「台湾を武力統一したら割に合わない」と中国に思わせる体制構築が課題~自衛隊が米・仏と共同訓練

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月14日放送)に前統合幕僚長の河野克俊が出演。5月11日に始まった陸上自衛隊と仏陸軍、米海兵隊による共同訓練について解説した。

中国は2020年10月14日午前、広東省深セン市で深セン経済特区〈SEZ〉設置40周年を祝う盛大な大会を開いた。習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席がこれに出席し、重要演説を行った。〔新華社=中国通信〕写真提供:時事通信社

自衛隊がアメリカ・フランスと初の国内共同訓練

陸上自衛隊とフランス陸軍、アメリカ海兵隊による離島防衛を想定した共同訓練が、5月11日から九州で始まった。フランス陸軍が国内の訓練に参加するのは初めてである。連携をアピールし、海洋進出の動きを強める中国を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられている。

飯田)海上でも、日米仏プラスオーストラリアの海軍で演習を行うということで、まさに多国間です。

河野)いまは海洋において、我々の行動と中国の行動がぶつかっているような感じです。私はこれだけ経済発展した中国が海洋進出するということはある意味当然だし、理解できます。

飯田)理解できる。

河野)歴史的にポルトガルやスペインもそうですし、イギリス、オランダ、アメリカ、日本もそうですよね。経済発展にともなってシーレーンの重要性や海洋権益などがありますから。

中国とクアッドの価値観の違い

河野)問題は、自由で開かれたインド太平洋を構成している国々は、「海洋は自由なのだ」というのが基本だということです。「みんなで使ってみんなで発展しましょう」というのがコンセプトなのです。ところが、中国はここが違うのです。例えば「第1列島線の内側は我々のものだ」と言ったり、南シナ海で九段線(牛舌線)と呼ばれているのですが、「ここは歴史的に自分たちのものだ」と言って、海洋の自由を阻害する価値観なのです。これが我々クアッドと言われる国々と違うところです。利害が違っているのであれば、調整のしようがありますが、これは価値観の違いなのです。基本的に国際法の精神から言えば、海洋は自由なので、中国に考え方を変えてもらわなければいけないのです。

飯田)中国は陸上の陣取り合戦を、海の上でもやれると思っているわけですか?

河野)そうです。陸上の陣取り合戦の発想なのです。そこはやはり大陸国家の発想ですよね。

飯田)ランドパワーの国であるということですね。

中国には多国間で対応する方が効果的

河野)そしてイギリス、オランダ、ドイツがこちらに来ると。日本列島が世界の安全保障のフロントラインになってしまったので、欧州各国もこのような形で来ているのだと思います。中国という大国に対して1対1というよりも、多国間で「我々の考え方が普通なのだ。君たちに考え方を変えてもらわなければいけない」ということで対応した方が得策だと思うのです。中国とASEANとの関係を見ても、中国はどちらかと言うと1対1でやろうとするのです。

飯田)そうですよね。フィリピンやベトナムなどと。

河野)それが中国にはやりやすいわけです。ASEANでまとまって来られると、中国も「ちょっと」という感じになるので、中国には基本的に多国間で対応した方がいいと思います。

談話を発表する台湾の蔡英文総統。中国からの選挙介入を防止する「反浸透法」に署名し公布したことを明らかにした=2020年1月15日 台北の総統府 写真提供:産経新聞社

中国に「台湾を武力統一したら割に合わないぞ」という体制を日米で構築することが課題

飯田)日本列島を含めた第1列島線が世界のホットラインになって来た。これを冷戦時代と引き比べて考えることが多いと思うのですが、そうすると、ある程度の力と力の対峙というところで、ミサイルが重要になって来ます。日本記者クラブで河野さんが会見されたときにも質問が出ていましたが、中距離ミサイルのアンバランスが問題になっていますよね。

