G7サミットで各国から求められる菅総理の「日本としての提案」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月11日放送)に元内閣官房副長官補で同志社大学特別客員教授の兼原信克が出演。6月11日からイギリスで始まるG7サミットについて解説した。

【菅首相G7出発】G7サミット出席のため英国へ出発する菅義偉首相。左は真理子夫人=2021年6月10日午後、羽田空港 写真提供:産経新聞社

G7サミット、6月11日からイギリスでスタート

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菅総理)今回のG7サミットでは新型コロナ対策、さらに気候変動、経済、地域情勢、こうした重要な課題について普遍的価値を共有するG7のリーダーと率直な議論をして、そのなかで日本の立場を説明し、サミットの議論に貢献したい。

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主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)が、6月11日からイギリスのコーンウォールで始まる。6月13日までの期間中、新型コロナ対策や気候変動、中国・ロシアへの対応などを議論する方針である。対面でのG7は初参加となる菅総理大臣は、東京オリンピック・パラリンピック開催への支持を訴えるとみられている。

ワクチン提供でG7は存在感を示さなければならない~リーダーシップの復活がかかっている

飯田)東京オリ・パラについてばかりが注目されますが、やはり新型コロナ対策に焦点は絞られますか?

兼原)新型コロナウイルスによる死者数は2020年より2021年の方が、地球全体では多くなっているのです。先進国は収まりつつあり、若干南北問題化しつつあるので、G7は頑張って存在感を示さないといけません。

飯田)先進国と途上国で感染の格差ができつつある。

兼原)2020年まではトランプさんが壊してしまって、「G7はもうないのではないか」という感じでした。今回、やっと元に戻るのですが、先進国も全体のパイのなかで規模が縮小しているのです。先進国では皆さん同じことが起きていて、製造業が流出していて国内格差が開いているので、G7がもう1度頑張らないといけないときなのです。いまワクチンで途上国が困り始めているので、存在感を示して欲しいと思います。

飯田)ワクチンに関しては、全体で10億本ほどをCOVAX(コバックス)という枠組みで提供し、アメリカだけで5億本出すという報道が出ています。

兼原)ここはG7のリーダーシップ復活がかかっていますので、頑張っていただきたいと思います。

米バイデン大統領と英ジョンソン首相が「新大西洋憲章」を発表

飯田)そして対中国、対ロシアというところですが、アメリカのバイデン大統領とイギリスのジョンソン首相が法の支配や人権、公正な貿易など民主主義に基づく価値を両国が協力して守るとうたった「新大西洋憲章」を発表したということです。大西洋憲章と言うと、先の大戦中に大西洋の洋上でルーズベルト大統領とチャーチル首相が会ってつくったという、国連の基になった話ですかね?

兼原)第二次世界大戦が始まったのは1939年です。1941年の真珠湾の前なのです。アメリカはまだ参戦していないのですけれども、アメリカ国内の理想を戦争の際に掲げたのです。「人間の自由な意思がすべてを決めるのだ」というアメリカ風の国内政治の考え方を持ち出さないと、アメリカは参戦できなかったのです。

飯田)あの当時は。

兼原)それでチャーチルもOKと言って、スターリンもOKと言った。スターリンがOKと言うのはよくわからないですけれども、各国が入って行って、それが戦後の国連憲章などにもつながって行くのです。そのとき日本は反対側でナチスと組んでいたので、この人たちからは「民主主義の敵だ」と言われたのです。スターリンが味方なのかとは思うのですけれども、そういう舞台装置をつくったのです。それで今回もう1度、「自由主義と民主主義で頑張るぞ」と、アメリカとイギリスで宣言したということですよね。サミットの前に上手な舞台装置をつくったのではないでしょうか。

アジアをどちらが獲るのか

飯田)故事に倣いつつという感じ。それはバイデン大統領が上下両院で演説された、「民主主義なのか専制主義なのか」という部分の下敷きから出て来たものですか?

