ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月21日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。批判するためには何が必要なのかということについて解説した。
批判するなら理念を示せ
ここへ来て、開幕する東京オリンピックの話がニュースの中心となっているが、東京オリンピックについてもさまざまな批判が出ている。政府の新型コロナ対策、あるいはワクチン接種についてもいろいろな批判が出ている。
飯田)最新のメルマガまたはnoteで、佐々木さんは「批判するなら理念を示せ」と、批判をするために必要なものは何かということを書かれています。
佐々木)「批判するなら対案を」ということを言う人がいますが、「対案がなくても批判していいのではないか」という意見もあり、それはそれで一理あるかなと思います。ただ、批判に理念がなさ過ぎるのです。
緊急事態宣言発出時は「私権の制限だ」と書き、宣言解除時に「感染者が増えているのに解除して大丈夫か」と反対のことを書いた朝日新聞の社説
佐々木)noteの記事で例を挙げたのは朝日新聞です。朝日新聞の社説で、緊急事態宣言に入ったときは「私権の制限である」と。「あまりそういうことをやるのはよくない」という論調で書かれていました。これはこれでありだったと思います。ところが、緊急事態宣言が解除されたときに、同じ社説で朝日新聞は、「こんなに感染者数が増えているのに、緊急事態宣言を解除して大丈夫か」と書いているのです。「これは菅首相の重い政治責任だ」というようなことを書いています。去年(2020年)、同じ社説で「緊急事態宣言は私権制限だから基本的人権に関わる問題だ」と言っていた意見は、一体どこに行ってしまったのか。
朝日新聞に理念が存在するのか
佐々木)そうすると結局、その都度、反対しているだけであって、「どのくらい私権制限をするのがよいのか」という、理念そのものが朝日新聞に果たして存在するのかどうかという疑問を呈したのです。
飯田)理念があるのかと。
佐々木)こういう論調は朝日に限らず、立憲民主党の政治家や他のところにもまん延しているのです。理念がないのに反対しても、では、それに対してどう反論していいのか、誰もわかりません。
飯田)そういうことになりますよね。
緊急事態宣言を出しても解除しても被害は出る~それを批判しても建設的な議論にはつながらない
佐々木)コロナ禍は緊急事態宣言を出せば、観光業や飲食業がダメージを受けるわけだし、逆に緊急事態宣言を解除すれば、感染者が増えて亡くなる人もいる。どちらにしろ、被害者は多少出るわけです。それを批判するならば、いくらでも批判は可能ですが、それでは何の建設的な議論にもつながりません。
飯田)つながりませんね。
佐々木)欧米はロックダウンや都市封鎖をやりましたが、日本は一切やらないで来ました。あくまで自粛要請、「お願い」をして来た。日本は、戦前の特高警察のような厳しい私権制限に対する反省があるからやらないのだという、この理念はありだと思います。それがありなのであれば、緊急事態宣言を解除することに対しても、「いやいや、このくらいでやめておきましょう。ある程度感染者が出ても、私権制限はしないのですよ」という共通認識でいいではないかと言えばいいのに、そこにも反対するのは、一体何なのでしょうか。
どうやっても反対する~いったい何をしたいのか
飯田)「自粛、自粛」で「けしからん、けしからん」というものがまん延している。法律では決まっていないのだけれども、というね。
佐々木)要請でしかないのに、「お酒を出してはいけません」「路上飲みはけしからん」というような、よくわからない空気の抑圧ばかりが広がってしまう。そんなことを言っているくらいであれば、法律できちんと縛って、憲法に緊急事態条項を入れて、憲法改正をして、「緊急事態のときには、このくらいまで政府は許すけれども、これ以上はやってはいけない」と。「議会の承認も得なくてはいけません、1か月以上やってはいけません」と枠を縛るくらいでいいのではないかと思うのですが、それを言うと、今度は「緊急事態条項を入れるとは何事だ」と怒り出す人もいるわけです。
飯田)私権の制限だと。
佐々木)そう言いながら、「あなたたちは一方で、空気の抑圧で世の中を悪くしているわけでしょう。では一体何をしたいのか」ということです。
飯田)相互監視社会のようなものをつくりたいのか、それによって、感染を予防するのは1つの見識としてあるかも知れません。しかし、そこまでは言わずに、でも法律をつくろうとすると「人権侵害だ」と批判する。
佐々木)法律が人の動きを縛るだけではなく、国の権力をある程度抑制する役割もあるのだということに、もう少し気付いて欲しいと思いますよね。
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