カブール空港での爆発は女性テロリストの仕業の可能性も ~敬虔なムスリムならではの事情

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月27日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。アフガニスタンの首都カブールにある空港付近で起きた爆発による、米軍関係者や民間人の死傷者の発生について解説した。

26日、アフガニスタン首都カブールの空港付近での爆発で負傷し、手当てを受ける男性(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

アフガニスタンの首都カブールの空港周辺で2回爆発、ISが犯行主張

米国防総省は8月26日、アフガニスタンの首都カブールにある空港周辺で少なくとも2回の爆発があり、米軍関係者や民間人などに死傷者が出たと発表した。過激派組織IS、いわゆるイスラム国は26日、系列のニュースサイトでISの戦闘員が「アメリカ軍とタリバンの警備を突破した」と犯行を主張する声明を発表している。

飯田)自爆ベルトで、ということですが。

宮家)本当でない可能性は常にあるのですが、おそらくIS系と言われている人たちです。英語ではISIS-Kと言います。

飯田)アルファベットのK。

宮家)最初はダジャレかと思ったのだけれど、そうではなくて、ISIS-Kというのはイスラム国のホラサン州。ホラサン(Khorasan)だからKなのです。ホラサン州は、いまはイランの東部にあるのですが、昔はホラサンというとアフガニスタンやパキスタンも含めた、あの地域を言っていたわけです。ですからIS系、イスラム国系なのだけれども、もともとはタリバンの過激分子がISISに心酔して、「イスラム国のホラサン州」を名乗ったのが始まりだった。2015年のことです。だから活動の範囲は、どちらかと言えばアフガニスタン中心なのです。ただイランも困っていると思いますし、ISIS-Kはパキスタンでも活動しています。

飯田)あの辺の国境を行ったり来たりするわけですか。

宮家)国境はあってないようなものですからね。そこで、今回の攻撃をどう見るかなのですけれども、正直に言うと、「やはり起きたか」ということです。あれだけ混乱していて、多くの人が空港の壁の横に並んでいたわけでしょう。超密ですよね。自爆テロにとっては、格好のターゲットです。

飯田)そうなりますね。

宮家)5メートルに満たない距離で自爆ベルトを起動させて、十数人のアメリカ兵士を含む約160人を殺傷したということです。あの地域は空港の外ですから、タリバンが仕切っているはずなのです。仕切っているはずなのだけれども、チェックポイントをすり抜けているわけです。

女性テロリストの仕業かもしれない~ムスリムは女性のボディチェックはしない

宮家)なぜすり抜けているか。テロリストが女性である可能性がある、とアメリカの識者は言っていました。女性なら黒い服を纏っているので、そのなかに自爆ベルトを巻いても目立ちません。タリバンは基本的に敬虔なムスリムですから、女性のボディチェックは厳しくできないのです。

飯田)そうか。戒律に特に厳しい人たちでもあります。

宮家)ですから、女性には触れません。

飯田)なるほど。

宮家)そうすると、抜けられるのです。アフガニスタンだけではなくて、イラクでも女性のテロリスト集団がいたので、今回も女性である可能性は否定できません。

飯田)クルド人部隊の精鋭には女性部隊があるという話ですよね。

宮家)それはクルド系の正規軍兵士の話です。あちらは本当に強い女性なのだけれど、こちらはそうではなく、テロ集団でも一般女性が自爆テロをやるようになったのです。彼女たちは洗脳されて、天国に行けると思っているのだから、どうしようもないのです。

「空港の近くから離れるように」と警告していた米英~確率の高い情報が流れていた

宮家)これをやられたら、どのようなチェックポイントもすり抜けてしまいますよね。まだ真偽は判りませんが、いずれにせよ、恐れていたことがついに起きてしまったということです。アメリカ大統領の声明が発表され、アメリカ軍は撤退するのだと言ったら、首都カブールがあっけなく落ちました。そのときからもう、おそらくISIS-K、ホラサン州はいつかやるだろうと。そんなことは知っている人は知っていたと思います。

