山田五郎が力説 インターネットの「便利さ」と引き換えに「失ったもの」

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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(10月28日放送)に評論家の山田五郎が出演。実際に現物を触れることの大切さについて語った。

山田五郎

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。10月25日(月)~10月29日(金)のゲストは評論家の山田五郎が出演。4日目は、実際に現物に触れることについて---

黒木)やはり、美術と時計というものは山田さんの人生から外せないものですか?

山田)そうですね。

黒木)ウィーン、オーストリアに大学在学中行かれて、ザルツブルクですか。毎日美術館通っていたという。本場で美術を観て来たということが、いまの山田さんをつくっていらっしゃるのですか?

山田)そのとき向こうの大学の先生に言われたのですよ。絞り込んでテーマを決めて、その専門の先生のところに留学してくるならともかく、西洋美術史全般ということであれば、いまから40年くらい前のその時点で、「日本でもあまり変わらないぞ」と。「大事なのは現物を観ることだから、大学に来るよりも美術館に行った方がいい」と言われて、とにかく現物を観たということですね。

黒木)時計もしかりですか?

『機械式時計大全』山田五郎・著

山田)時計も多分そうですね。買えないまでも、やはり現物触った方がいいですね。機械式時計のおもしろさは、やはりモノなのです。クォーツは電子でしょう。電子基板はそれほど変わらないのです。個体差がないのです。だけど機械は個体差があるのです。クロノグラフというストップウォッチのような時計がありますよね。そうしたらスタートのボタン押しますよね。この「押した感じ」は1個1個違うのですよ。

黒木)それぞれ違う。

山田)あるいはゼンマイを手で巻く時計の場合、この「ゼンマイを巻き上げる感じ」というのも1個1個違うのです。肌で感じることができるから、気持ちよさというところにつながるのですよね。とにかく「この巻く感じが気持ちいい」とかね。あと音のする時計だと、本当に「その音が好き」だと。電子音はみんな同じではないですか。だけど、機械式の場合は、実際にゴングを打って音を鳴らしていますから。やはり1個1個違う。手ごたえがあるというところが、違いますよね。例えばモニターで観る映像と紙焼きされた写真との違いと言いますか。手で持てるということですよね。

黒木)大きな違いがありますよね。

山田)やはり印刷された絵と、本物の絵も違いますよ。

黒木)最近、その文化が多様化しておりますけれども、デジタルとアナログのいまの時代をどのようにご覧になっていらっしゃいますか?

山田)インターネットのおかげで本当に便利になりましたよ。いまやっている美術のYouTubeチャンネルで、「印象派がどうして印象派と呼ばれているのか」ということをやったのです。それでそのきっかけになったと言われる、1874年に出たフランスの新聞があるわけです。フランスの国立図書館のページにアクセスすると、ほとんどの新聞のバックナンバーを検索できるのですよ。プリントアウトまでできてしまう。

黒木)フランスまで行かなくても。

山田)本来であれば行って、わざわざカードで検索して出してもらわなくてはならないのです。それは大変だけれども、行けば、それだけでは帰って来ないではないですか。他のこともやるし、飯も食うし、いろいろなことを経験して帰って来るけれども、インターネットで検索できたら、それで終わってしまいますからね。

黒木)それだけではない、自分の足で行って、見て、知るということがない。

山田)本当はそれが大事なのです。でもやらなくなって来てしまっているのですよ。歳取って来たから、ますます出不精になるでしょう。もう古本屋も行かなくなってしまったのですよ。何でもネットで買えてしまう。ネットで買う方が早いから。そうすると、どんどん興味が狭くなって行く。インターネットで調べられることは、自分が知っているものしか調べないでしょう。知らないものに出会うためには足で歩いて。

黒木)行かなくてはいけない。

山田五郎

山田五郎 / 評論家

■1958年12月5日 東京都渋谷区生まれ。大阪府豊中市で育つ。
■上智大学文学部在学中にオーストラリア・ザルツブルク大学に1年間遊学。西洋美術史を学ぶ。
■卒業後、講談社に入社。「Hot-Dog PRESS」編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。
■これまで 西洋美術、まちづくり、時計、ファッションなど幅広い分野で 講演、執筆活動を続けているほか、テレビ・ラジオなどメディアでも活躍。
■主な著書に『知識ゼロからの西洋絵画入門』『知識ゼロからの西洋絵画史入門』『知識ゼロからの西洋絵画 困った巨匠対決』『知識ゼロからの近代絵画入門』など。

■2021年3月に 創元社から、アルケミスト双書『闇の西洋絵画史』シリーズを刊行。西洋絵画の「王道の裏面」、「闇」の側面をテーマにした著書となっている。これまで第1期として「黒の闇」篇5巻、来年1月以降に「白の闇」篇5巻を刊行予定。
■2021年8月には講談社から『機械式時計大全』という本も出版。機械式時計に関する山田五郎さんの教養を総動員した1冊。
■2021年1月からは公式ユーチューブ「山田五郎 オトナの教養講座」を開設。登録者数25.4万人。絵画の解説・疑問・裏話などを中心に話をされています。

番組情報

ENEOSプレゼンツ あさナビ

毎週月曜〜金曜 6:43 - 6:49

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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