中国はやがて没落する ~地政学の基本的な“法則”に背く限り
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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(7月30日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。コロナ後の中国、またロシアが北方領土を日本に返還しない理由について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。7月26日(月)~7月30日(金)のゲストは地政学・戦略学者の奥山真司。5日目は、コロナ後の中国、またロシアが北方領土を返還しない理由について---
黒木)「コロナ後の中国はどうなるのか」ということが奥山さんのご本に書かれているのですが。
奥山)地政学の基本的な考え方は、「陸と海の大きな国、シーパワーとランドパワーの大国を兼ねることはできない」ということが1つの法則としてあります。
黒木)両方欲しがったら滅びてしまうということですよね。
奥山)その通りです。私が北京にいる戦略家であれば、「それはやめておけ」と言いたいです
黒木)長い歴史のなかで、その2つを追いかけた国は……。
奥山)没落してしまう。
黒木)またどこかで上がって行くのでしょうけれども。
奥山)それはもちろん。
黒木)中国はこれからすごい勢いで上がって行くのだろうけれども、たぶんまた落ちて行くと。
奥山)いまの彼らの国力が何で支えられているかと言うと、海と通じた貿易なのです。外と貿易をすることによって、外貨が入り、彼らの国力が上がって来たのです。それを「海にも出て行きます、陸の方も頑張ります」とやってしまうと、どちらかを諦めなければならない時代が来るのだろうと思います。海に出ると、アメリカという海のボス猿がいますので、必ずそこでぶつかり、ライバル関係になってしまいます。いまそのボス猿に睨みつけられている状態なのが中国ということですね。
黒木)香港の「リンゴ日報」などがなくなったことも考えると、紐解けると。
奥山)香港は、そもそもイギリスが中国大陸に入るためのベースの部分でシーパワー側だったのです。「自由が大事、商売大事」というところだったのです。ところが97年に中国側に返還されると、今度は大陸側のルールがそこに敷かれて、最終的には自由な言論を許さないということで、どんどん自由を奪われて、最後に「リンゴ日報」がなくなってしまうという事態になっているのです。
黒木)それもやはりシーパワー、ランドパワーというところで、世界の情勢を語ることができるということですか?
奥山)そうです。
黒木)ロシアが北方領土を返してくれない理由も書かれてありますが。
奥山)これは地球温暖化が影響しています。北極の海は温暖化で……。
黒木)氷が溶けてしまって、北回りという北極圏ルートというのですか、それがつくられようとしているのですよね。
奥山)氷が溶けてしまって、夏の間は氷がないので、船が通れるようになります。そうすると横浜からロッテルダムというオランダの港に行くのに30%ぐらい距離が稼げるのです。上を通って行った方が早く行けるということになると、北極の氷が溶けることによって、ロシアにとっては「うちの方を通ってくれるのであれば、そこで通行料が取れるな」ということになります。そうすると、「どんどん使ってくれ」ということになりますと。
黒木)そうですね。
奥山)北極の海に向かう船が全部、北方領土の近くを通るということです。そうするとロシアとしても、「おいおい俺はここにいるぞ。日本に返してなんかいられないぜ」ということになって、なかなか北方領土が返って来ない。
黒木)返してくれない。
奥山)北方領土が返って来ない原因は、なんと「北極海の氷が溶けたから」ということで、「ここにも地球温暖化が影響していますよ」ということが、この地理の話で、地政学の話でわかってくるのです。
奥山真司(おくやま・まさし)/ 地政学・戦略学者 国際地政学研究所上席研究員
■1972年・横浜市生まれ。
■カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士(レーガン政権の核戦略アドバイザー)に師事。
■独自の情報網と分析で活躍する地政学者の旗手であり、ブログ「地政学を英国で学んだ」は、国内外の多くの専門家からも注目。新の国家戦略論を紹介している。
■著書に『地政学・アメリカの世界戦略地図』『ビジネス教養 地政学(サクッとわかるビジネス教養)』、訳書に『中国4.0』など多数。
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