アメリカも追随する日本の巨額債務 ~来年度予算案概算要求111兆円

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月1日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2022年度予算案の概算要求が過去最大の111兆円となったニュースについて解説した。

アメリカも追随する日本の巨額債務 ~来年度予算案概算要求111兆円

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

2022年度予算案の概算要求、過去最大の111兆円

国の2022年度予算案の編成に向け、各省庁は8月31日までに財務省に対して概算要求を提出した。その結果、2022年度予算案の概算要求は社会保障費などの増加を背景に、一般会計の要求総額111兆円余りと過去最大になっている。

飯田)医療、介護などの社会保障費が高齢化に伴って増え続けているということです。

『日本の巨額債務、米国の支出拡大が向かう未来か』

佐々木)新聞各紙を見ると、案の定、「無限に増え続ける財政、これで大丈夫なのか」というような議論になっているのだけれど、必ずしも世の中全体がそう見ているのかというと、そうでもありません。8月23日にウォール・ストリート・ジャーナルが、日本語版のタイトルですが、

『日本の巨額債務、米国の支出拡大が向かう未来か』

~『ウォール・ストリート・ジャーナル』2021年8月23日配信記事 より

佐々木)……という記事を書いています。

飯田)ウォール・ストリート・ジャーナルが。

佐々木)日本政府の財政出動による債務が多いのは事実なのだけれども、「アメリカもそうなりつつある」という話です。

『日本はしばしば、世界最大の舞台で将来デビューする政策の実験場になっている』

~『ウォール・ストリート・ジャーナル』2021年8月23日配信記事 より

佐々木)……と書いてあります。

日銀のゼロ金利や国債大量購入をFRBが追随

佐々木)日銀がゼロ金利を導入したり、国債を大量購入していますが、やるときは「そんなことをやって大丈夫なのか」と言われたけれど、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)がその後、追随して同じことをやっています。

飯田)FRBが。

佐々木)いまの巨額債務、財政出動に関しても、国の経済規模、要するに「GDPを超える負債を負うことはあり得ない」とよく言われているのだけれど、20年前の日本はそれを超えた。アメリカもついにコロナ禍もあって、数兆ドル、日本円で数百兆円の上積みを行うことを議論していて、もしかすると日本と同じように、 GDPを超えるような債務を負うことになるのではないかということです。

巨額債務、財政出動がいいか悪いかは歴史があとから証明する

佐々木)これがいいのか悪いのかは、歴史があとから証明するでしょう。リフレ政策や、MMTのようなことが言われているのだけれども、正しいかどうかは、現段階では誰にもわからない。経済学者のなかでも議論が続いています。ただし、1つのオプションとして日本国内で債務があっても、それは外資が持っているわけでもなければ、国内で積み上がっているだけなので。

飯田)自国通貨でもあるし。

佐々木)そういうことを考えれば、問題ないのではないかという議論はあるわけです。そこを踏まえた上で、財政出動の巨額積み上げはありかなしかという議論をした方がいいのではないでしょうか。

飯田)それを踏まえた上で。

佐々木)現状の新聞を見るとそれをやらずに、単に「このままで大丈夫なのか」と警告しているだけです。それは単に財務省の言っていることを追随しているに過ぎず、大前提のアメリカがこれをやろうとしていることを踏まえた議論に進んでいないですよね。

飯田)各社ほとんど同じようなことを書いているところを見ても、財務省のレクチャーそのままというような。

佐々木)大前提の議論をせずにそれを言っていても、説得力がないかなというのが、この話を見ていると1つあります。

アメリカも追随する日本の巨額債務 ~来年度予算案概算要求111兆円

26日、アフガニスタン首都カブールの空港付近での爆発で負傷し、手当てを受ける男性(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

アフガンのように世界の警察から撤退方向のアメリカ~自分で自国を守るためにも、防衛費の増加はやむを得ない

佐々木)もう1つ私が気になっているのは、防衛費です。今回は5兆4797億円で、史上最大規模と言われています。冷戦が終わって中国の危機が高まったため、かつての陸上自衛隊の北海道集約から移り、いまや南西諸島、石垣島などに陸上自衛隊のミサイル部隊を新設したり、日本版海兵隊と言われるような部隊をつくって、島嶼部の方にお金を増やしています。南西諸島の防衛力強化を図るためには、ある程度の費用がかかる。これはやむを得ないというか、いい方向だと思っています。

飯田)中国の脅威に対して。

佐々木)アメリカが世界の警察から撤退すると言われていて、実際、今回のアフガンでもそうですよね。アフガン国民から見れば、アメリカ軍がいてくれたから、タリバンが来なくて済んでいたのに、撤収してしまったら、いきなりアフガンがタリバンの天下になってしまった。これを見て、台湾や香港は大丈夫なのかと言われています。台湾から見れば、「いずれ我々もアメリカから見捨てられて、中国に蹂躙されるのではないか」という不安が高まっているわけです。

飯田)アフガンのように。

佐々木)同盟諸国から見ると、「アメリカは本当に信頼できるのか」、「いざというときに我々を守ってくれるのか」という不安が高まっている。日本の自衛隊も、「自分で自国を守る」ということをきちんと考えなければいけない状況になって来ているのです。その裏付けのもとに、防衛費が増えるというのはやむを得ないし、そういう方向にならざるを得ないかなという感じがします。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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