オーストラリアが「気候変動対策」をプッシュする本当の理由
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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(9月14日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。国家のツールとして使われる気候変動問題について解説した。
国連総会での注目ポイント
第76回国連総会が現地時間9月14日、ニューヨークで開幕する。各国首脳らによる一般討論演説は21~27日に行われ、アメリカのバイデン大統領はアフガニスタン情勢や新型コロナ対策、気候変動について演説を行う見通しである。
新行)国連総会での注目ポイントはどのようなところでしょうか?
奥山)新型コロナ対策は世界的に出て来ると思いますし、アメリカについては、アフガニスタン撤退の事後処理。また、難民問題などでしょうか。
「気候変動」を利用しようとする先進各国
奥山)私が気になっているのは、気候変動問題についてです。基本的に、世界の先進国は気候変動があるという前提で、政治も産業界も動いています。中国とアメリカが唯一、お互いが関係をつくって行ける分野という意味でも、気候変動がフォーカスされているのだと思います。
新行)米中が唯一関係をつくれる分野。
奥山)日本で暮らしていると、「気候変動対策は大事だよね。やらないといけないよね」ということで、倫理的にも「人類の使命としてやらなくてはいけない」と思っている部分があるのですが、世界各国、どの国も、「こういうものを利用しよう」という意識を持っています。そのことは日本の人々にも知ってもらいたいといつも思っています。
オーストラリアがパプアニューギニアやバヌアツなどに気候変動を理由に支援する理由
奥山)オーストラリアは日本と仲がいいですし、これから中国に対抗して行くためには、重大なパートナーになります。そのオーストラリアを調べると、オーストラリアは気候変動対策をものすごくプッシュするのです。社会的にプッシュしたい人たちがたくさんいるのですが、なかでもオーストラリア軍が「気候変動を何とかしなければいけない」と言っているのです。
新行)オーストラリア軍が。
奥山)なぜかと思って調べてみると、オーストラリアはすぐ近くに、昔は植民地的な扱いでしたが、パプアニューギニア、バヌアツなどの国があります。バヌアツやツバルに関しては、地球の氷が溶けて水位が上がり、沈んでしまうというような話があります。そこで気候変動を理由に「支援したい」と、昔から言っているのです。
パプアニューギニアやバヌアツに投資をする中国に対抗
奥山)なぜパプアニューギニアやバヌアツなのかと言うと、それらの国に中国が相当、支援や投資をしているのです。言ってみれば、オーストラリアの裏庭に中国が入って来ている。それを警戒しているのです。中国に対抗するためには、軍もあえて出て行って、気候変動の対策をしなければいけない。それを理由に、パプアニューギニアやバヌアツのような国を支援して行こうと。こちら側もいろいろなことを教えたり、投資しますよと。
新行)中国に対抗して。
奥山)表向き、看板としては、気候変動問題を使っているのですけれども、それ以上に中国が裏庭に入っていることを警戒して、安全保障の問題が本当の理由として裏側にあるのです。気候変動という看板をドカンと前に出して、本当の狙いは自分の安全保障、戦略的なことをやっているのです。
新行)きっかけに使っているということですよね。
奥山)気候変動問題が本当は戦略の話に直結しているのだよと。表向きは、気候変動対策と言うと耳触りがいいけれど、実態はその裏にあって、「気候変動対策をしなくてはいけないから、軍を派遣しよう」という状況があるのです。だから、「国家のツールとして使われる気候変動問題を我々も意識するべきだ」ということを思うわけです。
新行)気候変動問題を掲げて、産業についても、意見が出るということもあり得ますよね。
奥山)産業界では、それがビジネスチャンスになるわけです。「我々は環境問題をしっかりとやらなければいけない」ということで、環境ビジネスが生まれる。気候変動のような大きな問題が出て来て、世界がそちらの方に動くときには、各国、必ずそれを利用して、自分の都合のいい状態にしようとする。国連総会では、気候変動をどこまで利用して行くのか、興味を持って見ているところです。
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