中国とアメリカの間で揺れている韓国 ~日米豪印の枠組み「クアッド」に“入らない“背景

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(9月15日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。韓国の大統領府で行われる中国の王毅外相と韓国の文在寅大統領の会談について解説した。

中国とアメリカの間で揺れている韓国 ~日米豪印の枠組み「クアッド」に“入らない“背景

ソウルの韓国大統領府で記者会見する文在寅大統領(共同)=2021年1月18日 写真提供:共同通信社

中国の王毅外相、文在寅大統領と会談

韓国を訪れている中国の王毅外相は9月15日、韓国の文在寅大統領と大統領府で会談する。会談では、文大統領が南北関係の改善、米朝対話再開など、朝鮮半島平和プロセスの進展に協力を求めるものとみられる。

新行)一方で、中国の王毅外相は、韓国が2021年5月に行われたアメリカとの首脳会談の共同声明で、台湾問題に初めて言及するなど、アメリカと距離を縮めている状況を意識して、アメリカをけん制するメッセージを発する可能性もあるのではないかとみられています。

佐々木)クアッドの枠組みはアメリカ、日本、オーストラリア、インドですが、韓国も本当は入るべき話なのです。

中国とアメリカの間で揺れている韓国

佐々木)ところが、韓国としては中国との関係が気になるので、クアッドには積極的に入れない。その中途半端な状況を、韓国は「バランス外交だ」と。中国とアメリカの間でバランスよくやるのだと言っているけれども、「そんなにうまくバランスが取れるのか」と思います。

新行)バランスよく。

佐々木)2021年3月に、ロシアのラブロフ外相が8年ぶりに訪韓しています。いまの韓国の状況を見て、ロシアも「こちら側に来い」とアピールしているのです。いま中国とロシアは仲がよくて、アメリカに対抗している。韓国はアメリカと中国の間でグラグラしていて、ロシアもそこに絡み、ロシア・中国連合、連合してはいませんが、そういう仲間のなかに韓国を引き込もうとしている。そういう構図なのです。

韓国が中露側に行ってしまうと困る日本

佐々木)日本としては、韓国が本当にそっちへ転がってしまうと困るのです。日本にとっての朝鮮半島は、ロシア、中国と向き合う際の最大のクッションになっているので、それが向こう側に行ってしまうと、日本はもろに中国、ロシアと向き合わなければならなくなる。だから韓国には何としても、こちらに留まって欲しいのだけれども、微妙な段階になって来ているかなという感じですよね。

中国とアメリカの間で揺れている韓国 ~日米豪印の枠組み「クアッド」に“入らない“背景

中国は2020年10月14日午前、広東省深セン市で深セン経済特区〈SEZ〉設置40周年を祝う盛大な大会を開いた。習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席がこれに出席し、重要演説を行った。〔新華社=中国通信〕写真提供:時事通信社

国際秩序のなかで、中国、ロシアとどう向き合うのか

新行)さらに14日は、北朝鮮問題を担当する日米韓3ヵ国の高官による協議が行われて、連携強化を確認したということです。

佐々木)北朝鮮が巡航ミサイルを発射したこともあり、日本としても、今後の防衛をどうするのかと。巡航ミサイルは、スピードは遅いのだけれども、低いところを飛んで来るので防衛が難しいと言われています。北朝鮮は、いまや弾道ミサイルも巡航ミサイルも完備して、ほぼ日本全土を射程距離に収めてしまうような状況になっている。そのなかで、北朝鮮、韓国、ロシア、中国という4ヵ国とどのように向き合って行くのか。難しい舵取りが強いられています。

新行)難しいですね。

佐々木)安倍政権は、そこを積極的に巻き返して、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)のような枠組みを打ち出したことは大成功だったのですが、次の総理大臣が安全保障についてどこまで言えるのかというところは、重要なポイントになって来ます。

新行)総裁選でのポイントになりますね。

佐々木)右翼と言われていますけれども、高市さんの「敵基地攻撃能力は持つべきだ」という発言は重要になります。ただ、そういうミクロな防衛政策だけでなく、全体的に、「FOIPをどういう方向に進めるか」というところまで議論して欲しいですよね。単なる防衛能力だけではない、「国際秩序のなかで中国やロシアとどう向き合うのか」ということを、もう少し理念として磨いて欲しいなという気持ちもあります。

コロナ後の経済、安全保障について、外交について、全面的に打ち出して議論して欲しい

新行)北朝鮮の巡航ミサイルの発射で、日本における国防の部分が、総裁選のなかでもより注目を集めています。

佐々木)安全保障と経済政策こそが大事な論点なのだけれど、それ以外のところがクローズアップされるのはどうなのか。エネルギー政策も大事なのですが、いまこの段階で原発についての是非を議論するタイミングではないですよね。

新行)このタイミングでは。

佐々木)コロナ後の経済政策をどうするのかということと、危機が高まっている北朝鮮の問題など。そのなかで安全保障をどうするのか、外交をどうするのかというところを全面に打ち出して議論して欲しいなと思うのですが、なかなかそこまで行かない。これは政治家の問題というより、メディアの問題であると思います。何が最重要事項で議論すべきなのかということと、自分たちが議題にしたいことが整理できていないのではないでしょうか。

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