米英による豪への「原子力潜水艦の技術供与」が意味すること

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月24日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。「AUKUS(オーカス)」について解説した。

米英による豪への「原子力潜水艦の技術供与」が意味すること

米英豪3カ国オンライン共同記者会見=2021年9月16日 EPA=時事 写真提供:時事通信

米英豪で「AUKUS(オーカス)」創設

「AUKUS」はアメリカ、イギリス、オーストラリアによる安全保障の枠組みである。9月15日に創設することが発表された。オーストラリアはアメリカ、イギリスから原子力潜水艦の技術供与を受けることが決まり、フランスと進めて来た潜水艦開発計画が白紙となったため、フランスは強い怒りを表明している。アメリカのバイデン大統領とフランスのマクロン大統領が22日に電話会談を行い、関係の修復に乗り出している。

飯田)フランスは、一時は大使を引き上げました。

宮家)オーストラリアのAU、イギリスはUK、アメリカはUSで、「AUKUS」と呼ぶということです。もともと太平洋戦争では一緒に戦った同盟国ですよね。AUKUSの共同声明が出ているのですが、それを読んでみると、オーストラリアを含めて三国は海洋国家だと言っているのです。

中国の艦船や潜水艦を攻撃する能力のある潜水艦が必要~原子力潜水艦は脅威になる

宮家)これら海洋国家にとって、いま中国海軍がこれだけ強くなって来たときに、何がいちばん重要かと言うと、それは潜水艦なのです。しかも攻撃型の潜水艦です。核弾道ミサイルを撃つ方ではなくて・・・。

飯田)核ミサイルを撃つ潜水艦ではなく。

宮家)中国の艦船や潜水艦に対して、攻撃できる能力を持つ潜水艦が大事になるわけです。それが必要になって来たので、オーストラリアの海軍を強化しないといけないということになった。最初は日本製潜水艦の建造の話もありましたよね。

オーストラリアが米英から原子力潜水艦の技術供与を受けることが決まり、フランスと進めていた潜水艦開発計画が白紙に

飯田)そうですよね。日仏で争っていました。

宮家)経験不足もあって日本案が消え、結局フランスになったのだけれど、その潜水艦はディーゼルエンジンなのです。よく考えてみたら「本当に大丈夫か」と。ディーゼルなので潜水して少し経ったら、海の上に上がって「呼吸」をしなくてはいけないわけです。

飯田)長く潜航することはできない。

宮家)原子力潜水艦はそれをしなくていいという意味では、運用の観点から言うと、圧倒的に有利になります。中国からすれば、相当な脅威になるということです。そして、今回アメリカはそのフランスの梯子を外してしまったのです。今のアメリカは1度に1つのことしかできなくなってしまったようです。だから、オーストラリアに「原子力潜水艦の技術を出すのだ」と決めたら、もう周りが見えなくなってしまった。そうしたら、「フランスと話していたのか、ごめんね」と突然言い出した。それはフランスも怒りますよ。

飯田)「うちはサインもしたのだよ」と。

アメリカが欧州、中東からアジアにシフトしていることの象徴的な出来事

宮家)フランスが怒る気持ちはわかります。しかし、これこそアメリカの戦略的関心がヨーロッパや中東からどれだけアジアにシフトしているかを象徴しています。いいか悪いかは別にして。フランスも含めて、ヨーロッパからの報道を見ていると、みんな怒っています。特にフランスが怒っています。当たり前ですよね。ただ、大きな流れとして、南太平洋、西太平洋における潜水艦の問題というのは、絶対にこれから問題になるので、アメリカとしては技術供与決めざるを得なかったのでしょうね。

飯田)腹を括ったということですか。

宮家)ルビコン川を渡ったのだと私は思います。オーストラリアも同様です。

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