ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月13日放送)に国民民主党代表の玉木雄一郎が出演。10月12日に行われた自身による代表質問について、また『文藝春秋』で発表された矢野康治財務事務次官の論考について述べた。
国民民主党・玉木代表に訊く、岸田政権の政策をめぐっての論戦
国会では10月12日、参議院に続いて衆議院でも代表質問が行われ、岸田政権の経済政策や新型コロナの影響を受けた人たちへの支援策について、各党が掲げる政策や政府の対応をめぐって論戦が交わされた。
飯田)昨日(10月12日)の衆院では公明党の石井幹事長、共産党の志位委員長、日本維新の会の馬場幹事長、そして国民民主党の玉木代表が質問に立っております。ここではその玉木さんとつないで、昨日の総理の答弁などについて伺います。
「令和版の所得倍増計画」をなぜ消したのか ~曖昧な岸田総理の答弁
飯田)まず昨日の代表質問に関して、どういう感想をお持ちですか?
玉木)岸田総理の誕生は約30年ぶりの宏池会の総理だということで、期待していたし、頑張って欲しいと思っていました。
飯田)期待していた。
玉木)これまでの路線が変わるのではないかと思っていたので、昨日は正面からいろいろな質問をぶつけました。しかし、一言で言うと「岸田カラーが消えてしまったな」という印象を受けました。
飯田)岸田カラーが消えた。
玉木)例えば、所得倍増計画。当時の池田勇人内閣が掲げた、日本人の所得を拡大するという計画です。その令和版ということを先日の総裁選挙で訴えて、看板政策だったわけですね。
飯田)そうですね。
玉木)国民の多くもそう思っていらっしゃると思いますが、所信表明演説のなかにまったく出て来なかった。「なぜ消したのですか」と聞いたら、倍増と言ったのに、「倍増は倍増という意味ではありません」というような、とても曖昧な答弁でした。それは信頼と納得の政治につながらないのではないかなと。また言葉で誤魔化す政治が続くのかなと、残念でしたね。
高圧経済を目指し、国民の給料を上げる
飯田)玉木さんの質問のなかにも国民民主党の政策を織り交ぜながら、ある意味、玉木さんの所信表明のような形で質問されていたかと思います。そのなかで所得倍増も可能なくらいの経済政策、特に高圧経済を目指すのだというところを盛り込まれていました。
玉木)私も実は今回、公約の大きな柱の1つに「給料が上がる経済にしよう」ということを掲げているのです。
飯田)そうですね。
玉木)コロナ禍の前から日本は賃金が下がっていて、先進国のなかで賃金が上がらない唯一の国が日本なのです。賃金が上がらなければ、それに連動する年金も上がらないので、若者も高齢者もみんな不安になってしまう。30年間、その解決策を示せなかったという状況を変えたいと。「高圧経済」というのは難しい言葉なのですが、いまアメリカがやっている政策なのです。
飯田)アメリカが。
玉木)アメリカのイエレン財務長官が、FRBの議長だったときからやっていますが、とにかく一時、景気を加熱させようということです。供給を上回る需要をつくり出す。政府支出を増やして一時的に回復させ、労働市場もタイトになって賃金も上がる、設備投資も増える、少しインフレ気味になる。いまアメリカで起こっていることはそれなのです。
飯田)政府支出を増やして。
玉木)日本はずっと賃金デフレですから、これを日本でもやろうと。やったらどうですかと言ったのですけれど、ショボかったですね。
ファンドの財源について
飯田)スタジオには数量政策学者の高橋洋一さんもいらっしゃいます。
数量政策学者・高橋洋一)玉木さんは質問のなかで、ファンドの話について財源を聞いていたではないですか。
玉木)そうです。
高橋)あの答えはどうでした?
玉木)まったく答えていませんでした。私がまだ財務省にいたころ、格付け会社から日本国債の格付けを引き下げられたときに、アメリカや日本では自国建て通貨の国債はデフォルトとしないと思うのだけれど、あなたたちはどういう場合をデフォルトと想定しているのだと、財務省から格付け会社に質問を出したのです。
飯田)財務省から。
玉木)「そういうことを財務省が言っているのですけれど、いまも同じ考えですか」ということを聞いたら、「デフォルトもあり得る」という話もしていました。
高橋洋一 ~矢野康治財務事務次官の論考は会計学で0点、金融工学でも0点
高橋)その観点ですと、『文藝春秋』で発表された矢野康治財務事務次官の話についてはどう思いますか?
