「結果」次第で日本に大きな影響を与えるイラン大統領選
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月18日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。イランの大統領選挙について解説した。
イラン大統領選挙~権力をすべて握るハメネイ師
アメリカと激しく対立して来た中東イランで6月18日、2期8年にわたるロウハニ大統領の任期満了に伴う大統領選挙が行われる。イランにおける大統領は政権を発足させ、経済や外交政策の指揮を執る立場ではあるが、あくまで行政府のトップで第2の権力者である。国のトップはイスラム法学者の最高指導者ハメネイ師と言われている。任期は終身で、1989年から30年以上にわたってハメネイ師は権力の座にある。今回の大統領選は、ロウハニ政権を支えて来た穏健派や改革派の有力な候補が事前の資格審査で失格となるなか、選挙は反米の保守強硬派で司法府代表のライシ師や国際協調路線を取るヘンマティ前中央銀行総裁など4人の争いになっているということだ。
飯田)強硬派が勝つのではないかという報道がされていますが。
宮家)選挙をやるだけましなのだけれど、やはりイランは民主主義ではありませんね。大統領は行政府というのは、確かにそうかも知れないけれども、三権権は司法も含めて、実質的にはすべて最高指導者が持っているわけです。
アメリカとの和解~閉じられつつある機会の窓
宮家)第2に、何ヵ月も前から申し上げていることですが、アメリカとの和解は無理にしても、ある程度の関係改善の鍵になるのは核合意です。バイデン政権は核合意を復活させるかどうかでイランと交渉をしていたわけだけれども、6月18日の大統領選挙で、交渉が妥結する「機会の窓」が閉まってしまうということをずっと心配していたのです。
飯田)機会の窓が。
宮家)1月20日からバイデン政権が動き出して、まだ5ヵ月しか経っていない。実際にそろそろ窓が閉まってしまうのではないかと心配しています。ロウハニさんは穏健派ということになっていますが、イランにはもっと強硬な人たちがいるわけです。その人たちしか、今回は大統領候補者になれないのですから。そのなかでも、ライシさんという強硬派で有名な人が大統領になるという出来レースだと言われています。つまり、仮にいま米イラン間で合意が復活するなり妥協が成立するなりしても、7月にはもう、ライシさんだと思うけれども、新しい大統領が就任します。そうなれば、いままでのことを考えたら、対米関係も絶対にそのままでは済まないですよね。残念ですけれども、機会の窓が閉じられつつあって、しかもその状況は非常に悪い方向に閉じられつつある気がしており、とても心配しています。
場合によってはアメリカの関心が中東へ向く可能性も~中国シフトが弱くなり日本に大きな影響が
飯田)そこで核合意にならないとなると。
宮家)そうなれば強硬派の連中は核開発をやると思います。アメリカはどうするのか、イスラエルはどうするのか。日本にとっては米外交の中国シフトが始まって、いいときなのだけれども、これでまたイランが変なことをやったら、全部がひっくり返ってしまう可能性があり非常に心配です。
飯田)そういう意味では、日本もこのニュースは他人ごとではない。
宮家)他人ごとではないですよ。これで中東湾岸が下手に爆発したら、ワシントンの関心は一瞬にして中東へ戻りますから、恐ろしいですよ。それは当然ですが、アメリカにとっても、これまでの努力が水の泡になってしまうわけですから、そうならないようにしないといけませんね。
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