ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月9日放送)に自由民主党・参議院の佐藤正久が出演。第2次岸田政権と今後の外交・安保政策について解説した。
11月10日に特別国会召集、第2次岸田内閣発足へ
政府は衆議院議員選挙を受けた特別国会を11月10日に召集する。この特別国会では総理大臣の指名選挙が行われ、岸田総理大臣が再び指名される見通しで、第2次岸田内閣が発足する。
飯田)岸田内閣の今後について、外交・安保を中心に、自由民主党の参議院議員で自由民主党外交部会長である「ヒゲの隊長」こと、佐藤正久議員に伺います。
佐藤)おはようございます。
飯田)衆院選では、全国を飛び回って応援されていらっしゃいましたが、どうご覧になりましたか?
佐藤)いまは平時ではなく非常時なので、みんなが安定を求めたということが大きかったと思います。意外だったのは、前回よりも若い方が話を聞きに来ているという状況が散見されたことです。若い方はテレビや新聞よりも、ネット中心に情報を得ています。若い方は自民党に入れた方が多かったという調査も出ていますので、ネットを無視できない時代に来たのだと思います。
飯田)この先の話も含めて政策を訴えて来ましたが、若い人たちがその辺を重視しているという感じはありましたか?
佐藤)特に安全保障関係については、ネットやSNSの方がはっきり論調が出ますから、こういう部分は無視できないのかなと思います。
日米で役割分担を分けて対中国包囲網をつくる
飯田)本格的に始動する岸田政権において、「外交はどうなって行くのだろう」というところです。中国シフトなのかどうかと言われますけれども、佐藤さんはどうご覧になっていますか?
佐藤)今後、対中国がメインになるのは間違いないと思います。自由主義陣営でいかに対中国包囲網的なものをつくれるかと。日米で役割分担が必要になるとは思いますけれども、よく言われるような、日米豪印のクアッド、あるいはG7の先進首脳国。それに加えてAUKUSという、イギリス、アメリカ、豪州の軍事的な枠組みもできました。そういうものを使いながら今度はTPP、あるいは自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を上手く組み合わせつつ、包囲網をつくることが大事です。特にASEANが鍵になると思います。中国包囲網というと、ASEANは警戒感を持っておりますので、うまく色を出さないような形でジワリジワリと持って行くのが日本の立ち位置としては重要だと思います。
ASEANをこちら側に引き込むのが日本の役目
飯田)色を出さないというのは、自由や法の支配など、価値観を前面に出すということですか?
佐藤)そうですね。アメリカは明確に「自由で開かれたインド太平洋」を「対中国」と言っていますし、もともとTPPも対中国としてつくったものです。だからアメリカはそう言っていいと思いますが、日本はあえてそう言わなくても何となくわかりますし、ASEANをこちら側に引き込む仲介役という観点では、あまり軍事的な色を出さずにうまく引っ張り込んで、結果的に対中包囲網をつくれればいいと思います。
林芳正外務大臣になったから「中国寄り」になることはない ~外交は官邸中心に
飯田)スタジオには有本香さんもいらっしゃいます。
ジャーナリスト・有本香)外交部会長は引き続き、佐藤さんがおやりになるという理解でいいですか?
佐藤)きょう(11月9日)の総務会で決まるようですけれども。(編集部注:11月9日の自民党総務会により、佐藤正久氏の外交部会長継続が決定)
有本)対中包囲網的なものは、第2次安倍政権がスタートしたときから継続してやって来たことだと思いますけれども、外務大臣が林芳正さんに変わります。ネット上では、「かなり中国寄りなのではないか」と懸念されていますが。
佐藤)議連の会長ですからね。
有本)日中友好議連の会長です。お話ししにくいかも知れませんが、どのようにお感じでしょうか?
