ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月4日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。中国外務省が32年前に起こった天安門事件を「暴乱」とみなすこれまでの見解を変えていないと述べたニュースについて解説した。
天安門事件から32年、中国外務省は見解を変えず
民主化運動が武力弾圧された1989年の天安門事件から6月4日で32年となる。中国外務省の汪文斌副報道局長は3日の会見で、「1980年代末に起きた政治風波(騒動)に対して中国政府は明確な結論を既に出している」と述べ、「暴乱」とみなすこれまでの見解を変えていないと強調した。
飯田)「6・4」という単語でも検索ができないという。
宮家)それも規制されていますからね。あれからもう32年も経ちましたか。中国では天安門事件は暴乱でないと困るので、変えようがないですよね。あれが「民主化に対する弾圧であった」とすれば自己否定になりますから、それは無理だと思います。これまでは香港では追悼式典などの活動をやっていたはずだけれど、どうもできなくなりそうですね。香港が変わって行くのは仕方がないですかね。
「中国の外交はもっと愛されなければいけない」と発言した習近平主席
宮家)面白い話がありまして、ほぼ同じ時期なのですけれど、習近平国家主席が「中国の外交はもっと愛されなければいけない」と言っているのです。
飯田)愛されなければいけない。
宮家)「信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージをつくらなければ」と、「そういうお話の宣伝をきちんとやりなさい」と。“Narrative(話法)”と言いますが、そう言うわけです。それで私は、ジャパンタイムズ紙上に英語でお手紙を書きました。「習近平国家主席殿、拝啓、お元気ですか。2018年にもお手紙を書いたのですけれども読んでくださいましたか」と。2018年はトランプさんのころで、トランプさんとの貿易戦争をどうするかという話を僭越ながら申し上げたわけですけれども。今回はバイデンさんのこともあるのですが、「信頼され、愛され、尊敬されるナラティブは結構なのですけれども、中国外務省がやっている戦狼外交は逆効果だということをご存じでしたか? 嫌われてしまっていますよ。中国の外務省はやり過ぎなのです。党中央ばかり見ていますが、本当のことを周りの人たちはあなたには言っていないのですよ。また、そういう宣伝をやるなら、いい人を選ばなければいけないのですが、そういう人はいないのですよ」と書いたのです。
話法ではなくポリシーを変えなければ物事は変わらない
宮家)結論を言うと、ナラティブを、つまり「話法を変えるのもいいけれども、みんなはきちんと見ていますから、それだけで物事は変わりません」ということです。「ナラティブではなく、ポリシーを変えなければ愛されるのは難しいですよ」と、僭越ではありますけれども、そういったお手紙を書きました。私は彼に成功してもらいたいのです。中国が偉大な立派な国になって、自由で民主的で開かれた国になれば、それは最高なのですからね。
飯田)地球にとってね。
宮家)ならないと思うけれどね。でもそうやって頑張って欲しいわけです。
党の周りの人たちの危機感の反映も
飯田)信頼され、愛され、尊敬されるなどと書きながら、ヨーロッパの小さな国に対して「お前ら小国が俺たち大国に何という口を聞いているのだ」と。
宮家)口の悪い人たちは、習主席がそうやって「信頼され、愛され、尊敬されなければいけない」と言うということ自体、実はそうされていないことがわかっていて、それに対する危機感の反映だというわけです。私はそんなことは言いませんよ。そういう声もあるということも考えた上でお手紙を書いたわけであります。
日本の外務省もかつては同じ状況であった
飯田)でも中国の外務省は、そういう口汚いことを言えば言うほど出世するような構造になってしまっているのですよね。
宮家)普通のことを言っていたら「弱腰」と言われるから、必要以上に強気になるのです。では「日本の外務省も昔そうではなかったのか」と言われると、日本にもそういう時代がありましたから、決して中国だけが特別だとは私は思いません。しかし、規模が日本の10倍ほど大きいから、その分だけ害悪も大きくなりますね。
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