あけの語りびと

「病気が治ったら、みんなで食べに……」とんかつ店・店主が忘れられない“お客さんとの思い出”

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

「病気が治ったら、みんなで食べに……」とんかつ店・店主が忘れられない“お客さんとの思い出”

「とんかつぼたん」店主・磯部正一さん

この番組によくメールをいただく、ラジオネーム・五十六(いそろく)さんという方がいらっしゃいます。埼玉県東松山市で、とんかつ屋さんを営んでいます。

ラジオを聴くようになったのは、厨房で仕込みをしているとき。「何か耳寂しい……ちょっとラジオでもつけてみるか」と、最初は感度のいい地元のFM局を聞いていたそうです。

「厨房は、周りをステンレスの板で囲まれているのです。だから、FMのように感度がいいとステンレスに跳ね返って、キンキンと逆に耳障りでした。そこで、AMに変えてチューニングしていたら、仕事の邪魔にならないようなちょうどいい声が聞こえて、それが“うえちゃん”だったんです」

いまではニッポン放送のヘビーリスナーとなった、ラジオネーム・五十六さんこと、磯部正一さん。地元では人気のとんかつ屋さんとして知られていますが、お店を開いて18年、山あり谷あり、お客さんとの心温まる物語もありました。

「病気が治ったら、みんなで食べに……」とんかつ店・店主が忘れられない“お客さんとの思い出”

とんかつには、肉に甘みのある三元豚を使用

磯部さんは現在47歳。埼玉栄高校を卒業後、トヨタのディーラーに就職し、整備士をされていました。29歳のとき、奥さんの実家・東松山市でとんかつ屋さんを始めます。

お店の名前は「とんかつぼたん」。東松山市の市花を店名に取り入れました。山形県の平田牧場から、肉に甘みがある三元豚を仕入れ、衣は粗挽きのパン粉を使ってサクサクに。

「最初の一口、二口は、ぜひワサビで召し上がって欲しい」というこだわりを持つ磯部さんは、日本一旨いとんかつを目指しています。その味が評判となって、オープン当初、多い日は1日100人を超えるお客さんが食べに来ました。

「病気が治ったら、みんなで食べに……」とんかつ店・店主が忘れられない“お客さんとの思い出”

磯部正一さん

「整備士のときは、壊れた車を直す仕事でしたが、お店は違いましたね。注文を受けてから料理をつくることもあり、最初はてんてこ舞いでした。この仕事に慣れるまで苦労の連続でしたよ」

東武東上線から、オレンジ色の大きな看板で「とんかつぼたん」の文字が見えます。東松山駅と高坂駅のちょうど中間にあり、駅から歩くと20分ほど。お客さんは地元の方が多く、他にも営業マン、トラック運転手、土日はゴルフ客や行楽客も食べに来るそうです。

お客さんが絶えない「とんかつぼたん」にも、閉店の危機がありました。2010年、近くに大きなショッピングモールがオープンし、新しく広くなった国道407号でも人の流れが変わります。さらに翌年、東日本大震災が発生。計画停電で大きな看板の照明が消えます。

「お店はやっているのに、照明を消したらお客さんがパタッと途絶えてしまいました。売上もガタ落ちし、毎日、妻と『いつやめようか』という話をしていました。深夜にマクドナルドでアルバイトをしたこともあったんですよ」

「病気が治ったら、みんなで食べに……」とんかつ店・店主が忘れられない“お客さんとの思い出”

6m×4mの大きな看板が目を引く

そんなどん底も乗り越えて来た磯部さん。今回のコロナ禍では、「どんなことがあっても店は閉めないと決めていました」と語ります。

「店を閉めたら、お客さんが離れてしまう。それを痛いほど知ったので、『絶対に閉めない、意地でも開けてやる!』と思いましたね」

いつも攻めの経営をする磯部さんは、「Twitterを知ったのはラジオでした。ラジオはいま何が流行っているかを教えてくれます。コロナ禍のときは、YouTubeを始めてみようと思いました。そうしたら、この時期でもありがたいことに、お客さんが増えたんです。お客さんを待つだけでなく、常に前へ前へ前進して行きたいですね」と話します。

「病気が治ったら、みんなで食べに……」とんかつ店・店主が忘れられない“お客さんとの思い出”

ワサビをつけて食べると、豚の旨味が引き立つとのこと

また、お客さんとの忘れられない出来事を伺いました。磯部さんによると、ある金曜日に予約の電話が入って、「明日の昼に宴会をしたい」と言われたそうです。

「土曜の昼は忙しいから断ろうと思ったのですが、なぜか受けてしまって。翌日に10人ほど来られて、お子さんもいて、楽しそうな雰囲気だったんです」とのこと。帰り際にご挨拶したら、そのお客さんからこんなことを言われました。

「うちの父が、こちらのお店に一度食べに来ていて……。病気が治ったら、『みんなであの店のとんかつを食べに行こうな』と言っていたんです。そのあとに亡くなってしまい、きのうが納骨でした。ちょうどその話になって、『それならみんなで食べに行こう』と電話をしたんです。父が言っていた通り、とても美味しいとんかつでしたよ」

その話を聞き、磯部さんは「予約を断らなくてよかった。これが自分の仕事なんだという思いを強くしましたね」と語ります。

2003年にオープンして18年。息子が「継ぎたい」と言ってくれるような店にして、孫の代まで100年続く……そんなとんかつ屋さんを、ラジオネーム・五十六さんは目指しています。

「病気が治ったら、みんなで食べに……」とんかつ店・店主が忘れられない“お客さんとの思い出”

「とんかつぼたん」外観

■とんかつぼたん

住所:埼玉県東松山市上押垂65-1
電話:0493-25-3020
営業時間:昼 11:30~14:00/夜 17:30~21:00
定休日:木曜日
店舗情報:個室有・8人可
駐車場:有(大型トラックも停められる広いスペースあり)
交通手段:高坂駅から徒歩20分/高坂駅から車で約4分/東松山ICから車で約7分
※予約可能(お電話でお問い合わせください)

■「とんかつぼたん」公式ホームページ
https://www.tonkatsu-botan.com

■通販サイト「BASE」(とんかつぼたん)
https://hmtb.base.shop/

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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