FRBの金融緩和縮小の発表はいつか~アメリカ経済の今後の見通し
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月3日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が言及した金融緩和の縮小の判断について解説した。
FRB理事が金融緩和の縮小の判断について言及
米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事は7月30日、金融緩和の縮小について国内労働市場の一段の改善が必要だとし、9月の統計を見れば、いまよりも自信をもって判断できると述べた。
飯田)アメリカの金融緩和に関しては縮小が言われていて、インフレとの絡みかと思ったらそうではなく、労働市場の方だと。
クラフト)まずFRBは2つの目標を持っていて、1つはインフレ、もう1つは雇用の最大化です。この両輪で金融政策を決めています。ご存知のように、いまインフレは3%台以上に上がっているので、ここはもう完全にクリアしています。
「雇用がついて来ればすぐにやる」というメッセージ
クラフト)まだコロナ前の数字に戻っていないのが、雇用です。前回、この番組でもご紹介しましたが、雇用が改善しない1つの要因としては、供給面。つまり失業特別給付金によって、「働かずに失業保険をもらっていた方が得なので、労働参加率が下がっている」とご紹介しましたけれども、これが9月で終了します。既に7月の時点で、半数の州で中止しているので、これから雇用統計が伸びて来るという予想がされています。ブレイナード理事もそこに注目しているということです。インフレ的には既に相当高いので、動いてもいいのだけれども、さらに「雇用がついて来れば、もうすぐやるよ」というメッセージですね。
飯田)失業特別給付金がそこでなくなれば、雇用が伸びて来るだろうと。他方、制度の延長を求めるような向きはあるのですか?
クラフト)いや、さすがにこれはやり過ぎだと。週300ドル、月で言うと15万円弱が加算されていて、逆に経済を回す意味では、「この給付金はいらない」という感じです。いずれにせよテーパリング、資産買い入れ縮小は間違いなくやります。
発表は9月か11月~引き締め方向に向かって行く
クラフト)いま市場が注目しているのは、その発表がいつなのかということです。ハト派の急先鋒であるブレイナード氏は、早ければ11月。実はもう1人ウォラー理事という人がいて、中道派なのですけれども、彼は「早ければ9月」と言っています。したがって9月か11月か、いずれにせよ年内には資産買い入れ縮小が発表されます。おそらく来年(2022年)の1月からテーパリングが始まるということで、どんどん引き締め方向になって行くでしょう。
「グロース株」などの成長株には向かい風に
クラフト)ナスダック、IT関連株が最高値を更新して上昇し続けています。
飯田)そうですね。
クラフト)ただ、金利が上がって来ますと、引き締め時には、「グロース株」と言うのですけれども、成長株が向かい風になって来ます。そういった意味では、ハイテク株だけでなく、リスク分散を考えられてもいいのではないかと思いますね。
飯田)グロース株は成長が見込まれる分、リスクも高い。いまは利回りがいいから投資しているけれども、10年国債の利回りなどがよくなって来れば、こちらの方がリスクが低いぞと。
クラフト)去年(2020年)までは商品市況、仮想通貨、何に投資しても上がっていましたが、これからは、より選別をしないと難しい相場になって行きます。
住宅価格の上昇率がリーマン時を超えたアメリカ~低金利ではやって行けない
飯田)足元のインフレ率が3%程度となって来ました。バイデン政権は、「財政も積極的に出してやる」という「ハイプレッシャー経済」などという言い方をしていますが、この先のインフレ率はどう推移して行きますか?
クラフト)FRBは、一時的と言っています。確かに市場も一時的というように受け入れているのですが、私は必ずしも、安易に判断しない方がいいと思います。もう1つ大事なことは、アメリカ人はガソリン価格と住宅価格に非常に敏感なのです。いまガソリン価格が上昇しています。それから住宅市場がリーマンのときの水準、価格上昇率はリーマンを超えています。アメリカの連邦住宅金融庁が「先例のない価格上昇」と言うくらい、加熱しているのです。
飯田)10%以上上がっているという話ですね。
クラフト)最近では15%以上上がって来ています。かなり加熱があるので、これ以上の低金利ではやって行けないということも言えますね。
家賃の救済措置~世論に押されて延長せざるを得なくなったバイデン政権
飯田)住宅に関連して、いまコロナで困窮している人に対して、普通は家賃を払えなくなったら「出て行け!」と言われるけれど、一旦猶予するということをやっているようですが。
クラフト)それがいま話題になっています。ずっと家賃が払えなくても、地主は退去命令ができないような措置を取っていたのですけれど、その期限が切れてしまうのです。それをバイデン政権が延長しなかったということで、反発が出ました。そこで世論に押されて、昨日(2日)、バイデン政権がそれを見直すと言い出しました。おそらく延長されるでしょう。
飯田)家主からすると、市況が上がっているのに、他の人に貸せないではないかと不満が溜まりますね。
クラフト)そこはバランスを見て行かなければならないのですけれど、とりあえず緊急の措置としては、退去命令ができないような形を取っているけれども、やがて家主の方が痛手を被って来るので、どこかの時点で変わると思います。しかし、「年内はこのまま維持してもいいのではないか」という見方が、いまのところの主流ですね。
飯田)そうですか。
クラフト)この家賃問題に関しては、日本でも政府が援助してもいいのではないかと思います。
飯田)飲食店などにも家賃の補助等々というのは、一部制度はあるけれども、使い勝手についてはいろいろ指摘されています。
クラフト)緊急事態宣言を出すことはいいのですけれども、金融面でも潤沢に支えられれば、もう少し人流も止まるのではないかと思いますけれどね。
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