「過渡期」の韓国 今後の日韓関係は楽観的になりすぎず慎重に
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月11日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。韓国の尹次期大統領ついて、また、今後の日韓関係について解説した。
岸田総理が韓国の尹次期大統領と電話会談
日本政府は保守系の尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏が韓国大統領選を制したことを受け、新政権と日韓関係の改善を図って行く構えだ。岸田総理大臣は3月10日、尹氏に祝意を伝え、10日に開かれた参議院予算委員会では「関係改善のため、尹次期大統領と意思疎通を図って対話して行きたい」と述べた。11日には電話会談も行われた。また、3年前の2019年12月以降行われていない日韓首脳の対面での会談についても、総理は「具体的な日程を考えて行きたい」と前向きな考えを示している。
飯田)これに関連して北朝鮮の朝鮮中央通信が、大統領選を「わずかな差で当選した」と報じました。今回の結果を伝えるのは初めてのことだそうです。
宮家)韓国の新しい大統領は5年ぶりですよね。以前は大統領が「何を言っているかよくわからなかった」時代が続きましたが、それが今ようやく終わりました。尹さんが言っていることはよくわかりますよ。その意味では、とてもいい方向にあると思います。ただ、日韓関係を考えると、やはり注意深く対応しなければならない。一部の関係者は少し楽観的になっている感じがします。確かに尹錫悦さんは保守系ですし、日韓関係に関しても日本を重視している部分があるので、方向としてはそうなのですが。他方で、彼も大統領になれば少数与党ですよね。
日韓関係に関しては、慎重に動かすべき ~楽観的になりすぎずに
宮家)新大統領がやりたいことをやろうとするときに、必要な法律をつくれないということにもなりかねません。ましてや外交政策で急に舵を切ってしまって、「日本重視」となったときに、どうなるのか。「僅差で当選した」という北朝鮮の意見もあるけれど、確かに僅差であることは間違いないのです。
飯田)差は1%もありませんでした。
宮家)いい意味でも悪い意味でも、国が2つに割れているのです。簡単に右や左に舵を切れる状態ではないことを考えると、尹錫悦政権は難しい状況にあります。だからこそ、日韓関係は慎重に動かして行くことが大切だろうと思います。
飯田)慎重に。
宮家)もう既に慎重に動いているとは思いますが、決して完全に楽観的であってはいけないと思います。それはお互いに言えることだと思います。理解し合って、時間をかけて一歩一歩直して行くということです。
韓国が今後どちらの方向に行こうとするのか
飯田)当選後の会見、あるいはいろいろな取材のなかで、きょう(11日)の各紙国際面に載っていますが、尹氏が、かつての日本の小渕総理と韓国の金大中(キム・デジュン)政権時代のような関係を理想とするという記事もあります。
宮家)私は金大中さんが日本に来たとき、国会で演説したことをいまでも覚えていますが、「今の日韓関係は当時のような環境にあるのかな」とも思います。金大中さんのような人があのような行動を取ったので、日本では評価されたのですが、同時にこれに疑問を持った人もいたかも知れません。実は彼は韓国に帰ったあと、韓国人から批判されたのです。
飯田)そうだったのですね。
宮家)韓国がこれからどちらの方向に向かうかは韓国の人たちが決めることです。ですが、今回大統領選に関する議論を聞いていたらと、「ランドパワーとシーパワーの間に挟まれた韓国はうまく立ち回るべし」といった議論も聞かれました。そうしたバランス外交が韓国にとって本当に有益なのか。それよりも、普遍的な価値を守り、現状維持を志向する国々との連携の方が韓国の国益にとって重要ではないのか。こうしたことを自分たちで決めて、しっかりした戦略を持たないと、これから韓国は苦しいのではないかという気がします。
飯田)国民的議論をするような過渡期にあるということですか?
宮家)まだ時間がかかると思います。民主化してからまだ30年ですし、韓国内政はこれからだと思います。
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