ウクライナを「兄弟だ」というのは、ロシアの拡張主義のための口実にすぎない

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月25日放送)に国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏が出演。ロシアが侵攻し、戒厳令が敷かれるウクライナ情勢について解説した。

ウクライナを「兄弟だ」というのは、ロシアの拡張主義のための口実にすぎない

2022年2月22日、親ロ派が支配するウクライナ東部のドネツクで通りを走行する戦車(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

侵攻を開始したロシアの狙い

新行)ウクライナ出身の国際政治学者、グレンコ・アンドリーさんに、電話でお話を伺います。ウクライナ情勢について、さまざまな情報が報道されておりますけれども、ウクライナにお住まいのご家族の安全は確認できましたでしょうか?

アンドリー)昨日(24日)深夜の時点では、無事でした。現在の状況はこれから確認しますが、おそらく、キエフ市街地はいまのところは無事だと思います。

新行)今回のロシアの狙いについて、どのようにご覧になっていますか?

アンドリー)ロシアの狙いは、明らかにウクライナの完全支配です。ウクライナ全土を正規軍で完全に制圧した上で、傀儡(かいらい)政権を立てることです。傀儡政権を使い、ウクライナをロシアとの1つの超国家組織、連合国家のような新しい構造に組み込み、事実上、ウクライナを併合することです。

ウクライナを「兄弟だ」というのは、ロシアの拡張主義のための口実にすぎない

ロシアに対し、抗議活動をする日本に住むウクライナ人ら=2022年2月24日午後、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

ウクライナから見るロシアは「危険で巨大な敵」でしかない ~「兄弟だ」というのはロシアの拡張主義のための口実にすぎない

外交評論家・宮家邦彦)多くの日本人の心は、ウクライナ人とともにあると思います。私も非常に心配しています。おっしゃる通り、ロシアはウクライナを中立化させ、場合によっては併合することも含めて考えていると思います。ロシアは「ウクライナとロシアは一心同体だ、兄弟だ」という言い方をしています。ウクライナの方から見て、ロシアというのはどういう存在ですか? また、今回のことでロシアに対する、もしくはプーチンさんに対する気持ちはどのように変わったと思われますか?

アンドリー)基本的に自分の拡張主義の根拠づけとして、「1つの民族であり、兄弟民族だ」と言い、軍を出して制圧しています。ロシアのいままでの歴史を振り返っても、戦争と侵略しかしていない国です。それが国家の本質ですから、おそらく今後もそれは変わらず、戦争しかしない国であり続けるのでしょう。

宮家)これからも。

アンドリー)ウクライナから見るロシアというのは、今回の出来事も含めて考えると、最大の脅威であり、最大の敵です。自分たちの存在を否定し、自分たちの存在の基盤を完全に破壊する、危険で巨大な敵です。

宮家)そうすると、「プーチンさんだけではなく、ロシア全体が非常に問題だ」という理解でよろしいですか?

アンドリー)プーチン大統領はロシアの思想を体現し、実行しているだけです。ロシアは根本的に、近代的な価値観が身についておらず、拡張主義の考え方を持っている人が多いです。

ウクライナを「兄弟だ」というのは、ロシアの拡張主義のための口実にすぎない

2022年1月29日、領土防衛隊の訓練に参加する人々=ウクライナ・キエフ近郊(共同) 写真提供:共同通信社

ウクライナはどこまでロシアと戦うのか

宮家)いまのお話を前提に伺いたいのは、ロシアは兵力をウクライナの首都に向け、いろいろな活動をして来るだろうと思います。その場合、ウクライナの人たちはどこまで戦うのでしょうか?

アンドリー)ロシア軍に対する抵抗がどこまで続くのかということは、正直、私にも読めません。現在の時点で、ウクライナ軍などがロシア軍に抵抗していて、ある程度はロシア軍に損害を与えています。ただ、ロシア軍はその損害を顧みず、制圧を続けて行くでしょう。最終的に、どこまでウクライナ人が戦うかどうかは、未知数の部分があります。「1週間で終わるのか、1ヵ月続くのか、それ以上続くのか」ということは、戦ってみなければわかりません。仮に制圧されたとしても、ウクライナ人によるゲリラ戦は続くと思います。

ロシアからウクライナの国民を守る唯一の方法はNATO加盟 ~その方向性は変わらない

宮家)この先のことについてお伺いします。ロシアの支配力拡大の程度にもよりますが、当然、亡命政権ができるでしょう。それが国に置かれるのか、NATO諸国のどこかに置かれるのかはわかりませんが。今後、ウクライナは、よりNATOに入る方向に動いて行くのでしょうか? それは、ロシアにとっては逆効果になるわけです。あるいは「NATOに入るのはとても無理だ」ということで、諦める方向に行くのでしょうか?

アンドリー)政府の方針は、NATO加盟の方向で変わりはないと思います。仮に領土をコントロールできなくなっても、国民の意思を代表して、そこを目指していることは変わりません。特に今回の事態によって、明らかにロシアはウクライナの存在を脅かしています。ロシアの脅威から国民を守る唯一の方法がNATO加盟なので、その方向性は変わらないでしょう。

ロシアに侵攻を諦めさせるには、ロシア兵に多くの損害を与える必要がある

宮家)NATO諸国、西側、国際社会全体が、ウクライナの人々に支援を続けて行かなければならないと思いますけれども、その点については、どうお考えでしょうか?

アンドリー)なるべく多くの支援をいただいて、その支援に基づき、一部の地域だけでも生活基盤を維持し、ロシアへの抵抗を続けなければならないと思います。こうなった以上、ロシアが諦めるかどうかはロシア側の人的損害の数によります。

宮家)ロシア軍の損害による。

アンドリー)言い方は物騒ですが、ロシアの兵士に多くの損害を与えて、ロシア社会の考え方を変えることが、いちばん大事なことになるかと思います。アフガニスタンで見たように、死者数に耐えられず撤退する可能性があります。同じように、ウクライナからロシア軍を撤退させるには、ロシアに対して多くの人的損害を与えることが必要です。そのためには、兵器やさまざまな物資が必要になります。同時に、ロシアに対して経済封鎖を起こし、ロシア経済を壊滅させるような措置を取ることです。

宮家)なるほど。アフガニスタンのようなことになったら大変です。ただ、物騒だとおっしゃいましたけれども、もしかしたら、それがロシアに対する最も効果的な方法の1つかも知れません。

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飯田浩司のOK! Cozy up!

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