河野)原因はもともと米ソ、米露で結んだ、中距離ミサイルを制限するINF条約をゼロにしてしまったことにあります。いま中国側に中距離ミサイルが1200~1300ほどあると言われているのですが、インド太平洋でのアメリカのミサイルはゼロなのです。このミサイルギャップをアメリカはとても気にしている。要は台湾で戦争をしようというわけではなく、台湾に対しての武力統一を中国は否定していないのです。武力統一などをすると、この地域は大混乱になります。日本にも大きな影響があるわけです。それをさせない体制、中国に「台湾を武力統一したら割に合わないぞ」という体制を日米で構築することが課題で、デービッドソン大将もそう言っています。そういうことになれば話し合いの余地も出て来るし、現実的に「力なしの外交」というのは、基本的には成り立たないと思います。これが抑止力になるのです。

中国をミサイルについての交渉テーブルに着かせるためにも、ミサイルの配備が必要

飯田)その部分でアメリカに中距離戦力を増強できるのかというところですが、中距離だからアメリカ本土には届かないのですよね。

河野)そうです。

飯田)でも日本は射程に入る。

河野)そうです。

飯田)これが冷戦末期の80年代にあった、INF全廃条約を結ぶ契機になった出来事と被りますよね。

河野)中距離ミサイル問題が出て来れば、日本でも国論を二分するような大きな議論になると思います。冷戦中はSS-20というミサイルをソ連がヨーロッパに配備しましたが、「ヨーロッパには撃てるけれどアメリカには届かない」ということで、ヨーロッパはアメリカが助けに来てくれないのではないかと不安に感じたのです。そこでヨーロッパ諸国はどういう決断をしたかと言うと、アメリカにヨーロッパから頼んでミサイルを配備してもらったのです。アメリカが配備して、そこで交渉が始まり、「お互いにゼロにしましょう」ということになったのです。いずれにしても、中国は中距離ミサイルについての交渉は拒否していますから、テーブルに着かせるためにも、ミサイルがないと交渉も始まらないというのが現実だろうと思います。

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕=2021年3月7日 写真提供:時事通信

アメリカが第1列島線に配備をすれば軍事バランスは、オセロゲームのように逆転する可能性がある

飯田)参考になると思うのは、核ミサイルを向けられたヨーロッパ各国のなかで、イギリス、フランスは核を持っているけれど、ドイツは持っていない。そのときにドイツは左派政権というか。

河野)社会民主党のシュミット首相だったと思います。

飯田)そうですよね。でも、こっちに来てくれと。そしてあのときドイツは核の共同管理まで。

河野)そうです。デュアル・キー、二重鍵と言うものです。

飯田)日本がいま直面している状態と、あのときのドイツは同じように思うのですが。

河野)先ほど「フロントラインに立ってしまった」と申し上げましたけれども、そういう意味では、冷戦中の西ドイツの立場に日本が立ってしまったとも言えるのです。いま言われたような核の問題なども、日本にとっては、とてもセンシティブな問題ですので、私も何とも言えませんが、そういう話に発展する可能性はあります。

飯田)あのときはアメリカが退いてしまうかも知れないところを、ドイツが死に物狂いで首根っこを掴み、ヨーロッパに引き込んで来たと。それくらいの気概が日本にも必要だということですか?

河野)ソ連が全廃に応じたのは、ソ連にとっても不利なのですよ。自分たちはアメリカに届かないけれど、アメリカのミサイルはソ連に届く。ソ連としては、「何だこれは」という話になったのです。中国についても、アメリカが第1列島線に配備をすれば、アメリカのミサイルは中国本土に届くけれども、中国の中距離ミサイルはアメリカには届かない。ICBMを持っていたとしても。ここの軍事バランスは、オセロゲームのように逆転する可能性があるわけです。今後の展開は注目されるべきだと思います。

中国は軍事バランスが中国に傾きつつあるときを狙って台湾統一を目論む

飯田)だから中国は、その前に既成事実をつくろうとする。

河野)デービッドソンさんが6年と言いましたけれども、中国の台湾統一は悲願ですが、「ときが経てば経つほど中国が有利になる」とは思っていないはずなのです。「アメリカは巻き返して来る」と思っています。ですからこの5~6年、「軍事バランスが中国に傾きつつあるこのときを狙って来るのではないか」というのが、デービッドソンさんの見方ではないかと思います。

飯田)それを睨みながら日本はどうするのか。

河野)そうですね。平和的な解決は大前提ですが、これは中国の意思次第です。それが崩れた有事に、日本がどうするかということを考えておかなくてはいけないわけです。

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