ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月15日放送)に作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴が出演。武蔵野市で外国籍の住民投票条例案が委員会で可決されたというニュースについて解説した。
武蔵野市で外国籍の住民投票条例案が委員会で可決
東京都武蔵野市議会は12月13日、総務委員会を開き、日本人と外国人を区別せずに投票権を認める同市の住民投票条例案を可決した。これにより、同条例は21日の本会議で採決される。賛成多数で成立すれば、同様の条例は神奈川県逗子市と大阪府豊中市に続き、全国で3例目となる。
飯田)武蔵野市で外国籍の住民投票条例案が委員会で可決されたということです。青山さんは「日本の尊厳と国益を護る会」の代表を務めていらっしゃいますが、この問題についても、メディアに対して会見を行っています。ご自身も武蔵野市に入り、住民の皆さんに向けて問題提起もされていらっしゃいました。
青山)民主主義ですから、市議会の動きに影響はしています。「委員会で可決」ということが大きく報道されていますが、ここまでは予想通りというか、こうならざるを得ない。ただ、本会議がこのあと待っています。本会議では可決の可能性もありますが、否決の可能性もあります。
骨子案、素案の際、意見交換会に出席した市民は合わせて13人 ~13人で市民の意見を聞いたことになるのか
飯田)武蔵野市の松下市長が現在、開会中の市議会に提出した今回の条例案ですが、投票資格は「3ヵ月以上、市内に住所がある18歳以上」ということです。外国籍の住民も3ヵ月以上、武蔵野市に住んでいれば、あるいは住民票がそこにあれば、日本国籍の住民と同じ条件で参加できるということになっている。
青山)いろいろな意味で奇妙なのですが、手続きと内容、それぞれに問題と課題があるのです。手続きで言うと、武蔵野市は14万8000人の人口がいるのですが、最初に骨子案が出て来て、市民に意見を聞く会を開いたときに、お見えになった市民の方は3人です。
飯田)たったの3人。
青山)14万8000人の市で3人。なぜかと言うと、私はあえて武漢熱と呼んでいますが、新型コロナの感染拡大が酷いときで、多くの方がお出になれなかったのです。そのあと素案が出て来て、骨子が素案になったのですが、そのとき出て来られた市民の方は、意見交換会で10人。先ほどの人数と合わせて13人です。それで「15万人近い人口の市民からきちんと意見を聞いた」とはとても言えないでしょう。
飯田)言えませんね。
青山)市民の意見を聞かずに住民投票のあり方を決めてしまうというのは、奇怪な話だし、武蔵野市や市長をはじめ、強調なさっているのが、「市民にアンケート調査を実施したのだ」ということです。
3月に実施したアンケートの回答者は509人 ~7割以上が賛成だが
青山)そこで「7割以上が賛成した」とおっしゃっているけれど、このアンケートも対象が2000人なのです。回答なさった方は509人ですから、回答率としても低いし、町の大きさから比べてあまりにも小さい、少数の意見で決めようとする。しかも、今年(2021年)3月ですから、そのころに住民投票の中身をしっかり理解していた人がどのくらいいるかということです。
飯田)回答したのは509人。
青山)手続きとして、そこで「差し戻す」ということは極端な話ではなく、じっくり市民と話し合うべきですよね。これは地方自治なので、国政にある私たちが過剰に介入するようなことは謹んでいるのですけれど、同時に、これは国政にも影響します。それが内容の部分です。
常設型での住民投票 ~安全保障など、何でもテーマにできる
青山)通常の住民投票は、例えば「ゴミ処理場をつくります」、または「大きなプールをつくります」というテーマごとに住民投票をやるのですが、この場合、武蔵野市が用意しているのは「常設型」なのです。ずっと住民投票できる。何でもテーマになる。安全保障など、まさしく国政の問題についても住民投票できるのです。
3ヵ月住んでいる外国人に同等の権利があるということは不自然 ~国民国家の否定につながる
青山)国政に関する住民投票は、実は1つしかありません。憲法改正しかないですよね。それを補う意味もあって、地方自治では、住民投票が自治体の考えでできるようになっているのです。ということは、行政に影響するということですね。
飯田)影響します。
