ロシアがNATOに不拡大を迫る「本当の狙い」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月14日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。1月12日に開かれたNATOとロシアの会合について解説した。
北大西洋条約機構(NATO)とロシアの会合
軍事的な緊張が続くウクライナ情勢をめぐって、北大西洋条約機構(NATO)とロシアとの会合が1月12日に開かれ、ロシア側はNATOが加盟国を増やして拡大することは自国の安全保障上、受け入れられないと主張した。一方、NATO側はさらなる拡大はしないと保証することはできないと改めて強調し、双方の隔たりは埋まらなかった。
飯田)このところ米露で次官級の協議が行われ、ウクライナ情勢が取りざたされていますが、どう思われますか?
宮家)ソ連が崩壊して、NATOが東方に拡大するのは自然な流れです。しかし、プーチンさんはそれを認めていません。そもそも彼の言い分は「1990年にNATOは拡大しないと約束したではないか」というものです。これは嘘なのですが、彼はそう信じているわけです。
「巻き返すのに絶好のチャンス」と思うプーチン大統領
宮家)プーチンさんには少しでも巻き返したいという気持ちがずっとあった。なぜアメリカとNATOにここまでの無理難題を言っているのか。アメリカの関心はロシアから中国、もしくは中東から中国に移った。そうするとアメリカは忙しいでしょうし、関心が欧州や中東から離れて行くだろう。プーチンさんからすれば「巻き返すのに絶好のチャンスが来た」と思っているに違いないのです。
飯田)チャンスだと。
宮家)彼は米露首脳会談で「新しい条約を結びましょう」と提案しました。条約は2つあって、1つはアメリカとロシアの条約、もう1つはNATOとロシアの条約です。簡単に言うと、「NATOはこれまで拡大して来たのかも知れないが、ロシアの近くにNATO軍は来るな」と。そして「核兵器も置くな」と言っているわけです。ですから、今回NATOとロシアが会合した理由は、アメリカとはうまく行かずに終わりましたが、NATOとも交渉して「新しい条約について議論したい」ということでしょう。ですが、ロシアからしても「アメリカと話がつけば、NATOは何とでもなる」と思っている部分もあるのかも知れません。
NATOの東方拡大を阻止したいロシア
宮家)もう1つ大事なことはNATOという組織についてです。ソ連が崩壊したあと、NATO内でもいろいろな議論があったようです。そのなかで90年代に、当時のNATO事務局長が強いイニシアチブを取って、東方への拡大に動き始めたことがありました。
飯田)90年代に。
宮家)ロシアからすれば「よく考えてみろNATO。こんなことをしても、ろくなことはないぞ、考え直せ」ということです。ロシアは別途NATOにも働きかけて、何とかアメリカを説得させようとしたのでしょう。NATOのなかにはロシアと関係が深い国もありますから、そこで分断しようとしているのだと思いますが、まあ、お手並み拝見ですね。
ロシアがメッセージを送っても、中露が連動することはない
飯田)アメリカの重心が東アジアに移って来ている。そこを見ながらロシアが動いているという話ですが、中国との連動はどこまであるのですか?
宮家)ウクライナの件で中国がロシアと連動しているとは思いませんが、少なくとも中国に頼らなければならない部分がロシアにはあります。これが中国と事前に話し合って行われたことだとは、私には到底思えません。中国にはそういう発想はないと思います。これはプーチンさん個人の発想ですから。ですが、これによってアメリカを揺さぶることができるので、中国に対し、「ロシアも頼りになるでしょう。だからこれからもよろしくね」という無言のメッセージがあったのかも知れません。
飯田)なるほど。
宮家)要するに、アメリカとロシアが欧州で忙しくなれば、中国は一息つけますからね。
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