最大のポイントは「立憲民主党と共産党の選挙協力」 ~衆議院総選挙
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月14日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。10月14日に衆院が解散され、事実上の選挙戦へ突入する衆議院総選挙について解説した。
10月14日に衆議院解散、事実上の選挙戦へ
岸田総理大臣は10月14日に臨時閣議を開き、衆議院の解散を決定した。選挙期間は、その後の閣議で10月19日公示、31日投開票と決定し、与野党は事実上の選挙戦へ突入。
飯田)14日に衆院が解散ということで、各紙、1面から記事になっております。思えば2017年以来ということで。
鈴木)4年間の任期を全うしたかどうかは別にしても、フルに4年間ということです。逆に言えば4年ぶりに、有権者や国民にしてみると、審判を下すタイミングが来るのだということです。「これから未来をどうして行くか」というのも争点だし、この4年間の総括、評価、反省を含めたものに対しての1票でもあります。今度の選挙は、いつもに増して「1票の重み」があると思います。特にコロナ禍において、日本の危機管理などいろいろな問題が出て来たでしょう。よく考えて1票を投じる、いい機会だと思います。
最大のポイントは「立憲民主党と共産党の選挙協力がうまく行くか」ということ
飯田)小選挙区比例代表という形で戦いますが、小選挙区は1人しか当選者が出ないということになるので、各党、どのように調整して行くのかというところですよね。
鈴木)これが最大の課題でした。1人しか当選しないわけだから、野党がバラバラでは勝てっこないということで、できる限り野党は候補を一本化して、選挙協力をする。もちろん全部とは言いませんが、政策も3つ、4つは集約し、共通の政策で一本化して戦えるかどうか。そこがポイントだったのです。
飯田)そうですね。
鈴木)選挙協力のポイントは、政党で言うと、立憲民主党と共産党です。この2つの選挙協力や候補者調整がうまく行くかというのが、最大のポイントになる。だいたい289ある小選挙区のうち、約220は、何となく一本化できたという話はありました。
飯田)14日の新聞にも載っています。
鈴木)共産党の小池さんはよく取材させてもらうのですが、数としてはもう少しやりたかったのではないでしょうか。あと20くらいは調整できたかも知れない。この辺りは共産党も具体的に提案をしていたようです。「ここを引くから、ここをうちにまとめてくれないか」というような具体的なものを提案していたけれど、それに対して立憲の方から返事がない。立憲も調整をしにくいということで、結局、及ばなかったのでしょうね。
220まで調整できた
鈴木)「約220まで調整できた」ということをどう見るかですが、最初はうまく行かないと言って決め付けていたわけだから、それが220まで行ったというのは、「よし」と見てもいいかも知れません。
政権側も自民・公明の連立 ~同じように野党も1つになってもいい
飯田)その紆余曲折のなかには、先日、連合の新しい会長の芳野さんと枝野さんが会って、「共産党との共闘はこちらとしてはまかりならん」と、かなり強い口調でおっしゃっていたという報道も出ました。その辺りをどうするかという問題があります。
鈴木)連合、それからもう1つ野党で言うと、玉木さんのところの国民民主党があるでしょう。この辺りとの絡みは非常に難しいです。
飯田)連合と国民民主党との。
鈴木)「目的は何なのか」というところです。選挙戦術という、現実的な選択です。「政策がどうだ」と言っていたら一緒にはやれませんよ。でも、野党を取材していたり、勉強会などで意見を求められたときに言うのですが、そこを皆さん、すごく気にするのです。立憲もそうですし、国民民主も、連合もそうです。こだわるのです。「共産党と一緒にやっていいのか」とか、「政策が」などと。でも、乱暴な言い方ですが、生真面目過ぎませんかと。だって、政権側は自民・公明が一緒にやっているのですよ。あちらの政策は全部一緒ですか? 違うでしょう。
