「クールな合理主義者」でなくなったプーチン大統領 最悪「核」使用の想定も必要か

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月25日放送)にロシア政治の専門家で慶応義塾大学総合政策学部の廣瀬陽子氏が出演。ロシアが侵攻を開始したウクライナ情勢について解説した。

2022年2月22日、親ロ派が支配するウクライナ東部のドネツクで通りを走行する戦車(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った理由 ~プーチン大統領の判断ミスか

ロシアのウクライナ侵攻が始まった。プーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切った理由を、ロシア政治専門家の廣瀬陽子氏が分析。

新行)ロシアの軍事侵攻の可能性について、専門家の間でも意見が割れていたと思います。廣瀬さんは、どのように考えていらっしゃいましたか?

廣瀬)私は、侵攻の可能性は極めて低いと思っていました。仮に、ウクライナのNATO加盟阻止が目的であれば、侵攻することにメリットはありません。合理的な可能性は1ミリもないので、単なるブラフであり、ウクライナにミンスク合意を履行させることを、ウクライナだけが認めるのではなく、「欧米が揃ってウクライナにそれを実行させる」ことを見出そうとしているのだと思っていました。

外交評論家・宮家邦彦)やはり、廣瀬さんも「ない」と思っていましたか。

廣瀬)ないと思っていました。

宮家)その予想は合理的で正しかったと思います。問題はプーチンさんが判断ミスをしたことだと思うのですが、今後はどうなると思われますか?

廣瀬)こうなると、ウクライナを獲ろうとしているとしか思えません。ここ数日の展開を見ると、極めて周到に準備をしていたのだと思われます。考えてみますと、バイデン大統領が就任したときから、この日のために準備をしていたのではないでしょうか。

揺れるウクライナ・ゼレンスキー大統領の動き

宮家)ウクライナのゼレンスキー大統領の動きはどうでしょう。正しい動きだったのでしょうか? それとも、少しブレがあったとお思いでしょうか?

廣瀬)ブレはあったと思います。バイデン大統領が就任してからのゼレンスキー大統領は、NATO加盟について、早く答えを出そうと積極的に動いていました。おそらく、それがプーチンさんを苛立たせていたのだと思います。ロシアが軍を国境付近に集結させて脅しをかけ始めてから、ゼレンスキー大統領は「ロシアの脅威がある」ということを国際的に訴えました。それに応じて、アメリカがいろいろな情報戦略を始めたのです。

宮家)そうですね。

廣瀬)それによって、ウクライナが大変な国であるかのようなイメージを与えてしまった。するとゼレンスキー大統領は、今度はそれに反対するように「ウクライナは安全だ」という声明を出しました。ブレブレの対応をしたのです。ウクライナの内政でも中立派が出て来て、国内も統制できなくなっていたと思います。そういう弱みにロシアがつけ込んだことも大きいと思います。

厳しい経済制裁が科されるロシアはいつまで持つのか

宮家)ロシアに対して、これから厳しい経済制裁が始まるわけです。石油やガスを売るときに、ドル、ユーロが使えなくなる。そうなると、ロシア経済はどうなるのでしょうか。人民元に頼るわけにもいかないでしょう。ロシア側はどうやって事態を凌ぐと思われますか?

廣瀬)厳しい局面になると思います。中国に頼るというのは事実で、2022年2月4日にプーチン大統領と習近平国家主席が行った会談でも、2014年以来の大きなディールとなる、石油と天然ガスを輸出するという契約を結びました。そこで一定の担保は得たと思います。それでも、ヨーロッパに輸出する額と比べれば微々たるものになっていますので、相当の覚悟を持ってやったと思うのです。金の備蓄など、それなりの備えはあるとしても、そう長いことロシアも持たないのではないでしょうか。

宮家)もし、本当にウクライナを占領しようと思えば、相当な出費になりますよね。維持するだけでも。

廣瀬)間違いありません。

2022年2月7日、モスクワでの記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

政治的な落としどころを見つけることは難しい ~最悪、核の使用も

宮家)「落としどころをどうするか」ということですよね。経済的に苦しくなっても、こぶしを振り上げた以上、プーチンさんも簡単に「恐れ入りました」と言えるわけはないでしょうから、かなり膠着状態が続くという理解でいいのでしょうか? それとも、どこか政治的な出口、もしくは落としどころが見えて来るのでしょうか?

廣瀬)残念ながらここまで来ると、政治的な落としどころを見つけるのは難しいですね。ウクライナ軍はロシア軍に比べて、戦力は10分の1以下という規模なのですが、士気だけはあるのです。

宮家)士気だけはある。

廣瀬)各所でゲリラ戦が長期化する可能性があります。他方で、いまのプーチン大統領の精神状態は、論理的にはまったく説明できないところがあります。最悪の場合、核の使用というところまで西側は想定し、準備しておかなければいけないと思います。

これまでの「クールな合理主義者」ではないプーチン大統領 ~心配な精神状態

宮家)いま、重要なことをおっしゃっていました。私は「プーチン判断ミス」論者なのだけれども、最近のプーチンさんは、いままでと違うのではないですか?

廣瀬)違うと思います。

宮家)なぜ、あれほどバイデンさんやウクライナを甘く見るのか。用意周到なのはいいけれども、もう少し冷徹な計算ができた気がするのです。

廣瀬)いままでは「クールな合理主義者」だと思っていました。しかし最近の動きには、まったく合理性がないのです。これまで私がやって来た研究の知識が生かされない状況が起きていて、ためらっています。

「悩みながら制裁をする」という消極的な姿勢しかできない日本

宮家)日本政府の動きは、どのようにご覧になっていますか? もし、追加的にやるべきことがあれば教えてください。

廣瀬)追加的にというのも難しいと思います。日本は、ロシアとの関係も重視しながらやって来ました。2014年以降の制裁は、欧米に追随してやって来ています。低レベルな制裁であるにも関わらず、「制裁を行う国だ。交渉できない」とロシアに言われ続け、現在に至っているわけです。

宮家)交渉できないと。

廣瀬)ロシアとの関係を考えると極力、低レベルの制裁に抑えたい。しかし、欧米との関係も重要だというところで、悩みながら欧米に追従して制裁を行うというような、消極的な姿勢しか考えられません。

宮家)そうすると、北方領土の交渉もなかなか難しいでしょうか?

廣瀬)極めて難しいと思いますし、そもそも、ロシアは憲法で領土の割譲を禁止してしまいました。そこについては、しばらく考えない方がよろしいのではないかと思います。

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