ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月22日放送)に朝日新聞編集委員の峯村健司が出演。2021年度の新聞協会賞ニュース部門での朝日新聞社「LINE」問題調査報道取材班の受賞について解説した。
LINEの個人情報管理問題のスクープと関連報道
日本新聞協会が主催する第74回新聞大会が11月17日、盛岡市で行われた。2021年度の新聞協会賞ニュース部門は、本日の番組コメンテーター・峯村健司さんの他、取材班がスクープした「LINEの個人情報管理問題のスクープと関連報道」であった。授賞式では峯村氏が代表して表彰を受けられた。
飯田)改めまして、おめでとうございます。
峯村)ありがとうございます。
飯田)これまでも番組にご出演していただいた際に、取材の経過などをお話しいただきましたが、今後も継続して行く案件ですか?
峯村)まだ取材班はありますし、継続して第2弾、第3弾に向けた取材を進めております。
飯田)協会賞の受賞の反響はどうでしたか?
峯村)各方面からお祝いのお言葉をいただきました。特に私のツイッターのフォロワーの方々が喜んでくださったことが嬉しかったです。私がガン無視された今年3月のLINE社の記者会見のときにたくさんのフォロワーの方々応援してくださったことを感謝しています。
コロナ禍で現地に行けないなか、インターネット上を探しまくった取材
飯田)いままで“スクープ”というと、地道な取材を積み上げて行くようなことがありましたが、協会賞を受賞されて、その後の寄稿にもお書きになっていますけれども、コロナ禍で取材が難しい状況でした。環境としても特殊だったのではないですか?
峯村)私は2020年4月にアメリカ、中国担当の編集委員になりました。ちょうどコロナ禍のタイミングだったので、実は1度もアメリカや中国へ出張に行けておらず、ほとんど失業状態でした。そのため、新たな“職探し”として見つけたのが、今回の一連の報道なのです。私は勝手に「IT国際調査報道」と呼んでいるのですが、現場を聞き込みをするようにインターネット上を探しまくって、さらに通話アプリやメールを使い、関係者に聞き込みをするような形で連絡を取って、真相を追求していくやり方です。今回の報道だけでも、数千枚の資料をかき集め、読み込んでいます。4か月弱かかった調査報道になります。
取材班は4~5人という小さな所帯
飯田)取材班という形で、どのくらいの人が関わるものなのですか?
峯村)実は、報道する1週間前くらいまでは、私1人でずっと細々とやっていました。そのあと、サイバーセキュリティー担当の須藤編集委員などにジョインしていただきましたが、小さな所帯です。主要メンバーは5人ほどでした。
飯田)今回のスクープは、法律に反するかどうかということまで含めての話です。そうすると、法に明るい人もなかに入れて行う感じですか?
峯村)個人情報保護法などの専門記者はいなかったので、専門家の人に直接、我々の取材部屋に来ていただきました。その方からお知恵を借りて理論武装をしたという、綱渡りの状況での取材でした。
急成長し過ぎた巨大プラットフォーマー ~ずさんな管理体制
飯田)LINEという会社もZホールディングスのなかに入って、日本で言うとITガリバーですよね。
峯村)そうですね。日本だけで3億人のユーザーがいる、超がつく巨大プラットフォーマーです。私もプラットフォーマーは「第5の権力」になっているのではないかと思っています。取材に行ったZホールディングス本社は、いまデジタル庁が入っている永田町のガラス張りのビルで、うちの会社の本社と比べると、とんでもなく綺麗な建物にあります。
飯田)うちの建物と比べてもそうですね。
峯村)そうですね。いわば「権力の象徴」のようなところにあるのですが、その実態はかなりずさんな管理体制です。我々が取材で集めた資料をぶつけて、「中国から何回アクセスがあったのですか?」と聞いたら、「正当なアクセスしかありません」と言われました。「では、何件ですか」と聞くと、「ちょっとわからないです」という答えが返ってきました。「正当なアクセスなのに、なぜ回数がわからないのですか」と聞くと、「9人に権限を与えていましたが、アクセスしていません」と答えました。ところがその日の夜になると広報担当者から電話がかかって来て、「すみません。4人が権限を持っていて32回アクセスしていました」と訂正されました。
飯田)言っていることが変わる。
峯村)二転、三転しており、ずさんとしか言いようがない管理体制でした。LINE社は10年で急成長して、いまや自治体のコロナワクチン予約システムなども請け負う公共インフラになった。あまりにもギャップが大きいということは、今回の取材で感じました。
権力監視は「政権などだけではない」ということがわかるスクープ
飯田)その辺りは、使っているユーザーにはわからないし、内部告発が出て来るわけでもないという。
峯村)公開情報をもとに証拠を積み上げて、それをLINE社側にぶつけ、事実を解明した。ぶつける取材も3日間かけて、6時間少し。向こうは二十数人で、こちらは2人だけという感じでやっていました。
飯田)権力監視は「政権などだけではない」ということが如実にわかるスクープです。改めまして、おめでとうございました。
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