中国の台頭を管理できる日印豪の連携 新たなビジョン「インド太平洋戦略」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月15日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。自ら翻訳した書籍『インド太平洋戦略の地政学』をもとに「自由で開かれたインド太平洋」について解説した。

中国の台頭を管理できる日印豪の連携 新たなビジョン「インド太平洋戦略」

習近平氏、中国共産党・世界政党指導者サミットで基調演説 (北京=新華社記者/李学仁)= 2021(令和3)年7月7日 新華社/共同通信イメージズ

「インド太平洋戦略」

松野官房長官は2月14日の記者会見で、バイデン政権が「インド太平洋戦略」を公表したことについて、「バイデン大統領が『自由で開かれたインド太平洋』実現に向けた取り組みを進めるなか、文書の形で地域へのコミットメントを明確に示すもので、歓迎したい」と述べた。

中国に対抗する新たなビジョンの提案

飯田)「インド太平洋戦略」をバイデン政権として出して来ました。

奥山)『インド太平洋戦略の地政学』という本を翻訳させていただきまして、その概念がアメリカおよび日本、それから今後の対外政策を占うなかで、大事なキーワードになるということを改めて実感しました。

飯田)今後の大事なキーワードになる。

奥山)インド太平洋戦略は、日本の安倍元首相が提唱したと言われている戦略です。これを高く評価したオーストラリアの元外交官で、日本でも勤務経験があるローリー・メドカーフさんという方がいらっしゃいます。いまはオーストラリア国立大学で教授として務めている方です。

飯田)『インド太平洋戦略の地政学』の著者である。

奥山)中国が台頭して来て、戦狼外交なども行っているのだけれど、それまでは日本もアメリカも、「中国にどう対抗して行くのか」というハッキリとしたビジョンを持てなかった。しかし、「こういうビジョンがある」というところをまとめたのがこの本なのです。

飯田)新たなビジョンを。

奥山)我々が昔から知っているのは「アジア太平洋」ということです。アジア太平洋という考え方は、アメリカとアジアがあり、その間で日本がどう動くかというビジョンだったのですが、中国が台頭する現在、中国はGDPナンバー2になりましたし、日本の2倍~3倍のレベルで経済成長しています。ただ、それに引っ張られすぎてしまって、「中国がナンバー1になるから、もうそれには対抗できない」と折れてしまわないように、「我々はもう少し現実を見ようよ」というのがこの本の内容なのです。

インド太平洋のなかで横の連携を取れば、中国にも対抗できる

奥山)いままでの「アジア太平洋」ではなく、インドも含めて「インド太平洋」と考えることにしようと。すると、視点が太平洋だけではなく、もっと横に広がるではないですか。

飯田)インド洋の方に。

奥山)インド洋の方まで広げ、その視点で考えると、その真ん中にはいろいろな国がある。日本も含めて、インドネシアやマレーシア、オーストラリアもある。そう見ると、中国は台頭しているけれども、中国だけがすべてを占領してしまうわけではなく、他の国も横にいますので、ワン・オブ・ゼムでしかない。そこで日本を含め、「横の連携をしっかり取れば中国の台頭にも対抗できる」という1つのビジョンを示したのがこの本です。

飯田)横の連携を取れば。

奥山)中国の台頭は事実だけれど、日本やオーストラリア、インドネシアなどが横の連携を怠らず、イニシアティブを取りつつやって行けば大丈夫、という1つのビジョンがこの本のなかで示されています。その考えがアメリカにも共有されて、「マルチな国の枠組みをつくることにより、希望はある」というビジョンを示しているのが嬉しいですね。

日印豪の中規模国家の連携によって、中国の台頭を管理できる

奥山)トランプ大統領が当選したのは、2016年11月ではないですか。

飯田)そうですね。

奥山)そのときに、インドのモディ首相と安倍さんが、一緒に東京から新幹線に乗って新神戸に行きました。

飯田)ありましたね。

奥山)この本のなかで最初に出て来るのがそのシーンです。あのときのモディ首相と安倍さんの日印首脳会談が、大きな意味を持っていたのです。

飯田)あのときの日印首脳会談が。

奥山)アメリカ国内がトランプさんのことで混乱しているなかで、中国の周りの国々が立ち上がる。それは日本やインド、オーストラリアではないかと。それらの中規模国家の連携によって、中国の台頭を管理できるということを、いろいろな歴史的事例から示しているのが大事なところだと思います。

飯田)モディさんのことは別荘に呼んだりして蜜月でしたし、オーストラリアのモリソンさんは、安倍さんを「政治の師匠」と表現されていました。

奥山)そうですよね。

中国へのレアアースの依存度を低くさせた日本

飯田)外交を自分たちで回すというのは、いままでなかったことですからね。

奥山)安倍政権ではそれが画期的にできていた。「我々オーストラリア側としても心強い」ということが書かれていて、とても重要です。2010年くらいに中国からレアアースの輸入を禁止されたことがあったではないですか。

飯田)例の漁船衝突があって、そのあとに。

奥山)日本はそのあとオーストラリアなど、調達先を分散させ、中国への依存度を低くすることができた。中国側にやられても対処できる力、跳ね返す力は大事なことだと、この本を読んで改めて思いました。

飯田)経済安全保障の成功例ですよね。

奥山)まさにその通りだと思います。

飯田)サプライチェーンを再構築して影響を受けないようにする。

奥山)そういう対策が、この時代に大事になるのだということを、私はこの本を翻訳して感じました。

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