ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月2日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。菅総理が米インド太平洋軍のアキリーノ司令官と会談したというニュースについて解説した。
菅総理がアメリカのインド太平洋軍司令官と会談~日米同盟強化で一致
菅総理大臣は6月1日、アメリカのインド太平洋軍トップであるアキリーノ司令官と会談し、インド太平洋地域の平和と安定を維持するため、日米同盟を一層強化して行くことを確認した。
飯田)4月にインド太平洋軍のトップ、司令官に着任したばかりというアキリーノ氏ですが、初めて選んだ訪問先が日本でした。
「一般社会のアメリカ人たちが納得できる外交」に変わるバイデン政権の外交
佐々木)「アメリカがバイデン大統領になってどう変わるのか」というところが注目されています。トランプ外交の否定は当然の路線ですが、一方で、かつてのようなリベラルの秩序を取り戻すという方向に行くかというと、意外にそこは否定的な意見が多いのです。実際にアメリカ国内でも、バイデン大統領は従来のような、イラン・イラク戦争やアフガン戦争をやっていたころのアメリカにはもう戻らず、ミドルクラスのための外交をするのではないかと言われています。要するに、「一般社会のアメリカ人たちが納得できる外交をやります」ということです。だから野放図に世界の警察になって、外交や安全保障、軍事に予算を割きまくるということはやらない方向に変わって来ているのです。
今後の外交は密室のなかで議論することになる~国連などでメディアの前で議論することの限界
佐々木)リチャード・ハースという、元外交官で米外交問題評議会の会長がいます。彼が「フォーリン・アフェアーズ」という有名な雑誌に、「安全保障理事会は国連中心でやってもうまく行かなかった」と書いています。かといってアメリカ一国主義でもうまく行かなくなってしまった。それはトランプ時代に全部崩壊したと。
飯田)トランプ時代に。
佐々木)では、今後どうするかと言うと、バイデン大統領になって、かつての1990年代~2000年代にかけてのアメリカに戻るのではなく、グローバルな大国同士、G20などではなく、ロシアや中国も入れて、大国のなかで一種のウィーン会議のような組織的なものをつくり、密室のなかで議論することになるのではないかと。
飯田)密室での議論。
佐々木)国連など、メディアで公開されている場所で議論しても、それぞれ思惑があるから内心を言わないではないですか。結局、「拒否権、拒否権」でやってしまうと動かなくなってしまう。
55年体制時代の日本の「国対政治」のように~大国同士が密室で議論し落としどころを決める
佐々木)そうではなく、密室で集まって、例えばアメリカと日本と中国、ロシア、そしてEU。そういう人たちが集まって、こそこそ話し合い、「今回のクリミア危機はこの辺で落としどころにしましょう」というようにする。言ってみれば、55年体制時代の日本の「国対政治」があったではないですか。表では「与野党激突」などと言っているけれども、裏では国対委員長同士が「このくらいを今回の落としどころにしましょう」と話し合って決めていたわけです。
飯田)そうでしたね。
佐々木)当時は批判されていましたが、いまとなっては割合うまく行っていたのではないかと評価されています。国会は空転するのだけれど、空転して何も決まらずに終わるのではなく、最後は落としどころを決めておくという意味では、そういう密室や根回しは悪くなく、現実的だということです。
飯田)何も決まらないよりは。
佐々木)いまのように、中国やロシアの台頭で世界がうまく行かなくなって来ている状況のなかでは、国連などの表舞台で議論するというのは無理なので、密室で話を決めるということは、現実的な落としどころとしてはありなのかなという感じがしますよね。
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