緊張が高まるウクライナ情勢は日本にとって「他人事ではない」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月29日放送)に元内閣官房副長官補・同志社大学特別客員教授の兼原信克が出演。緊張が高まるウクライナ情勢について、バイデン米大統領がロシアとウクライナ両国の大統領と協議する可能性を示唆したニュースについて解説した。

緊張が高まるウクライナ情勢は日本にとって「他人事ではない」

ロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ)=2021年10月13日 AFP=時事 写真提供:時事通信

ロシア、ウクライナ情勢 ~バイデン大統領が両国の大統領と協議へ

ロシア軍がウクライナとの国境地帯に部隊を集結させている問題に関連して、アメリカのバイデン大統領は11月26日、ロシアとウクライナ両国の大統領とそれぞれ協議する可能性を示唆した。ロシアは軍の集結やウクライナへの軍事侵攻を否定しているが、ウクライナ、アメリカ、NATOはロシアが攻撃を仕掛ける可能性があるとの懸念を表明している。

飯田)9万人規模の部隊が集められているという発表が、ウクライナの国防省側からあったということですが、何だか妙にきな臭くなって来ました。

兼原)陸上自衛隊の半分以上ですね。

飯田)約15万人ですからね。

経済面では西側を向いているウクライナ

兼原)ウクライナは、ヒトラーとスターリンが握ったところなのです。スターリンは最初、ヒトラー側についていますから。統合を分解して獲ったポーランドの東半分が、ウクライナの西側の半分になっているのです。ウクライナという国は半分ポーランドなのです。東半分がロシア人で、西半分は元ポーランド人の地域です。日本で言うと、関西と関東で全然違う方を向いているような国なのです。

飯田)なるほど。

兼原)EUがアメリカの8掛け、9掛けの経済力で、ロシアは韓国と経済規模が同じくらいまで縮んでいるのです。だからみんな西側を見ているのです。

飯田)経済面で見れば。

戦争をしてでも西側への流れを止めるロシア

兼原)放っておくと西側に流れて行くのです。プーチンさんからすると、東半分はロシアだからという理屈です。ウクライナのNATO加盟やEU加盟について、何があってもロシアは止めますよ。クリミアを獲り返したので、あとの東半分も獲り返そうと本気で思っているのでしょう。ドンバスは工業地帯ですが、そこは事実上、プーチンさんの息がかかったような人たちが、半分独立したような形になっているのです。ですからウクライナが西側へ流れて行くのであれば、実力で引き剥がすということだと思います。戦争が起こると思います。

飯田)戦争も辞さないくらい。

兼原)辞さないと思います。NATOにとってウクライナは防衛範囲に入っていないので、「本当に出て来ますか」という感じだと思います。

飯田)プーチン氏はその辺りも見ながら。

「ハイブリッドウォー」によってクリミアを獲ったロシア ~軍事力はピカイチ

兼原)クリミアを獲ったときに、オバマ元大統領は何もしなかったのです。「腰抜け」とずいぶん批判されましたが、まったく動きませんでした。

飯田)素振りも見せなかったのですか?

兼原)見せなかったですね。プーチンさんはいま拳を見せているわけです。バイデンさんは外交優先だから、「俺が話して来る」という感じですけれど、ロシアは武門の国なので、軍隊を並べて見せなければ言うことを聞かない国です。口先だけで調子のいいことを言っても従いませんよ。

飯田)あのときも、ソチでオリンピックがあって、その直後くらいだったように記憶しているのですが。

兼原)不意打ちのようにやってしまったのです。軍事的には機敏なオペレーションで、一晩で完全決着を付けました。最近話題の「ハイブリッドウォー」というもので、コンピュータが落ちて「ええ?」と思って開けてみたら、「ロシア軍が来たから全員集合」と言われ、行ったところで全員殺されたのです。「全員集合」がロシアの指示であり、コンピュータを乗っ取られたのです。みんな驚きました。ロシアは軍事だけはピカイチです。経済はボロボロになっていますが。

緊張が高まるウクライナ情勢は日本にとって「他人事ではない」

18日、ベラルーシのポーランド国境付近でたき火の周りに座る難民ら(ロイター=共同)=2021年11月18日 写真提供:共同通信社

緊張が高まると収まる傾向にある ~ウクライナで戦争が始まれば、アメリカ軍の全勢力はヨーロッパに向かう

飯田)しかも、局地戦で方を付けて既成事実をつくってしまう。

兼原)NATO側もまったく手も足も出なかったです。

飯田)NATOが動こうと思っても、その前に終わったということですか?

兼原)居合斬りのようにやってしまいました。今回もNATOは防衛範囲外なので、ロシアが軍隊を出して来ても、防衛義務がないため動かないと思います。動かなければ、「やるかやらないか」はプーチンさん次第になってしまいます。NATO軍が入って来ると思えばやりません。しかし、「NATO軍が入って来ないとなれば、あとは俺次第だな」となってしまうわけです。

飯田)NATO軍をどう動かすかについて、直接バイデン大統領が協議することもそうですが、それを言うとどうなるのでしょうか?

兼原)緊張が高まると、「喧嘩をやめようね」というモードに変わって行くので、かえって収まるということがあるのです。

飯田)緊張が高まると。

兼原)ウクライナで戦争が始まったら、アメリカの全勢力はヨーロッパ側に行ってしまいますから、日本は困ります。中国が強くなっていて、やっとアメリカが戻って来たと思ったら、「またヨーロッパに帰ってしまうのか」という感じになってしまいます。中国が暴れて、こちらが痛い目にあっても、アメリカが助けに来ないということになりかねません。

日本にとっても他人事ではない

飯田)プーチン氏としては「インド太平洋に軸足を移すのだな。だったら俺たちはできるぞ」という。

兼原)アメリカも全世界を攻める力はないので、どこかに軸足を入れることになります。いまは中東からアジアに移りつつあるのですが、またヨーロッパに移ってしまうと、再びアジアが留守になるのです。

飯田)そういう意味で、日本としてもこの話は他人事ではないのですね。

兼原)そうです。きちんと見た方がいいです。

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