キツネとタヌキの化かし合いのようなもの ~米露が年内に首脳会談か
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月17日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。ヨーロッパの安全保障をめぐり、アメリカと協議する用意があるとしたロシアの表明について解説した。
ロシアが安全保障をめぐってアメリカと協議の用意 ~年内に首脳会談も
ロシアのペスコフ大統領報道官は12月16日、ヨーロッパの安全保障に関するロシアの提案についてアメリカと協議するため、「中立国」に閣僚を派遣する用意があると表明した。またロシアのプーチン大統領とアメリカのバイデン大統領が、年内に再び会談する可能性があると述べている。
飯田)「可能性がある」と言いつつ、何かが具体的に決まったわけではないと言っていると。
宮家)これこそロシアが望んでいたことだと思います。この間、ロシアとアメリカで首脳会談を行いましたよね。
飯田)オンラインで。
宮家)これはアメリカからの情報だけれども、おそらく衛星から見ればわかりますが、ロシア兵がウクライナの国境近くに何ヵ所か、十何万人も集結しているとされています。しかも、いつ入るかわからない。
アメリカはロシアのウクライナ侵攻問題についてテストしている ~ロシアは経済制裁を解除してもらいたい
宮家)アメリカもロシアも、相手方をテストしているのだと思います。キツネとタヌキの化かし合いのようなことですが、ロシアの方は軍を動かして、ウクライナに「やるぞやるぞ」と仕掛ける。日本の周辺ではて「中国とも一緒だぞ」と動いてみる。そう言っておいて、ロシアの本音は、「クリミア問題で科された経済制裁を解除してもらいたい」ということだと思います。
飯田)本音は。
宮家)アメリカの方はまったく別で、勿論ウクライナの問題でロシアには手を出させたくないけれども、それ以上に何とか中露を割りたいという気持ちもある。そこで、バイデンさんはこの間リモートでやった米露首脳会議のなかで、「ロシアの懸念についても、いろいろな形で考えなくてはいけない」ということまで言ったわけです。
「ロシアとの関係をコントロールしながら、中国に対して圧力を掛けたい」アメリカ
宮家)欧米には「なぜロシアの懸念を考えなくてはならないのだ」という批判もあったと思いますが、アメリカはロシアと話すことによって、中国も念頭に置きながら、「ロシアとの関係をコントロールしつつ、中国に対して圧力を掛けたい」という思いがあるのではないでしょうか。そのようにキツネもタヌキも、考え方は違いますが、相手の本音を知るため「話し合いたい」という気持ちはあるようです。
飯田)話し合いたいという気持ちは。
宮家)プーチンさんとの首脳会談はともかく、少なくとも事務的な協議は始まるわけでしょう。ですから、アメリカのロシアに対する1つの答えが出始めているような気がします。
「ウクライナはNATOに入らない」「NATOの拡大はベラルーシまで来ない」という確約が欲しいロシア ~「そんなことはできない」西側諸国
飯田)きょう(12月17日)の読売新聞が二面総合面で報じていますが、
『米、露と首脳再会談意欲 露「NATO不拡大」提案か…ウクライナ情勢』
~『読売新聞オンライン』2021年12月17日配信記事 より
飯田)……という見出しが付いています。
宮家)ロシアは、昔は東ドイツまで自分たちの影響圏があったわけですよ。
飯田)昔は。
宮家)ところがソ連が崩壊して、旧東欧諸国が次々とNATOやEUに入ってしまい、いまやその隣にあるウクライナ、ベラルーシにヨーロッパやアメリカの変な連中が手を突っ込んでいるのではないかと。もしウクライナがNATOに入る、ベラルーシがEUに入るとなれば大騒ぎです。脅威がロシアの直接国境まで来るわけですから。
飯田)バルト三国もNATOに獲られているではないかと。
宮家)そういう意味では、ロシアにとって安全保障上の死活問題なのです。ですから、何とかウクライナはNATOに入れない、NATOの拡大はベラルーシまで及ばない、そういう確約が欲しいわけです。でも、そんなことはできるわけがありません。
飯田)西側諸国からすれば。
宮家)それはそうですよ。それぞれの国民が決めることですからね。
飯田)ウクライナの人たちが決めることだろうと。
宮家)そういうわけで、ロシアとアメリカがキツネとタヌキの化かし合いをやっているということです。
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