大きい意味での「2大政党」をつくるべき
鈴木)もっと大きい意味での2大政党というか、大きな2つの塊が切磋琢磨することによって、政治に緊張感が生まれれば、政権というものは国民の方を見るのです。緊張感がなければ好き勝手にやるではないですか。いままでにそういうことはたくさんあったわけだから。そういう意味で、大きな2つの勢力で緊張感をつくり出す。大きな方向性があるなら固まっていいではないかと。
飯田)大きな方向性があるのであれば。
鈴木)いまの政権だって連立なのですよ。現実的な選択として、「多少違いがあっても、戦うときは野党も1つになっていいではないか」ということを言うのです。なかなかそこは過去の歴史があり、労働組合もあり、血を流すような歴史があるわけですから難しいこともわかりますが。
飯田)本当に血が流れていたこともあったわけですものね。
鈴木)しかし、「国民のために」と考えると、選択肢の1つとしてあってもいいのではないか。「心まで1つになれ」とは言わないけれども、半分の心くらいまでなら1つになってもいいのではないかと思うのです。
かつての「自社さ政権」のあり方
飯田)そう考えると、自民党は社会党とすら一緒にやったという。
鈴木)「自社さ政権」のときは当時、取材していてひっくり返りましたよ。「社会党と組むの?」と。でも、「それが権力闘争だ」ということです。裏で絵を描いていた亀井さんや森さん、野中さんなどは平然としていましたよ。あのとき「すごいな」と思ったのは、いちばん数の少ない社会党を前面に立てたのです。
飯田)村山富市さんを首相として。
鈴木)そして、いちばん数を持っている自民党が後方支援で裏に回るという。いいか悪いかは別だけれども、ああいう権力闘争のダイナミズムのようなものも取材して来たものだから、正論は正論でいいのだけれど、もう少しダイナミックに考えてもいいのではないでしょうか。
飯田)あのときも憲法をどうするか、自衛隊や9条の位置付けなどについて、社会党をどうするのかというところまで、社会党側にも突きつけられた部分があった。
鈴木)それで、社会党も変質しましたからね。
接戦のところを野党が獲れば、過半数ギリギリのところまで行く可能性も
飯田)当時の社会党の位置付けと、今回、野党共闘にとっての共産党というのはどうなのかという。同じように共産党も社会党的な脱皮ができるのか。また、脱皮して行くということが果たして党勢にとっていいのか。
鈴木)私が取材している限りでは、あのころの社会党よりも、いまの共産党の方が現実主義だと思います。そういう意味では「共産党」という名前を変えれば……。
飯田)そういう議論もありますよね。
鈴木)こだわっているから、「共産党は変わらないな」と思うかも知れませんが、全選挙区に候補を意地でも立てていたところが、選挙協力のために平気で引くのですから。あのときよりも、いまの共産党は極めてリアリストになっている気がします。いいか悪いかは別ですよ。ただ、先ほど言ったように、「大きな2つの塊で政治に緊張感をつくる」というのが、国民にとってはプラスになる。そう思うから、現実的な選択というのは、私は「あり」だと思います。
飯田)現実的な選択は。
鈴木)自民党が世論調査をやっていて、何となく数字が入って来ていますけれども、やはり現有より減る。単独過半数は割らないような数字になっているけれど、接戦のところがあって、そこが全部やられてしまうと、単独過半数ギリギリのところまで行く可能性があるのです。まだ最初の調査ですけれどもね。
飯田)政権を支持するかどうかについて、まだ「どちらとも言えない」という方々が3~4割いるというところで、そこがどうなるかで変わって来る。
鈴木)短期決戦は、ネガティブに言えば時間がないではないですか。逆に言えば、短期決戦では何か1つあると「ガラッ」と変わって、それを修復できないところもある。それも短期決戦なのです。だから、岸田さんとしては失言などは避けたいし、何かしらインパクトを与えたい。野党は何か1つそのきっかけをつくりたい。そんな選挙になるのではないでしょうか。
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