過去最大規模となった東京都の新年度予算案
過去最大規模となった東京都の新年度予算案。いったい何にどう使われるのか? ポッドキャスト番組「ニッポン放送・報道記者レポート2022」(ニッポン放送 Podcast Station ほか)の3月17日配信回(担当:宮崎裕子記者)では、前編にひきつづき、都議会主要5会派の幹事長に新年度予算案についての評価を訊いた。
―――都民ファースト、知事の予算の組み立て方を評価
増子ひろき氏)コロナ対策で1兆円近くあった財政調整基金をかなり使って対応してきたんですが、これからは経済も厳しくなって、財政も厳しくなってくるなと心配していたんですけれども、不思議なことに(笑)、巣ごもり需要などもあってIT関連企業が好調で、都税収入が前年度比で11.6%増と、3年ぶりにプラスになっています。かといって、コロナがどうなるか分からないので、都財政の見通しは全然楽観できるものではないです。そうした中で事業評価によって財源確保したり、基金をうまく戦略的に活用したり、都債を活用して、本当に工夫して知事が来年度予算を組み上げたなと。内容もさることながら、予算の組み立て自体が、私たちが常に「賢い支出」と言ってきたし、知事の言葉を借りれば「ワイズスペンディング」な予算になっているなと。
宮崎)具体的には?
増子氏)介護職員の宿舎借り上げ支援の予算や、女性活躍、医療的ケア児への予算、デジタル人材の育成関連予算など、いま必要な「グリーンとデジタル」と知事もおっしゃっていますが、「人」に焦点を当てた、光を当てた予算になっているなと思います。
宮崎)「評価できない点」も教えてください。
増子氏)東京都予算そのものではなく、国の問題なんですが、ワクチン接種について、当初は8ヵ月後と言っていたのですけれど、東京都は独自で調査をしました。7ヵ月経つと抗体が下がってくると分かったので、(早めの追加接種を)国に申し入れもしたのですが、当時は8ヵ月でいいんだと。それが7ヵ月になり、6ヵ月になり……。もう少し早く(3回目接種に)取り組めたらと。これは非常に残念ですよね。
―――公明党、「たまメッセは多摩地域の振興の重要拠点になる」
宮崎)公明党は「18歳までの医療費助成」や「東京たまメッセ」について評価していますね?
東村くにひろ氏)高校生になってからの医療費ってかかるんですよね。こうした子どもにとって、家庭にとって大事な政策は東京都が音頭をとってやるべきではないかと主張してきました。具体的にどれくらいお金がかかるのか。知事は何百億もかかると思っていたようですが、都が出すお金は33億円ぐらいです。それならやってもいいのではないかと、知事も決断してくれました。
宮崎)多摩地域と島しょ部への振興施策も評価されていますね? 八王子の「たまメッセ」※など?
東村氏)「たまメッセ」(八王子市)に関しては話すと長くなりますが、石原慎太郎知事の時代に遡ります。当時の財務局が八王子の都立産業技術センター(旧:繊維試験場)を壊して、その土地を売却する予定でした。JR八王子駅と京王八王子駅の間の、最もいい土地です。それだけ売却益も入ってくるとは思うのですが……。昔、八王子は繊維の町だったんですが、多摩地域は機械、電子部品、精密部品などもどんどん創り出してきて、私は多摩地域の工業製品の出荷額を調べてみました。すると思った以上に多く、大田区などを含む23区は多摩地域の2分の1だったんです。石原さんは「多摩地域なんか、モノをつくっているのか?」と、石原さん特有の言い方で言われたんですが(笑)、データを見せたら「へー、これはすごいな。どうしたらいいんだ?」と言うので、「あの土地に、ビックサイトとまでは言わないけれど、首都圏、西部エリアの販路開拓のための展示会ができる拠点が必要です」と申し上げました。「それいいな」と言って決断してくれました。東京たまメッセは多摩地域、埼玉、神奈川西部、山梨を含めた拠点になると私は思っています。
(※「多摩産業交流センター・東京たま未来メッセ」:多摩地域の産業の振興を図ることを目的に建てられた展示施設。JR八王子駅と京王八王子駅の間に位置し、2022年10月オープン予定)
宮崎)「評価しない点」について教えてください。
東村氏)税収の見込み額がバブル時を上回って5兆6308億円となりました。こういうときだからこそ、私は財政調整基金を積んだ方がいいと。コロナ禍に突入するときは2兆5000億円ぐらいあったのに、今回は、他の基金を全部合わせても1兆円程度。グリーンとデジタルにあまりにもお金をかけすぎて、デジタル対策は600億円ぐらい増やし、2300億円ぐらいになったでしょう。ここにあまりにお金をかけすぎたので、なかなか積み立てられなかったのでしょうが、いつ首都直下地震が起きるか、第二・第三の感染症があるかもしれないので、少なくとも財政調整基金は1兆円近く積み立てておくべきだと思います。
宮崎)東京都の財政調整基金は2019年度には1兆円近くありましたが、コロナ対策で取り崩し、4000億円程度になっています。
―――自民党、「介護職員の家賃補助は大きな進歩」
宮崎)「評価しない点」からお聞きしてもいいですか?
小宮あんり氏)コロナ禍で、都民にとっては驚きかと思うんですが、法人税収が過去2番目の多さで5.6兆円の入りがありました。それに支えられて過去最大規模の予算になっています。当然、コロナ対策で予算が膨らむ傾向はありますが、限られた予算をどこに集中的に使っていくかという点が欠けているのかなと。予算があまりにも大きいだけに、新規事業も過去最多数となり、あれもこれも何でもできてしまうというのも、都政の課題ではないかなと思っています。
宮崎)「評価する点」を教えてください。
小宮氏)介護を支える人材の確保が急務で、介護職の有効求人倍率は7倍を超えています。介護職員の処遇改善につながる支援策を都として実施すべきだと、小池知事就任以降、会派として求めてきました。今回やっと家賃支援、物価の高い東京で、地方から出てきた介護職員の方が仕事を続けられるよう、家賃支援の補助を拡充しました。これは大きな進歩だったと思います。子ども政策では、待機児童対策として保育園がずいぶん整備されてきましたが、共働きが当たり前のなかで、保育園を出たあと、小学校1年生~2年生のころは、学校が終わったあとにいる場所へのニーズがあります。学童クラブなどの設置について、東京都が区市町村への支援を10分の10で行える体制ができたことは進展であったかなと思います。
宮崎)1、2年生の低学年のころは、放課後に子どもを1人で留守番させるわけにもいきません。そのため学童クラブを利用せざるを得ないですが、これは自治体の財政状況によりますけれど、施設が手狭だったり、老朽化していたりと課題は多いです。また保育園では、最大で夜8時~9時まで子どもをあずかってくれましたが、公立の学童クラブは午後6時まで。その時間までに親は迎えにいかなければならず、むしろ小学校に上がってからの方が大変な場合もあります。そのため夜遅くまであずかってくれる民間の学童を利用する家庭も少なくありませんが、利用料は高額です。低学年時の子どもの居場所づくりを、ますます充実させてほしいと思います。
どのような事業にいくら使われているのか、詳しくは東京都のHP内にある「TOKYO予算見える化ボード」というサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。
了
(ニッポン放送 宮崎裕子)
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/dashboard.html
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