ロシアに対する「安倍遺産」を「ゼロベース」に戻してしまった岸田政権

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月21日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ウクライナ情勢について、また日本の対露政策について解説した。

ロシアに対する「安倍遺産」を「ゼロベース」に戻してしまった岸田政権

日露首脳会談に臨み、ロシアのプーチン大統領(左)を出迎える安倍晋三首相=2016年12月16日 写真提供:産経新聞社

G7外相会合 ~ウクライナに軍事侵攻するなら「厳しい制裁」と警告

先進7ヵ国(G7)は2月19日に緊急外相会合を行い、ロシアがウクライナに軍事侵攻すれば「前例のない厳しい経済・金融制裁」を科すと警告する共同声明を採択し、ロシアに対して緊張緩和に向けた対応を迫っている。

ベラルーシとウクライナの国境地帯に注目するべき

新行)また、キエフからの共同通信によると、ウクライナのレズニコフ国防相は20日、「きょうの段階では、国境地帯のロシア側に攻撃部隊がいるという兆候はどこにもない」と述べ、ロシア軍のウクライナ侵攻が迫っているとするバイデン政権などの主張に疑問を呈したと、タス通信が伝えています。地元テレビに出演したレズニコフ氏は、「攻撃部隊の編成と展開には1週間から半月はかかる」と述べ、「明日や明後日に侵攻があるというのは適切ではない」と明言しました。同時に「リスクがまったくなくなったわけではないと思う」とも述べ、警戒の必要を指摘したということです。

須田)ウクライナの国防相はそういう言い方をしているのだけれど、注目しなければならないのは、ベラルーシに展開するロシア軍、あるいはベラルーシとの合同軍事演習をやっている両軍の動きだと思います。

新行)ロシアとベラルーシの両軍の動き。

須田)合同軍事演習をしているということは、兵員、武器、車両などを動員していて、いつでも実際の攻撃に移れるという状況になっているわけです。しかも、この軍事演習が期間を延長するというところを見ると、やはりベラルーシとウクライナの国境地帯に注目すべきだと思います。

「自分たちが引き金を引いたわけではない」という建て付けにしたいロシア

新行)ウクライナ東部での戦闘は、爆発や銃撃など、停戦合意違反が1500件余りあるという報道も入って来ています。

須田)どちら側が挑発をして、どちら側が引き金を引いたのかというところで、ロシアとしては、侵攻を開始したあとの経済制裁等々を考えると、「自分たちが引き金を引いたわけではない」という建て付けだけはつくっておきたいと思っているはずなのです。

新行)経済制裁を受けることを考えると。

須田)ですから、こういう散発的、偶発的な衝突が本格的な戦闘に結びついて行くなかで、「どちらが先に手を出したのか」という事実がわからなくなって来た。こういう状況があるからこそ、軍事侵攻のリスクが高まって行くということだと思います。

ロシアの偽情報を牽制するアメリカだが

新行)偽情報の応酬というのも指摘されています。

須田)今回、アメリカサイドはロシア側の情報かく乱作業について、手の内を明かすようなやり方をして牽制しようとしています。ロシア側からすれば、機先を制されている状況になると思うのですが、それをやると、アメリカに情報を流しているロシア側の情報源、あるいはアメリカの情報把握の仕組みそのものが、ロシア側に漏れてしまう可能性がある。ですので、それを明らかにするというのも得策ではないのです。どこまでやって行けるのかなと思います。

ロシアに対する安倍遺産をゼロベースに戻してしまった岸田政権

新行)“シゲタ”さんからメールもいただいています。「アメリカがロシアのウクライナ侵攻に引っ張られている状況で、中国が台湾への侵攻、尖閣諸島の侵攻にシフトしたら、日本はどうなるのでしょうか」ということですが。

須田)岸田首相がプーチン大統領と電話での会談を行いました。タイミングとしては非常に遅いなかで、たった25分間でした。25分で何ができるのだということもあるのですが。

新行)25分の会談で。

須田)日本の対露外交は、欧米とは一線を画しています。安倍元首相がレールを引いたのですが、まったく違う、異質の外交をやって来た。北方領土問題の解決や日露平和条約など、いろいろな懸案があるために、親密な関係を続けて来た。

新行)安倍元首相によって。

須田)その安倍遺産とでも言うべきものが、岸田政権になってすべて御破算になってしまったのです。ゼロベースに戻って来ている。先の所信表明演説を聞いていますと、相当、ロシアの神経を逆なでしているだろうなと思います。返還されるかどうかは別にして、せっかく安倍さんとプーチンさんとの間で、北方領土に関しては2島返還を前提に、そこをスタートラインにして交渉を進めて行きましょうという話になった。しかし、外務省の「ロシア・スクール」の意向もあり、もう1度「4島返還」という、ロシアが絶対飲めないようなスタート地点に戻してしまったのです。

2島返還から4島返還に方針を転換

須田)それが所信表明に盛り込まれていたのです。ロシア大使館の人間と話をすると、怒り心頭に達している。「いままでの交渉は何だったのか」ということで、ロシアとの関係は一気に冷え込んでいるというのが実態ではないかと思います。

新行)政権が変わることで外交方針が変わるというのは、相手国にとってもストレスですよね。

須田)やってはいけないことです。仮に政権がいまの野党に移ったとしても、外交安全保障の基本方針を変えてはいけないのです。そこを同じ自民党の自公政権でありながら、劇的に変えるというのはどうなのかと思います。

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