ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月22日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。10月18日に亡くなったパウエル元アメリカ国務長官について解説した。
よき時代のアメリカンドリームを体現した1つの例
アメリカで黒人として初めて国務長官と米軍制服組トップの統合参謀本部議長を務めたパウエル元国務長官が、10月18日に亡くなった。84歳だった。死因は新型コロナウイルス感染による合併症だったとのこと。パウエル氏は1991年の湾岸戦争を勝利に導いたことで知られる他、黒人のオバマ元大統領やオースティン国防長官らに指導層への道を切り開いた。
飯田)もともとはジャマイカ移民の息子さんだということです。
宮家)アメリカンドリームを体現した人です。人種差別が酷かった軍に、アフリカ系の人が軍人として入るのだけれども、パウエルさんは陸軍士官学校(ウェストポイント)卒業ではなく、ニューヨーク市立大学のご出身です。勉強して入って、そして頭角を現し、最後は国務長官にもなったわけです。いい意味で、よき時代のアメリカンドリームを体現した1つの例です。
飯田)アメリカンドリームを。
宮家)私は息子さんをよく知っていますが、とてもいいご家族です。個人的にも非常にショックでした。パウエルさんは共和党内の穏健派であり、決してリベラルではないけれども、しっかりとした政治家、ステーツマンです。その方が亡くなったという意味は大きいです。ただ、歴代の大統領や政治家がみんな彼を惜しんで、追悼や哀悼の意を表しているにもかかわらず、1人だけ変なことを言う人がいますよね。名前は言いませんけれども。共和党がそういう時代に入ってしまったというのは、残念な思いがあります。
パウエル氏のリーダーシップ論
宮家)パウエルさんは格言が多いことでも有名です。アメリカ陸軍を率いて、最終的に米軍を全部率いたわけですから、リーダーシップは素晴らしいものがありました。彼の格言を1つご紹介します。「リーダーシップとは何かと言うと、問題を解決することだ。部下が問題を持ち込んで来たら、それであなたはリーダーなのである。もし持ち込んで来なくなったのなら、彼らがあなたに解決する能力がないと見たか、もしくはやる気がないと見られているのだ。その時点であなたはもうリーダーではない」と、こういう言い方をするのです。
飯田)リーダーシップとは。
宮家)それから、「リーダーは必要以上の議論をしてはいけない。ものごとをいい意味で単純化して、誰にでもわかる解決策を示すこと」……これがリーダーシップだと言っているのです。勉強になるなと思います。人柄がいいし、能力もあるのだけれども、きちんとリーダーとしての素質を持っているからこそ、あそこまで登り詰めたのだなとつくづく思いました。
飯田)経歴を見ると、ベトナム戦争から始まり、現場で叩き上げられた感覚なのですね。
宮家)そうです。その現場で叩き上げられた感覚がイラク戦争では裏切られてしまったのです。
飯田)「人生の汚点だ」とパウエルさんご自身も振り返っています。
宮家)残念だとは思います。
飯田)謹んで哀悼の意を表します。
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