飯田)アメリカやイギリスも空港の近くから離れるようにと、数日前に警告していましたものね。

宮家)確度の高い情報が流れて来たからだと思います。その意味では、起こるべくして起きてしまった。悲劇ですけれどね。

アフガニスタン東部ジャララバードに入った反政府勢力タリバンの戦闘員ら。=2021年8月15日 AFP=時事 写真提供:時事通信

犠牲になった兵士はアフガンから避難する人たちを飛行機に乗せようとしていた~戦闘をしていたわけではない

宮家)あそこで12人の海兵隊員が死んでいるわけです。彼らは戦争で死んだのではありません。アフガンから逃げようとする人たちを助けるために、殺到する人たちを1人ひとりチェックして、飛行機に乗せる仕事をしていた。その人たちがこうやって亡くなったことに対して、まずは哀悼の意を表するべきだと思います。

報復か撤退か、難しいアメリカの選択

飯田)メールもさまざまいただいております。木更津市の“レオンの孤独”さん、58歳の漁師の方から。「カブールの自爆テロについて、アメリカ合衆国のバイデン大統領は報復を宣言しました。日本人の避難も急いで欲しいですよね」と。

宮家)本当にそうですよね。時間との戦いになります。しかし正直に言って、いまこういう状況になると、ますます空港へのアクセスが難しくなり、チェックが厳しくなるでしょうし、時間は過ぎて行く。しかし首都の治安維持は今やタリバンの責任です。

飯田)そういうことですね。

宮家)アメリカは少なくともそう思っています。そして同時にタリバンもテロの犯人を処罰すると言っているけれども、どこまでやるかはわからない。そうするとアメリカは、絶対に報復攻撃はやらなければいけなくなるのだけれども、それでは撤退計画はどうなるのだということにもなりかねない。非常に難しい選択ですよね。

飯田)難しいですね。

宮家)バイデンさんに対する批判が高まっていたのは事実です。私は先週、「これで米国人の死者が出たら、さらに評価が一段落ちます」という話をしていたのだけれども、最悪の事態が起きているということですね。

兵士を戦場に送るということ

飯田)アメリカ合衆国の大統領は亡くなった兵士に対して、レターを書いて署名するという話を聞いたことがあります。1人ひとりの人生があるということを考えると、こういう場に送り出すときは、覚悟が必要だということですね。

宮家)それは必要です。

飯田)もちろん政治家、決断する人や最高司令官が負うところです。これは、国民の覚悟というものも合わせて必要なことですね。

宮家)ロバート・ゲーツさんという元国防長官は、現職時代に自動署名器でやってもいい出征命令への署名を、全員に手書きでサインをしたということです。それは自分の名前で兵士を戦場に送ること、その責任の重さを考えれば機械にやらせるわけにはいかないからだそうです。これこそが心の通った国防長官です。

飯田)自分の名前を刻むと同時に、自分の胸に1つ1つ刻まれて行くのですよね。

宮家)それが何千人分になるわけですから。

覚悟を持ってアフガニスタンに向かった自衛隊員

飯田)日本も今回その決断をしたというのは、相当な覚悟がいるわけですよね。

宮家)素晴らしい決断だと思います。「安全なのですか」と言う人がいるのだけれども、誤解をおそれずに言うと、完全に安全なわけがありませんよね。安全であれば、民間航空機が行けばいいのです。安全ではないからこそ、訓練を受けたプロが行くのです。そう理解してあげてください。

飯田)彼らはその覚悟を持って、職務をしに行くのです。

宮家)我々は彼らを守らなければいけないし、称賛しなければいけませんよね。アメリカのマスコミ人だって現役軍人と話すときには冒頭必ず、“Thank you for your service to our country.”と言いますよ。

飯田)国に対しての奉仕に感謝を。

宮家)戦後の日本にはその言葉がないのです。しかし自衛隊員は、それがなくても、みんな頑張っているのです。国のためにサービスをしているのですよ。奉仕しているのです。そのことは正しく認識してあげないといけません。

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