佐藤)心配には及ばないと思います。全体的に外交は外務省だけではなく、官邸中心にやるという色合いも強いですし、安倍政権のとき以上に党が強くなると思います。前の外務大臣が幹事長になりましたし、高市政調会長も政策中心で、総裁選挙や総選挙でも、あのような主張をされていましたので、いままでより党が強くなります。自民党の方も対中政策については、国益を中心に考えて行く。特に価値観に関して、譲ってはいけない部分であります。人権問題担当補佐官に中谷先生が内定されたようですから、いろいろな面で外務省単独では動きにくい環境だと思います。オールキャストで対応して行くことが大事だと思います。
台湾有事の際の台湾と中国在留邦人の退避
有本)台湾海峡の緊張感が非常に高まっていて、台湾は防空識別圏に中国軍機が入って来ても、対応すらできていない状況になっています。フランスの議員団が台湾を訪れたりしていますけれども、近い将来は一触即発の事態も考えられると思います。台湾と中国における在留邦人の退避について、日本は現実的な対応を取れる状況でしょうか?
佐藤)これからだと思います。韓国からの邦人退避についても、韓国とほとんど調整がとれていない状況です。ましてや台湾とは国交がありませんので、これからの課題になりますし、中国本土になるともっとハードルが高くなります。まさにこれからの大きな課題です。有本さんが言われたように、台湾海峡の安定は日本の経済安全保障にも、エネルギー安全保障にも直結する問題ですし、地政学的にも距離が近いですから、「台湾有事は日本有事」と考えた方が素直だと思います。台湾の方々の意識も段々高まっています。
飯田)台湾の人たちも。
佐藤)先日、中国の軍用機が台湾の防空識別圏にたくさん来ましたよね。あそこを抜けてバシー海峡の方まで行っているのです。そこでは日本を含めた6ヵ国の海軍の軍事訓練が行われていました。それに対する威嚇・偵察という部分もあったのでしょう。1ヵ国ではなく、欧州まで入れた多国間で中国に向き合うということを、中国は嫌がっているのです。ですから、そういう形をつくるのが経済面でも、安全保障面でも、台湾海峡の安定には大事だと思います。ヨーロッパを巻き込むと同時に、微妙な立ち位置にいるASEANをどうするかということが鍵になると思います。
「敵基地攻撃能力」は避けては通れない
飯田)岸田政権で国家安全保障戦略の改定が言われていますけれども、中国に対しての踏み込み、あるいは敵基地攻撃能力等々も盛り込まれるのではないかと、11月9日の新聞などでは報道されています。どうお考えですか?
佐藤)避けては通れないと思います。これだけ総裁選挙や総選挙でも言われていますから、その辺りには踏み込まなければいけないと思います。そのときは公明党との調整が1つの鍵となりますので、来年(2022年)の12月につくるというのであれば、1年間かけて公明党との調整が必要になると思います。敵基地攻撃能力は北朝鮮だけではなく、対中国を考えた場合も極めて大事で、ミサイルの数あるいは射程範囲を考えれば、北朝鮮よりも圧倒的に中国ですから。
有本)比ではないですよね。
佐藤)地上のミサイルだけでも2000発以上が日本を射程に収めています。これは地上発射式なので、弾数が半端ないのです。船や航空機から撃つのではなく、地上から撃つものが2000基以上ありますから、アメリカでも対応できません。第一列島線のどこかに地上発射式のミサイルを置けないのかという指摘がよく出ますが、そういうことなのですよ。地上には地上でないと抑止が効かないということです。
先制攻撃でなければ憲法問題には抵触しない可能性は高い
飯田)最終的には憲法問題にまで入って来ることになるかも知れませんが、その辺も含めて、これから積極的にやって行くということですか?
佐藤)先制攻撃でなければ憲法問題にはなりませんから。少なくとも総理が言われるような反撃という範疇であれば、敵の基地を叩いても憲法問題には抵触しない可能性は高いです。
有本)自衛権の行使だということですね。
飯田)座して死を待つというものではないわけですよね。
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