政府が国際線予約停止「撤回」せざるを得なかった事情
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月3日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。政府が「オミクロン株」への水際対策強化として要請していた国際線の新規予約停止の撤回について解説した。
政府が国際線の予約停止を撤回
政府は12月2日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」への水際強化策に関して、国内外の航空会社に対する日本着の国際便の新規予約停止要請を撤回した。海外の日本人駐在員や出張者らが年末年始に帰国できなくなる影響の大きさを考慮したためで、入国者数の制限は継続する。
飯田)経緯が出て来ていますが、最初に航空局が判断し、首相官邸などへは事後報告だった、ということが言われています。
宮家)昔の私の個人的な経験ですが、「やはりね」という感じです。
飯田)「やはりね」という感じ。
宮家)岸田政権としては、「できるだけ迅速にやる」というのがモットーで、実際に政治リスクを取ってやっているわけです。
飯田)「私の責任だ」と言っていましたからね。
大臣に一言言っておかなかったためのこと
宮家)その考えは立派なのです。しかし、それを下に降ろすとどうなるかと言うと、当然「早くやらなくてはいけない」となります。そこまではいいのだけれど、外国から帰って来る日本人のことも含めて考えると、「若干遅れるかも知れない」となる。そうすると、急ぐなら「そこも予約停止してしまえ」となります。航空局ですから、航空行政については圧倒的な権限と経験を持っているわけです。彼らはよかれと思ってやったのでしょう。
飯田)なるほど。
宮家)ただ、それはあくまでも役人の世界、航空局のなかの世界であって、外の世界とどの程度の情報共有がされていたかということです。外国人ではなく、日本人が帰って来るとなったときには、それは政治判断になるのです。その政治判断の部分については、私が担当者であれば、大臣には必ず一言入れますよ。政治のレベルには入れます。了解を取っておかないと危ないですし、今回のようなことになるからですが、今回はそれを省いたのだろうと思います。政治レベルの人からすると、「何をやっているのだ」となってしまう。
飯田)勝手にやりやがってと。
宮家)驚いたと思います。
迅速さも大事だけれど、政治家に説明するべきであった
飯田)逆に言うと、航空局はそれぐらい権限が強いのですか?
宮家)権限は強いですよ。いい意味でも、そうでない意味でも。
飯田)航空会社も含めて。
宮家)圧倒的に強いです。私がある国と航空協定を結んだのはずいぶん前の話ですが、そのときも航空局の言うとおりにしか交渉できませんでした。
飯田)そうなのですか。でも、フロントで交渉するのは外務省なのだけれど……。
宮家)「これはダメ」、「これもダメ」、「これだけで交渉しろ」と言われたら、大変ですよね。それはそれでいいのですが、こういうときには迅速さも大事なのだけれど、リスクがあり得るのであれば、政治的な保険をかけないとなりません。それが政治家に説明するということの意味なのです。その時間を惜しんだため、残念ですが、こういう結果になってしまったのだと思います。
日本人と外国人を区別しなかった
飯田)外国人に関しての水際対策の部分は既にあって、今回の措置は日本に帰って来る日本人をどう止めるかの問題です。「水際では止められないから、予約の段階で止めよう」という方向ですよね。
宮家)日本人と外国人を区別しなかったのだと思います。前回も似たようなことがあって、日本人の奥さんを持つアメリカ人が帰って来られないなど、いろいろな問題があったわけですが。
飯田)いわゆる「特段の事情」というものですね。
宮家)そうです。難しい判断で、いちいち特別の判断をやっていたら時間がかかって仕方ない部分はあるかも知れません。ですから同情はしますが、もう少しうまいやり方があったのではないでしょうか。
大臣の了解を取っておけば責任も大臣が取ることになる
飯田)その辺りの政治判断はまさに、主権者である国民を背負っている政治家でないと判断できないところです。
宮家)そうです。逆に言うと、下の人間は自分で判断できないときには早く上に上げて、了解をもらわなければなりません。そうすれば責任を取ってくれますから。こういう形になるとやはり今回は官僚側が、「やってしまった」という感じになりますよね。
飯田)若干、力の過信のようなこともあったりしますか?
宮家)そうは思いたくないですね。よくやっているとは思うのですが、こういうエアポケットがときどきクライシスのなかではありますから。そこは気を付けていただかないといけません。
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