ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月14日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。香港で事業を行うリスクについての、バイデン政権による米企業への警告について解説した。
バイデン政権、香港で事業を行うリスクをアメリカ企業に警告へ
英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、アメリカのバイデン政権は今週、アメリカ企業に対して、香港で事業を行うリスクが増えていると警告する。中国は香港の締め付けを強化しており、外国企業が香港に保存したデータに中国政府がアクセスできるリスクや、新しい法律によって中国政府が制裁を発動するリスクがあるということである。
飯田)中国外務省・趙立堅副報道局長は反発しています。FTの報道について、アメリカの内政干渉に反対すると表明しているということです。
中国政府が「内政干渉」ということは当たっているということ
高橋)「内政干渉」ということは、この情報は正しいのです。「俺たちのルールにいろいろ言うな」ということでしょう。図星を突いているということです。中国政府が香港の企業にデータアクセスできるということは、法律に書いてありますから、その通りです。それを「内政干渉だ」と言うことは、当たっているわけです。
飯田)これから俺たちがしようとしていることを言うな、と。
一国二制度がなくなり、中国政府が関与することになる~事業を行う外国企業へのリスクは当然、高まる
高橋)普通に考えれば、一国二制度だったから香港には自由があったのです。一国二制度ということは、「中国政府は関与しない」ということが前提になっているわけです。それがなくなり、中国政府が関与することがわかった以上は、「危ない」としか言いようがないですよ。
飯田)以前、香港には立法会(議会)があって、そこで別途、法律をつくらないと同じことができなかったのだけれど、例の国安法ができた。
高橋)一国二制度ではなくなってしまったのです。中国のなかの仕組みに従えということなので、当然、中国に出ている企業にはリスクが出て来ます。一国二制度で守られているのとは違うという意味で、「リスクがある」ということは正しいことです。
飯田)国安法が成立してから1年余りが経ったということで、そのリスクを改めて見直すような形なのですか?
高橋)改めてというか、企業であれば、割り切って「もう香港でビジネスできない」と香港から出るか、もしくは「中国政府に従う」というチョイスはもうしていると思いますけれどね。
米中それぞれに域外適用がある
飯田)FTの記事を読むと、そういうことをしたときのリスク、もしかするとアメリカの連邦法に今度は抵触する可能性もあるというようなことが書かれています。
高橋)アメリカには域外適用の法律がかなりあります。アメリカと中国はそれぞれに域外適用がある。
飯田)アメリカにも域外適用はかなりあるのですね。
高橋)だからアメリカの法律もすごいのですが、中国の法律も域外適用を平気でするから、完全にぶつかりますね。中国から見れば、「香港は域内でしょう」ということになるわけです。今度のルールではね。それぞれが「俺たちのルールは正しい」と言っているわけです。明らかなのは、「香港においては従来のルールと違っている」ということです。それはリスクでしょう。
日本企業も他人事ではない
飯田)日本企業も他人事ではありません。
高橋)同じですよ。日本企業も香港で自由なビジネスをするか、もしくは中国政府に従うかのチョイスを迫られているわけです。かなりの企業が「香港は無理だな」と思っているのではないでしょうか。マスコミも香港に支社を置いているところが少なくなりつつあるでしょう。
飯田)一部をソウルや台北などに移すというようなところが出て来ています。
高橋)そうですよね。要するに「どこまで自由があるのか」という話ですから。
飯田)例のアップルデイリー、蘋果日報が完全にプレッシャーで潰されたようなものですから。
高橋)中国に対する外資で、欧米も例外とは言えません。法律上、欧米の企業だけを優先することはできません。普通は「内国民待遇」と言って、同じ扱いなのです。
日本企業に対しても求められる「米中どちらに付くのか」
飯田)新疆ウイグルの人権の話や、日本企業のビジネス全般に対しても、「米中のどちらに付くのか」ということは、かなり突き付けられているはずです。
高橋)いままでは、「経済と政治は別」という考え方だったのですが、最近は本当の戦争は難しいから、「経済安全保障」という考え方で、経済も武器なのだという考えです。
飯田)経産省と繊維の業界団体は、統一でガイドラインをつくろうという話が出ています。新疆綿というものがあるので、アメリカで通関を止められたり、フランスで行政捜査がありましたが、これは繊維業界だけの話ではないですよね。
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