玉木)財務省の設置法上、責務だからわかるのですよ。ただ、するのであれば、その前に自分の上司である財務大臣を説得するなり、与党や政府の人をまず説得してやるのが筋ではないかと思います。いきなり雑誌に書いてしまうというのは、矢野さんらしいのだけれど、違うなという気がしますね。
高橋)それは手続き論ですけれど、中身はどうですか?
玉木)「古いな」という気がしますね。
飯田)古い。
高橋)ちなみに私は会計学で0点、金融工学でも0点をつけました。あれは1つの会計だけで見てはダメです。バランスシートを見なければ。あとは破綻確率を計算すると、今後5年で1%くらいですからね。あれで破綻と言ってはいけないですよ。
玉木)そう思いますし、こういうことを言って破綻せずに来て、日本経済が競争力を落としていることに対する解決策はどうするのかと思います。財務省の仕事ではないのかも知れないけれど、では、「落ちている経済成長率をどうするのだ」というような解決策を示さないといけません。アメリカも財政を拡張しているし、ヨーロッパもそうです。あそこで止まってしまうと、その先がない気がしましたね。
高橋)玉木さんの質問にあるファンドの話で、矢野さんは「ファンドは税金でやれ」と言っているのです。あれは理論的におかしいでしょう。
玉木)そうなのですよね。私は「教育国債」というものを前から言っています。もともとこの話のきっかけは1年生だったときに、「建設国債の発行対象経費を調べろ、何とかしろ」という宿題があったのです。当時、育英会の出資金が建設国債の発行対象経費で、いまでもきっとそうなのですけれど。
飯田)そうなのですね。
玉木)なぜ、文科省が教育絡みのところに建設国債を発行しているのだと言ったら、「人づくりだから、未来の資産が残るから」というようなことを言っていました。そうであれば教育へ、まさに将来の納税者をつくったり、経済成長の源をつくるために、正面から国債発行対象の経費にしたらいいではないかと。
高橋)その通りですね。
飯田)建設国債の償還が60年だから、長い間かけて少しずつ返して行けばいいし。
高橋)その話について、実は財政法のコンメンタールに私が現役のときに書きましたよ。いまでもその表現は残っています。だから「ファンドは税金ではなく国債だ」というのは、その理論から出て来るのです。でも矢野さんはそれを知らないのですよ。
飯田)教育投資へのファンドの話をしているのですか?
高橋)投資だからということで。
玉木)教育は「国家百年の大計」と言うではないですか。だから同じ国債を発行するのでも、超長期の100年国債という形でやればいいし、いろいろな工夫ができると思うのですよね。
アフターコロナへ向け、経済を上げるためにもいまこそ「トリガー条項」を発令するべき
飯田)マクロな全体の部分だけではなくて、消費税の減税であるとか、あるいはガソリンの値段はどうするのかという辺りで、「トリガー条項」にも触れていらっしゃいました。一時的にガソリンの値段が上がったら、税金を一部取るのをやめようという。
玉木)全国を回っていると、田舎ほど車に頼らざるを得ない生活ですよね。
飯田)そうですね。
玉木)リッター160円や170円になると厳しいのですよ。「トリガー条項」というのは、3ヵ月連続でリッター160円を超えたときに、上乗せされている税金がリッター25.1円あるのですけれど、これを取るのをやめようという制度です。既に法律があります。
飯田)既に。
玉木)東日本大震災が起こってしまったので、その適用を凍結しているというのがいまの状況なのです。しかし、これだけ価格が上がって来たら、世界的にも上がるし、せっかくコロナから立ち直って消費活動に火を点けて行こうというときに、原油価格が上がってガソリンが上がるとマイナスになってしまいます。ここはまさに法律通り、「トリガー条項」を発令したらいいと思うのです。
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