青山)さらに国政に影響するということは、普通の日本国民と、たった3ヵ月お住まいになっている外国人が同等となれば、事実上、国民国家の否定につながって行きます。この問題を皆さんと一緒に考えたいのです。
3ヵ月でいいということは旅行者でもいいということ
青山)国民国家というのは、外国人の方の人権も保障して、人間として等しく扱うというのはもちろんのことです。ただし、あくまで主権者である国民によって成り立つのが国民国家ですから、それが3ヵ月いればいいというのは、旅行者でもいいということです。
飯田)そうなります。
青山)「日本の尊厳と国益を護る会」は衆参両院議員が71人いるのですが、山本左近さんという、元F1ドライバーの方が当選して新たに入って来られました。彼が護る会の総会で、「自分はF1ドライバーのときに、3ヵ月くらいは普通に外国にいました」と。スキーのワールドカップなどもそうですが、「それで住民と同じ扱いというのは、世界中の誰が考えてもおかしいのではないでしょうか」と言っていました。
国の主人公は誰なのか
青山)要するに、留学や旅行の範疇ですよね。実際に武蔵野市ですと、「留学生もOK」ということになっていますから、簡単に言うと何でもありで、「いったい国の主人公は誰なのか」ということです。これは非常に根深い問題を含んでいて、敗戦後の日本の歩みが、76年かけて「国民国家はいらない」とか、「国民国家はない方がいい」という方向に流れているのではないかという気配も感じます。
成立すれば全国に影響が出る
青山)私も国会議員になる前は世界を歩いて来ました。議員になってからも、感染症が始まるまでは世界に行っていましたけれど、海外では逆に、国民国家の熱が上がっているのです。ボーダレスになり、通信交通の発達で国境がなくなって来て、「私はいったい何者なのか。最後に自分を守ってくれるのは何か」ということを考えるようになっています。だから国民国家の意味がとてもはっきりして、世界のどこへ行っても、みんなかつてより国民国家を大事にしているわけです。
飯田)かつてより。
青山)そのなかで、日本だけが逆を行っている。外国の方々の人権を大事にするから、世界と合わせているということではなく、逆に日本だけ違う方向に行っているということも感じます。これが成立すれば、東京の武蔵野市だけではなく、全国に必ず影響して来ると思います。
飯田)しかも常設型のものです。自治体によっては、住民投票に関する条例を別途つくり、住民投票をやるというところもありますが、「手を挙げれば何でも住民投票」ということになってしまうのですか?
青山)外国の方々の考えによっては、十分可能です。ハードルが極端に低いわけです。もう一度言いますが、日本国民ではなく、3ヵ月いたら外国人でも日本の自治や国政を左右できるというのは、誰が考えてもおかしいでしょう。
多くの市民の意見を聞いて決めるべき
飯田)一連のプロセスも不透明であるし。
青山)手続きと内容、両方に問題があります。いったん市民のなかに戻し、感染症が改善したあとで、多くの方の意見も聞かなければいけない。また、来られない人のためにアンケートを取るならば、もっと範囲を広げて、人数を増やさないと意味がありません。「少数で決めない」というのが民主主義の「いろは」の「い」ですから。多様性を主張する方々が少数で決めるというのが不思議です。最後の砦が市議会であって、そこではきちんと少数意見も汲みながら、最終的には本会議で対応するということになります。
飯田)多様性に関する議論は、どこか結論ありきのような、反対派をどんどん糾弾して行く傾向があります。アメリカでは「キャンセル・カルチャー」と呼ばれますが、世界中の自由な民主主義のある国で、宿痾のような形になってしまっているのでしょうか?
青山)多様性を追求するために、議論を封じる問題が出て来ているでしょう。
飯田)日本でもその兆候がある。
青山)ものを言ったら唇寒しで、多様性と言われたら「はい、わかりました」と言わなければいけない。
飯田)「すばらしい」と言わなければいけない。
青山)私が例えばアメリカの街に3ヵ月仕事でいて、「住民投票に参加してください」と言われたら、「それは奇妙な話ではないですか」と言います。もしここで私がアメリカの政治に参画したいのであれば、アメリカの国籍を得て、文化や人々を理解しなければいけないと答えるでしょう。どこから見ても「そうですか。わかりました。いい条例ですね」とは言えないので、ぜひもう一度議論をやり直していただきたいです。
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