「経済制裁」だけでは中国・ロシアの侵攻を止めることはできない
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月14日放送)に朝日新聞編集委員の峯村健司が出演。先進7ヵ国(G7)外相会合で議論された新疆ウイグル自治区の人権問題や台湾海峡の問題について、中国が「断固反対だ」と反発したというニュースについて解説した。
中国がG7外相会合に反発
先進7ヵ国(G7)外相会合で新疆ウイグル自治区の人権問題や台湾海峡の平和と安定などが議論されたことについて、中国外務省は12月13日の会見で「G7が中国の内政に干渉し、中国のイメージに泥を塗り、中国の利益を損ねることに断固反対だ」と反発した。
飯田)イギリス・リバプールで12月12日までG7外相会合が開かれていました。中国とロシアに絡む話が2大テーマという感じでしたね。
峯村)影の主役は、出席しなかった中国とロシアですね。イギリスのトラス外務大臣が冒頭で、中国とロシアについて、「自由と民主主義を制限する侵略国」だと、はっきりおっしゃったことには驚きました。
飯田)中国とロシアについて。
峯村)いままでのトーンよりも強まっていたと思います。ロシアはG8という形で参加していた時期もあったので、ロシアも中国も両方、ある種の侵略国、「ダメな国だ」というレッテルを貼られたことに対し、中国が怒りを示しているのだと思います。
ロシアのウクライナ侵攻に対して、アメリカ・NATOがどういう対抗措置を打ち出せるか ~「ウクライナ・台湾同時侵攻説」も
飯田)その2ヵ国について、「力によって現状変更をして来るのかどうか」というところが議論されていますが。
峯村)「中国・ロシア」のセットでG7と言うと、これはもう「ウクライナと台湾」という問題になります。
飯田)相似形のような。
峯村)一部では「ウクライナ・台湾同時侵攻説」が出ているほど、状況はかなり緊迫して来ています。
飯田)ウクライナの方に関しては、17万5000人の軍勢が国境周辺に集まっているという説もあります。「年明けにも侵攻があるのではないか」ということが、まことしやかに言われています。
峯村)軍のオペレーションを見ていると、前回のウクライナ侵攻でも似たような動きをしていますし、かなり緊迫度は増して来ていると思います。ここで、アメリカを中心としたNATOが、どういう対抗措置を打ち出せるかというところがポイントになると思います。
「経済制裁」に足並みの乱れが見えるヨーロッパ
飯田)実際に兵隊を動かすのかどうかという状況ですが、いまのところは「経済制裁メイン」という感じですよね。
峯村)そうですね。経済制裁という話になっていますが、それがどこまでワークするのかは不透明です。
飯田)経済に関して言うと、足並みに若干乱れのようなものもあって、ドイツなどはガスのパイプラインを活かしたい、ロシアと取引したいと。
峯村)エネルギーは世界中で高騰していますので、あらかじめロシアとのパイプラインのエネルギーをドイツにつなげておいて、それに依存させる形で、「お前らもどうだ」と。「うちにそれほど反抗できないだろう」という、いわゆるNATOを分断するような工作はうまくいっていると言えます。
飯田)もう既に「ノルドストリーム2」というパイプラインができてしまっていますものね。
峯村)これを止めるとなると、損害が出ますし、ここでどれだけNATOなどが強気に出られるのかということは、かなり不透明です。
「経済制裁」で政策や戦争を止めたケースはない
飯田)ブリンケン国務長官が、ガスのパイプラインについて「制裁も辞さない」というようなことを言っていますが、それがどこまで効くのでしょうか?
峯村)「経済制裁」と言うと聞こえはいいですが、実は経済制裁がうまく行って政策を止めたとか、戦争を止めたというケースは意外と少ないのです。
飯田)例があまりない。
峯村)むしろそれによって追い詰められ、暴発するケースの方が多いのではないかと言われています。第二次世界大戦期の日本なども、その典型です。ABCD包囲網という形で、石油が足りなくなった。それでアメリカや東南アジアに進出するしかないとなってしまった。経済制裁というものの価値、もちろん一定の価値はあると思うのですけれども、やり方、効能についても考えなければいけません。こういうときは、左手では軍事力を持っていなければならないところもあると思います。
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