いつも売り切れのサンドイッチ店……「なぜ数を増やさないの?」
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
京成西船駅から歩いて1分ほど。JR西船橋駅へ向かうバス通りに、小さなサンドイッチ屋さんが4月19日にオープンしました。
営業時間は、朝6時~午後1時まで。ところが、いつもシャッターが降りていて、「本日は完売しました。またのご来店をお待ちしております」という紙が貼ってあります。
開店の5分前に行ってみると、すでに2~3人が並んでいます。シャッターが開き、お店のなかから現れたのは、店主の長谷川浩之さん・48歳。なぜ午前中に完売してしまうのでしょうか?
『サンドイッチの店 ハマヤ』には、こんな物語がありました。
長谷川浩之さんがサンドイッチのお店を始める前は、東京の西新橋で、両親と『酒房はせがわ』という居酒屋を営んでいました。
新潟の地酒と魚が自慢で、席数は50席ほど。7人の従業員を抱える人気のお店ですが、去年(2020年)3月、新型コロナウイルスの影響で雲行きが怪しくなります。1回目の緊急事態宣言では、1ヵ月の完全休業状態に……。
「そのときは、いままでの売上と助成金で何とか乗り越えましたが、今年(2021年)の3回目の緊急事態宣言で、このまま店を存続するのは難しいと思いました。かと言って、店を潰すわけにもいかず、一緒に頑張って来た従業員に『辞めて欲しい』とも言えない。両親は高齢なので、私が外に出て働くことを決意したんです。でも、この歳で就職は難しいし、新たな商売も思いつきませんでした」
長谷川さんの趣味は食べ歩き。なかでも「美味しい」と噂のサンドイッチ屋さんがあると、よく食べに出かけました。
「ショーケースに並んでいるサンドイッチはとても美味しそうで、キラキラ輝いて見えるんですよ。『サンドイッチ屋さんはいいな』と漠然と思っていたとき、顔馴染みの不動産屋さんから『いい物件がありますよ』と紹介されたのが、いまの店舗でした。以前はケーキ屋さんで、ショーケースもあり、『ここなら“居抜き”でサンドイッチの店が開ける』と思ったんです」
しかし長谷川さんは、サンドイッチづくりの知識がまったくありません。そこで、人気店のご主人に相談に行くと、返って来た言葉は「やめた方がいいよ、大変だから」というものでした。
「何とか教えてもらえませんか」と粘りますが、「これから戦争なんだ! 帰ってくれ!」と怒鳴られてしまいます。他のお店も似たような対応でした。
「こうなったら独学しかない」と、長谷川さんは都内の人気店を巡り、いくつもサンドイッチを購入。重さを計り、パンを開いて、どのように具材を挟んでいるのか写真を撮り、じっくりと味わう。そして実際につくってみましたが、そう簡単に人気店の味にはならず、試行錯誤の毎日が続きます。
見るに見かねたのが、長谷川さんの母親とお姉さん。2人の力を借りて、昔懐かしい“昭和のサンドイッチ”が完成します。
いよいよオープンとなって、長谷川さんの生活はガラリと変わります。夜10時半に起きてシャワーを浴び、コロッケやハムカツなど、揚げ物から仕込みが始まります。
毎日つくるサンドイッチは15種類ほど。ショーケースに整然と並ぶ147個のサンドイッチは、早いときだと開店から2時間ほどで売り切れてしまいます。こんなに売れるのなら、なぜ数を増やさないのでしょうか?
「人気のお店は1000個以上つくっていると思いますが、うちでは147個が精一杯です。いつも睡眠時間は3時間ほどで、毎日が“戦争”です。あの人気店のご主人が言っていたことは、本当だったんですよ」
長谷川さんは、中学生のお子さんが2人いるシングルファザー。閉店後、家に帰ると掃除や洗濯、食事の支度などの家事が待っていて、そのあとサンドイッチに使う新鮮な食材の買い出しに出掛けます。
「流行りの味より、飽きない味を目指したい」という長谷川さん。『サンドイッチの店 ハマヤ』は6時に開店します。「美味しいね、ここのサンドイッチ!」と言ってくれる、お客さんの笑顔が励みです。
■サンドイッチの店 ハマヤ
住所:千葉県船橋市西船4−15−3
定休日:日曜・祝日(変更の可能性あり)
営業時間:6時~13時(売り切れ次第終了)
番組情報
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