高橋洋一が指摘 「インフレになったら利上げ」ではなく「雇用」がいちばん重要

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月23日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。アメリカ連邦準備制度理事会のパウエル議長が米議会下院で証言した内容について解説した。

高橋洋一が指摘 「インフレになったら利上げ」ではなく「雇用」がいちばん重要

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

パウエルFRB議長が議会で証言

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は日本時間6月23日未明、アメリカ議会下院で証言し、経済活動再開に伴うインフレは想定より大きいとしつつ、時間とともに落ち着く可能性が高いとの認識を改めて示した。

飯田)利上げについてですが、「物価懸念だけで性急な利上げはしない」ということも言ったそうです。

高橋)日本時間の未明にやったものでもYouTubeにすぐアップされるから、チェックしないでここに来るわけにはいかないですね。以前でしたら、「まあ未明に行われたことだから」と適当に喋れたのですが、いまはそういう時代ではありません。証言をYouTubeで観ましたが、そういうインフレの懸念とともに、「性急な利上げはしない」と確かに言っていましたけれど、「いろいろな指標で見る」という話もしていました。

インフレ目標は雇用が重要~雇用をよくするために金融緩和をする

高橋)これにはいろいろな意味があって、普通に考えると「インフレになったら利上げ」と単純に考えるでしょう。でもインフレ目標はそういうものではないのです。インフレ目標は雇用が重要なのです。雇用をよくするために金融緩和をして、金融緩和をやり過ぎるとインフレ率が高くなるから、「そのときは抑えろ」と、そういう意味なのです。

飯田)そのときには抑える。

高橋)「あらゆる指標を見ろ」というのは、「雇用を見ろ」ということを言っているのです。インフレ率だけではない。要するに雇用の方がきっちり行かないと、インフレ率が多少上がっても、「雇用がよくならないと何もしませんよ」ということです。でもパウエルさんは、雇用の話についても、失業率だけは見ないとか、いろいろなヘッジをかけています。

飯田)なるほど。

高橋)理屈がわかっている人が見たら、「ああ、みんながインフレ率に着目しているからだな」と思うのです。これはインフレ目標の正論なのですよ。雇用がいちばん重要で、それをよくするために金融緩和をし過ぎて、インフレ率が高くなってはいけないと、そういう意味でインフレ目標があるのですけれどね。

インフレ率が高くなると「すぐに引き締め」と条件反射的に思う人が多い

高橋)そこをわかっていると、この発言は「納得」という感じですが、FRBの関係者ですら、こういうことをよくわかっていないのです。インフレ率が高くなったら、「すぐに引き締め」と条件反射的に思ってしまう人が多いのですよ。でも本当は雇用を見るのです。雇用だけだと、また「失業率を見てどうのこうの」と言われてはいけないから、「あらゆるものを見て行く」と、そういう言い方になっているわけです。

飯田)なるほど。それで労働市場の「広範で包摂的な」回復を促進するという表現になっている。

高橋)「いろいろなものを見て行く」ということははっきりしていて、「みんな、インフレ率だけを見ないでください」という感じで言っていましたね。

FRBと日銀の違い

飯田)FRBはアメリカの中央銀行に当たるところですが、日本の中央銀行たる日銀と違うところは、物価と雇用という2つの政策目標があると。特に雇用の部分が大事であるということです。

高橋)本当は日本銀行も同じはずなのですよね。でも、いまの日本銀行法が少し不備で、そこが書かれていないということなのですけれどね。本当なら金融政策としては、雇用が中心なのですよ。

飯田)金融政策を雇用に注ぐ。

高橋)「雇用を守るために過度にしてはいけないよ、だからインフレ率も注意しなさい」ということでインフレ目標があるのです。

FRBが振れるのでマーケットも振れる

飯田)直近の数字が6月10日あたりに出ていましたが、5月のアメリカの消費者物価指数、上昇率が5%というもの。それでFRBの幹部も反応している人がいました。

高橋)その幹部もいま言ったように、「インフレ目標をきちんと理解していない人」が言っているのだと思いますよ。だから反応してしまうわけです。そこでFRBの本元であるパウエルさんは「全体をちゃんとわかっているだろう、インフレ目標はこういう意味なんだぞ」と言いつつやっているのだと思いますよ。

飯田)みんな落ち着けよと。先週末にまさにその発言があって、ダウ平均が「ガタッ」と下げた。それを見て、週明けの日経平均が取引時間中1100円を超えて「ドン」と下げたと。その後、6月22日はまた「ドン」と上げ返しました。

高橋)FRBも振れているから、このようにマーケットも振れるのでしょうけれどね。今回は、全員がFRBのものをきちんと理解して、「インフレ目標とはこういうものだぞ」と、「インフレ率だけではないぞ」と。それで「雇用が重要だ」ということを言外に言っているような気がしましたね。

賃金の引き上げという話も出始めたアメリカ

飯田)アメリカでは既に雇用の引き締まりがもう見られていて、賃金の引き上げなどが出て来ているようです。

高橋)少しずつね。でも、全部考えながらやるということが、FRBの方針だと思います。一部上がっていても、やはり全体的な話が重要ですから。全体的に引き締まっていたら、おのずとその後、インフレ率が高くなるのです。そうなれば引き締めを少しは考えるかも知れないけれども、いまの状況ではすぐに考えることはないと思います。

ジャクソンホール会議

飯田)その引き締めの示唆のようなものが、8月のジャクソンホール会議という大きな会議であるのではないか、ということまで言われていますが。

高橋)どうかな。ジャクソンホール会議は、数年先の話をするのであれば、そういうこともあると思いますが、これは「どのくらいの長さの話をするか」に依存するのです。学者の話だと、長めなのです。「明日の話」ではない。でもマーケットの方では、それが明日の話のように書くわけです。

飯田)なるほど。だからこの間の報道も、「2022年度中」とか。

高橋)すごく先でしょう。はっきり言って。

飯田)「2023年度中に」というような話をしていたのが、「明日にも」というように。

高橋)報道は、いつもそういう形に増幅される感じがするのですよね。

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