兼原)そうですね。中国が小さかったら問題にならないのです。中国は2030年までにアメリカの経済規模を抜くと言われているので、“United States as No2”になるのですよ。中国は一緒にソ連に対峙して冷戦を終わらせた勝ち組なのです。その中国がなぜかソ連の後釜にいま入りつつあって、「共産主義で頑張るぞ」と言い始めているので、「どうするのだ」という話です。ロシアは冷戦が終わって仲よくなれると思ったのですけれども、NATO拡大でカチンと来て、中国と嫌々くっついてしまっているのです。

飯田)嫌々くっついている。

兼原)仲がいいわけではないので、家庭内離婚のようになっているのですけれども、どちらもアメリカが嫌いなのでくっついているという感じです。両国とも民主主義には遠いので、「ここでやられてはいけない」ということだと思います。アメリカも相対的には縮んでいますし、G7も相対的に縮んで来ていて、これからアジアがどんどん上がって行きます。「アジアをどちらが獲るのか」という頭になっているのだと思います。

2021年6月10日、会見する菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202106/10bura.html)

中国が強くなるとアメリカが困る「国家としてのアイデンティティ」

兼原)アメリカは歴史がない国なので、自由主義や民主主義という価値観をアイデンティティにしている人たちなのです。私たちよりも原理主義ですから、それが強く出るときはアメリカが頑張るときです。

飯田)あれだけ移民がたくさん入っている国だと。

兼原)歴史や共通のバックグラウンドはゼロです。メイフラワー号で来た人はほんの一握りで、ほとんどが移民船か奴隷船で来ているのです。その人たちがあのようなアイデンティティをつくったのはすごいことだと思います。ソ連はできませんでした。ユーゴスラビア人もできなかったでしょう。アメリカは人工的な国家をつくって成功したのです。アメリカやインドネシアは新しい国のアイデンティティをつくるのに成功した人たちなのです。

飯田)インドネシアもそうなのですね。

兼原)あれは日本が独立するように仕向けて、頑張ってもらったのです。言葉の数は山ほどあるしバラバラなのですが、初めのスカルノさんが偉くて、「イスラム教」などと言わなかったのです。「寛容な国をつくるのだ」と言ったのです。

飯田)バリにはバリの仏教があって、宗教も全然違いますものね。

兼原)それが新しいアイデンティティになって成功したのですけれども、結局、「人に意見を押し付けない」というところが勝っているのです。共産主義は逆なので、「この人たちが本当に強くなったら困る」とアメリカも思い始めているわけですよ。バイデン大統領が言っているのはそういうことです。

アジアの民主化していない国をどうするか~存在感を増す日本

飯田)アジアをどちらが獲るのかということですが、そう考えると、イギリスが空母クイーン・エリザベスを派遣したり、そういうコミットを強めているというのも、一連の流れのなかにあるわけですね。

兼原)アジアの人口は6割くらいあるのです。2030年には世界のGNPの6割くらいがアジアになると言われています。アジアが最も大きなパイになるのです。多くの国は植民地支配され、人種差別されて頭に来て、独立したあとはしばらく独裁をやっていたので、みんなが民主化したのは90年代くらいですよね。新しい人達で、まだ民主化していない国もたくさんあるし、ここをどうするのかというのが最大の関心事になります。イギリスやアメリカは世界帝国だったので、そこに頭が回るのです。

飯田)日本はいちばん近いところにあるG7諸国。

兼原)だから最近、日本が大事にされているのです。対面で最初に菅総理がホワイトハウスに呼ばれたのはそういうことです。日本の存在感は、放っておいても大きくなっているのです。逆に言うと責任も大きくなっているので、「きちんとしたリーダーシップが取れますか?」という感じになっているのだと思います。

アジアのことは菅総理に聞いて来る

飯田)今回のG7においても、菅さんがどう言うかということは。

兼原)みんな一生懸命聞くと思いますよ。「あなたのところの話だよね」とみんなが振るわけです。

飯田)地理的な状況に詳しくない人たちが、菅さんに聞いて来るということですか?

兼原)ヨーロッパの人たちは、アジアのことをあまり知らないですからね。アメリカはヨーロッパとアジアの両方を見ていますけれども。

日本としての提案をきちんと説明しなくてはならない

飯田)そこをきちんと説明し、それだけではなく「日本としてはこうするべきだと思う」という提案までやらなければいけないということですか?

兼原)そうです。私たちが戦後つくって来た社会は、明治のときも同じことを言っていたわけですけれども、「四民平等で幸せな社会をつくるぞ」ということです。戦争中はいろいろなことがありましたけれど。「再び独裁は勘弁してください」というメッセージが強いのです。他の国も日本と同じなのだと思います。

飯田)それが「自由で開かれたインド太平洋」と。

兼原)そうやって「日本と一緒にやろうか」という話になるのですよね。

飯田)菅さんがそれをきちんと説明できるかという。

兼原)おやりになると思います。

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