日本は新型コロナウイルスへの初期対応の失敗を検証するべき
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月27日放送)に神戸大学大学院法学研究科教授・NPO法人インド太平洋問題研究所理事長の簑原俊洋が出演。首都圏4都県が政府に緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の延長を要請したニュースについて解説した。
首都圏4都県、緊急事態宣言と重点措置の延長を要請へ
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初動の対策の遅れは否めない
飯田)東京には緊急事態宣言が、その他の3県にはまん延防止等重点措置が出ていますが、延長要請をしたということです。簑原さんが拠点としていらっしゃる神戸、兵庫も緊急事態宣言が出ています。町の雰囲気を見ると、本当に疲れ切っている感じがありますよね。
簑原)再延長が何度も続くと、人間は精神的に参ってしまいますよね。
飯田)小出しの対策にも見えますが、どうご覧になりますか?
簑原)初動が遅れたということは否めません。もっと早い段階でワクチンを開発し、緊急事態と言うのであれば、治験をやり直すのではなく、日本人に接種させるということを早い段階ですべきだったと思います。実際、アメリカやヨーロッパの国々はもう、元に戻りつつありますし、イギリスでは「ハグが解禁」などと言っています。トンネルの明かりが見えないような状態が続くと疲弊してしまいます。
オンライン授業のみで「キャンパスライフ」を送ることができない大学生
簑原)私の大学では授業をオンラインでやっていますが、学生は疲れ切っています。大学で学ぶ醍醐味がかなり失われています。
飯田)「キャンパスライフ」は学生にとっては、そこで「いろいろな青春の」というようなことですからね。オンラインでは味わえないですよね。
簑原)横のつながりがまったくないです。私も学生と直接親しくなることができません。ラジオ番組をやっているような感じです。ただ単にパワーポイントで、1人で画面に向かって話しているという状況は、教える側としても辛いです。
今回の失敗を検証して将来につなげるべき
飯田)ここのところ、「有事と平時の切り分けができない」、私権の制限も含めて「日本は厳しい措置が取れない」ということも言われます。そこから引き伸ばして憲法の問題まで行く人もいますが、その辺りの日本社会のありようというのが、コロナに対処しづらい部分でしょうか?
簑原)コロナに限らず、多くのことに対して、非常に慎重でリスクを取りたがらない。これは日本人のいい面でもあるのですが、今回のような有事の場合には、マイナスに働くのかなと思います。
飯田)有事の場合には。
簑原)この教訓を忘れてはいけないと思います。今回はウイルスですが、将来、安全保障的な危機がやって来る可能性もあります。そのときに同じように後手後手で、対応の遅い状況でいいわけがありません。今回失敗したところを、きちんとタスクフォースなりをつくって精査するべきです。アメリカも真珠湾、9.11のあとにやっています。いまは1月6日の議会襲撃のあとをどうするかと揉めていますが、「何がどうよくなかったのか」ということを検証するべきではないかと、個人的には思います。
ワクチン開発に有事としてリソースを投じたトランプ氏~しなかった日本
飯田)アメリカはワクチンが出て、「成功しているぞ」「経済が回りかかっているぞ」となっていますが、あれは初動で亡くなる人が多く出たのを、急いで反省したということでしょうか?
簑原)トランプさんに関してはいろいろなことがありますし、私も肯定はしませんけれども、彼はワクチン開発に大量の人とものと金を使いました。これは評価されるべきではないでしょうか。これは国家の一大事だと。そこにリソースを投じた結果、かなり早くワクチンを開発することができた。日本は同じような行動をしなかったという気がします。
飯田)「ワープスピード」などと言われていました。でも、お金も相当つぎ込んだわけですよね。
簑原)そうしないといけないのです。
飯田)そこに舵を切るということが、日本はできなかったということですか?
簑原)動かないとあとから来ますよね。日本もおそらく、このあと経済がものすごい状態になると思いますので、より高くつきますよね。
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