ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月26日放送)に政策研究大学院大学教授で政治学者の竹中治堅が出演。緊急事態宣言の対象地域に北海道など8道県を追加し、まん延防止等重点措置を高知など4県に新たに適用するとした菅総理の発表について解説した。
政府、緊急事態宣言に8道県、まん延防止等重点措置に4県追加を決定
菅総理は8月25日、緊急事態宣言の対象地域に北海道や宮城など8道県を追加する他、まん延防止等重点措置を高知や佐賀など4県に新たに適用することを発表した。期間はいずれも8月27日~9月12日までとなる。
飯田)緊急事態宣言が21都道府県、まん延防止等重点措置が12県と、色を塗るとほぼ日本列島ではないかということになりますね。
竹中)東海道・山陽新幹線沿線は山口県を除いて、すべて緊急事態宣言の対象地域になりましたね。
「感染しても入院できないかも知れない」ということへの不安を多くの方が感じている
飯田)この話をするときには、ため息混じりになるような感じがありますが、竹中さんはどのようにご覧になりますか?
竹中)感染が止まらないので、このようなことになってしまった。東京都は少し落ちているようにも見えますが、まだ全国に拡大しています。大阪なども新規感染者数が増えています。
飯田)そうですね。
竹中)「新規感染者数だけを見るな」という話もあるのですが、重症者数も伸びていて、死者数も徐々に伸びている。いまは30人ぐらいですかね。100人というような数字ではないのですが、一時は落ちていたのがここまで伸びて来ているので、そこは少し心配ですよね。外国と比べて死者が少ないという話が常にありますが、自分にもし何か起きたときに、「いまの医療体制では入院できないかも知れない」ということへの不安を多くの方が感じていると思います。
ベッドを用意するのは都道府県の仕事~公立病院が少ない日本では中央集権的に指示ができない
飯田)病床の確保、医療提供体制の整備というのは、去年(2020年)のいまごろどころか、その前から言われ続けています。これには総理の指導力は発揮しづらい環境なのですか?
竹中)総理は直接には何の権限もないですからね。国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)を使ったらいいのではないかという議論が出ていますが、それでも万の単位で病床が出て来るという話ではないと思います。
飯田)そういう話ではない。
竹中)ベッドを用意するのは、都道府県の仕事なのです。都道府県もそれほどベッドを用意するということに関して、強い力を持っているということはないので、2段階で悩ましい。また、都道府県と首相は立場上、対等ですから、指示をすることは難しいのです。都道府県も病院に指示をすることは難しい。日本は公立病院が少ないので、「コロナ対策をしてください」と中央集権的にやることができないのです。
医療的な危機が起きたときに、国が使用できるリソースを用意しておく体制が必要
飯田)平時の立て付け上、そうなってしまっているとなると、総理の一存で変えることができる環境にはそもそもないということですか?
竹中)そうですね。ただ、国民の期待はすべて総理に向かってしまっているので、1年もありましたし、制度改正をある程度しておくべきだったのではないかなと思います。
飯田)有事におけるトップダウンのようなことをしようとして、憲法議論にまで発展することがあります。そこで「緊急事態条項がないとダメだ」とか、「私権の制限がしづらい」という議論も1年以上やっていますが、どのように見ればいいのでしょうか?
竹中)一足飛びに憲法の議論に行くよりも、このような医療的危機が起きたときは、国が使用できるリソースをもう少し用意することを考える。平時は都道府県中心に回せばいいのですが、いざとなった場合には、国立病院機構とJCHOには厚生労働大臣が指示を出せるので、国が使えるリソースをもう少し用意しておくという体制が必要だと思います。指示を出したときに彼らが従うのかどうかということは、また別問題としてありますが、もう少し工夫して、普段から余剰人員を抱えるようにしておくということが、今後必要なのではないかと思います。
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