ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。30の自治体がモデルナ製ワクチンを使用し、独自の接種会場でワクチン接種を進める予定であるというニュースについて解説した。
30の自治体が独自の接種会場でモデルナ製ワクチン使用へ
河野太郎行政改革担当大臣は、新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種について、30の自治体が独自の接種会場を設け、米モデルナ製のワクチン接種を進める予定であることを明らかにした。
飯田)具体的な自治体の名前や規模などについては、言及を避けたということですが、個別接種と自治体の独自接種会場と。
佐々木)いままでは基本的にクリニックや病院など、かかりつけ医でワクチンを打つか、もしくは自治体がそれぞれ小さな会場をつくってそこで打つというやり方でしたが、数ヵ月前から、欧米では「大規模接種会場を設けた方がうまく行っている」という話が流れて来たのですね。
飯田)大規模接種会場を設けた方が。
佐々木)医学誌が2ヵ月前にそういう論文を掲載しています。小規模な接種をやっていると、それぞれのデータを集めるのが大変なので、大規模な場所でやった方がデータを統合しやすい。あと、スタッフにも慣れが必要ではないですか。小さなところでやっていると、回数が少ないので慣れるまでに時間がかかるけれど、大規模なところで何百人、何千人と打っていると、スタッフ側も慣れるのが早い。それと副反応です。アナフィラキシーショックが起きたときには、大規模接種会場の方が対応しやすいということで、大規模接種会場の方がいいという話が流れて来たため、日本政府もこの数ヵ月内で、急に「大規模接種会場をやるのだ」となったということです。これが「拙速を招いた」と批判されているわけです。
大規模接種ウェブ予約の不備~短期間での作業で仕方ないところもある
佐々木)話題になっていますけれども、朝日新聞系のAERAや毎日新聞が書いていますが、自衛隊がやっている大手町などの大規模接種会場について、整理券の予約システムが穴だらけだと。要するに「接種券の番号と個人情報が結びつかないで、適当な番号を入れても通ってしまう」と書いていますが、これは仕方がない部分もあるのですよ。なぜかと言うと、自治体が接種券番号と個人情報が紐づいたデータを持っているのですが、全国市町村は約1400あるのですね。このデータをすべて集約して自衛隊、防衛省に持って行くということは、まず集約するのが大変だという話と、個人情報を自衛隊に渡していいのかという問題がある。やったらやったで、批判する人がたくさん出て来るでしょう。
飯田)個人情報をと。
佐々木)だからそこをやらないで、とりあえず接種券番号と生年月日や市町村コードなどを入れれば通るようにシステムをつくったら、今回のようになってしまった。もちろん、例えばきょうの日付で生年月日を入れても通ってしまうというようなことがあって、それは確かにおかしいと思います。同じ番号で接種券番号を間違えて同じコードを入れると、前の予約がキャンセルされてしまうとかね。確かにシステム的な不備はあります。でも「1ヵ月~2ヵ月でこのシステムをつくれ」と言われたら適当なもの、単なる整理券の発行システムにしかならないというのは、仕方がない部分もあるのではないでしょうか。
飯田)最終的には接種券番号を読み取って、本当にこの人が接種対象かどうかを確認して打つと。
佐々木)予約システムで完結するわけではなく、実際には現地に行って接種券のカードを見て確認するわけだから、問題はないのです。「1年前からわかっていたのに、いまごろ何をやっているのだ」と怒っている人がいますが、この1年ではなくて、わずか1ヵ月くらいで準備したということを考慮しなくてはいけないと思います。
適当でも早く進めないと1日100万回接種には達しない
佐々木)確かにずさんなシステムだと思いますが、早く大規模接種会場のシステムをつくって接種を進めないと、1日100万回の接種には達しないのです。達するためには、「このくらい適当に早くやった方がいいではないか」という意見もあるということは、考えた方がいいのではないでしょうか。
日本がワクチン後進国になってしまった背景にあるもの
佐々木)「迅速かつ堅牢なシステムをつくれ」と批判する人もいますが、そうは言うけれど、「ITは人を幸せにしない」などと言って「テクノロジーを馬鹿にして来たのは誰なのか」ということも考えないといけない。日本も1980年代まではITにとても強い国だったのに、いまやOECDのなかでも最下位に近いくらいITに弱い国になってしまった。それは自業自得なのだということを自覚するべきだと思います。ワクチンも同じで、「なぜ日本はワクチンをつくれないのだ」と文句を言っていますが、散々この10年~20年、反ワクチンの気運をつくって来たのは一体誰なのかと。日本は、ワクチンに関しては1980年代くらいまでは先進的な国で、アメリカにも技術協力していたくらいです。しかし「反ワクチン」が国内で盛り上がってしまったので、ワクチン開発に製薬会社が及び腰になってしまい、結果的に、いまファイザーやモデルナがつくっているようなmRNAワクチンはつくれなくなってしまった。予算も付かなくなった。それは日本国民全体が選択したからなのです。
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