立しているのです。サムスンは特殊ですけれど、それ以外のすべての企業はみんな半導体だけで独立しています。いま半導体は大きく変わっているのです。昔、日本では「産業の米」などと言われていましたが、その意識がまだあるのではないかという気がします。
飯田)未だに。
津田)米ならば輸入すればいいし、あるいは代わりにパンもあるし、パスタもある。何でもあるではないですか。しかし、いま半導体は米ではなく、システムの頭脳になっているのです。すべてのものが頭で考える、そのための頭脳が半導体なのです。頭脳が切れてしまったら、全然動きが取れないではないですか。日本のいちばん弱いところは「頭脳が弱い」という部分です。これを上げるためには、それぞれが考えなければいけません。いま、東芝さんはキオクシアがフラッシュメモリーをつくろうということで一緒にやっていらっしゃるし、ソニーはCMOSイメージセンサーで一生懸命やっていますが、プラスして少しずつ広げて行くというようなことを、それぞれの会社が考えなければいけないのです。
飯田)なるほど。
アメリカの半導体会社が復活するために行ったこと
津田)昔、バブルのときにアメリカが日本に抜かれていた時期がありました。そのときは日本が51~52%の世界マーケットシェアを取ったのです。その時代にアメリカは負けてしまったけれど、どうして復活できたのかと言うと、それぞれの会社が「自分の得意なことは何だろう」と考え、世界のトレンドと合わせながら、「うちの会社はこれが強いから、こちらを強くして行こう」ということで復活した会社がたくさんあります。インテルもそうですし、TI(Texas Instruments)もそうですし、あるいは突然生まれて来たクアルコムという会社は、いまスマホの頭脳を抑えている会社です。自分たちの得意なことは何だろうかということを一生懸命やって、復活したところが多いです。
日本が半導体を復活させようとして失敗した原因
津田)ただ、日本は自分でやりたいと思っても、すべて親会社、株主が人事権も持っていますから、変なことをやると首を飛ばされてしまうわけです。
飯田)なるほど。そうなると無難なものをやって行かざるを得ない。
津田)そうです。いままで日本が半導体を復活させようとして失敗した原因は、みんなそこにあります。
飯田)なるほど。
津田)例えば、ヨーロッパは特にそうなのですが、インフィニオンという会社は、いまは世界のトップ10位~11位くらいの会社なのですが、ここはシーメンスという会社から独立したのです。親会社の株は現在ゼロですから、完全な独立です。
飯田)それくらいの腹の括り方をしないといけないということですね。
津田)そういうことです。
飯田)なるほど。わかりました。
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