ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月10日放送)にキヤノングローバル戦略研究所・主任研究員の伊藤弘太郎が出演。ウクライナのチェルノブイリ原発の電源喪失について解説した。
ウクライナのチェルノブイリ原発が電源喪失、IAEAは安全性に致命的影響なしとの見解
ウクライナのチェルノブイリ原発について、クレバ外相は3月9日、電源が失われたとツイッターに投稿した。これを受けて、国際原子力機関(IAEA)はツイッターへの投稿で「安全性への致命的な影響はない」としている。
飯田)キエフからの高圧電線に停電が起きたことが直接の原因だということですが、ロシアのやり方は想像を超えて来ますよね。
伊藤)我々が想像する以上の現実主義というか、目標達成のためには手段を選ばないという感じがしますね。
飯田)電源喪失ということになると、我々日本人としては東日本大震災、福島第一原発を想起してしまいます。
伊藤)時期的にも3.11が近いですよね。嫌なニュースだと思います。
ロシアの「原子力発電所の確保」は軍事作戦の立案段階からあったのか
飯田)チェルノブイリ原子力発電所は、事故が起こってから時間が経っているため、崩壊熱等々も福島と比べると規模的にも小さいからということで、IAEAもこのような見解を出しているようです。ただ、そもそも原発に攻撃するということ自体が国際法上、大問題ですよね。
伊藤)考えられないと思います。しかし、最初の軍事作戦の動きを見ても、立案段階から原子力発電所の確保という方向性はあったような感じがします。プーチンさんにとっては織り込み済みというか、戦略上そこを獲りに行くという強い意志が見えます。
善戦しているウクライナ
飯田)きょう(10日)の紙面では人道回廊などについての記事が出ていますが、全体を見てどちらが押していると見ればいいのですか?
伊藤)どちらが優勢かを判断するのは難しいのですが、ウクライナが善戦していることは事実です。
兵器提供に加えて、効果を上げている西側同盟国の情報収集能力
飯田)ウクライナだけでどこまで善戦できるかというところですが、アメリカなどの西側諸国は、「兵は出さないけれども」と言っています。その辺りはどうなのでしょうか?
伊藤)バイデンさんの兵を派遣しないという言葉が相当強いメッセージになっていて、「弱いのではないか」という心配を生んだと思うのですが、同時に解釈をすると、「裏ではありとあらゆることをやるぞ」という決意表明だったのかなと個人的には思います。
飯田)できることは何でもすると。
伊藤)あれだけ正確にウクライナ軍がロシア軍と戦って、かなりの勝利を挙げていることは事実のようですが、ウクライナの能力だけでできたとは思えません。何かしらのインテリジェンスなりの支援があって、ここまで善戦できているのではないでしょうか。
飯田)ロシアが誇る戦車、機甲部隊に対して、対戦車ミサイル「ジャベリン」で応戦するなど、精密兵器がたくさん入っているようですね。
伊藤)ジャベリンは開戦前からアメリカが準備して、相当数を入れていました。それでも足りず、まだ必要だということで補充しているようです。トルコからは無人攻撃機のバイラクタルという、最も売れている兵器も入っています。
飯田)アゼルバイジャンとアルメニアのときも。
伊藤)あのときも活躍しました。高度200メートルぐらいの低空から、正確に長距離ミサイルなどを打撃しています。どこから攻撃されているのかわからず、四方に逃げているロシア兵の映像も公開されています。あのような車列がどこにあるのかという情報も重要です。我々に見えないところで、熾烈な戦いが繰り広げられていると思います。
飯田)表に出て来る戦いの部分だけでなく、情報収集の部分では、やはりアメリカやイギリスは一日の長があるのですね。
伊藤)今回は象徴的ですが、始まる前にあえて公開しています。衛星を使った写真も見せて「これだけ集まっているのだぞ」と。いま100%近くの前線部隊の量的なところもしっかりと把握しています。アメリカやイギリスを含めた同盟国の情報収集能力は強いのではないかと思います。
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