ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月15日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。金融庁と財務省が日本国内の暗号資産(仮想通貨)交換業者30社に対して行った、ロシアとの取引停止要請について解説した。
金融庁と財務省がロシア向け暗号資産「取引停止要請」
金融庁と財務省は日本国内の暗号資産(仮想通貨)の交換業者30社に対し、ロシアとの取引停止を要請した。暗号資産を通じた送金が経済制裁の抜け穴になることを防ぐためである。
飯田)対象となるのは、ロシアではプーチン大統領など44人と10団体、ベラルーシではルカシェンコ大統領など19人と15団体です。ここは抜け穴になりがちなのでしょうか?
クラフト)そうですね。ただ、要請があっても、暗号資産は取引先が見えにくいのです。ですから、どこまで対応できるのかどうか。
バイデン大統領が暗号資産関連の大統領令に署名 ~暗号資産全般のお金の流れを追跡しやすくする
クラフト)アメリカは、さらにもう1歩進んでいます。対ロシア向けだけではなく、暗号資産全般に関するトレーサビリティを向上させる。裏で誰が取引しているのか、どこにお金が流れているのかを追跡しやすくするため、暗号資産に関する大統領令に、バイデン大統領が9日、署名しました。司法省がそのためのチームをつくっているということです。
飯田)アメリカでは。
クラフト)近年、ランサムウェアなどのサイバー犯罪が増えていますが、暗号資産の場合は捕まりにくい、身元がわかりにくいので、みんな暗号資産でのランサムウェアをやっているのです。そこがすぐにわかってしまえば、暗号資産絡みのランサムウェア、サイバー犯罪はなくなりますので、非常に大きな動きだと思います。
飯田)今回の件を奇貨として、それに乗じて追跡しやすくすると。
日本でも暗号資産全体のトレーサビリティを高めて行くことが必要
クラフト)先日、デンソーのドイツ支社がサイバーハッキングされました。これもランサムウェアですが、「身代金をよこせ」ということで、送金した場合に「誰の口座なのか」がわかれば、身代金目的の犯罪はなくなって行きます。
飯田)なるほど。
クラフト)日本全体の企業を守る意味でも、こうした取り組みは重要なのです。日本もロシア向けだけではなく、暗号資産全体のトレーサビリティを高めて行くことが求められているのではないでしょうか。
日本における暗号資産の規制強化は急務
飯田)以前、アメリカの「コロニアル・パイプライン」がハッキングされて、ハッカーに身代金を払いましたが、払った上で追跡し、その大半を回収したということがありました。
クラフト)それがより簡単にできれば、抑止にもなります。2月26日にSWIFT排除によるロシアへの制裁を発表した瞬間、ビットコインが暴騰したのです。SWIFTがダメでも、ビットコインで決済できると。
飯田)こちらが抜け穴になると。
クラフト)それで暴騰したのですけれども、アメリカの司法省が取り締まりを発表したら、今度は暴落したのです。暗号資産は抜け道が多いので、規制強化は急務だと思います。
飯田)司法省の発表で暴落するというのは、司法省の実力をみんな知っているからということですね。
クラフト)アメリカの場合は厳しいですからね。日本は全体的に企業の防御策も遅れているし、当局の取り締まりも遅れています。日本がデジタル化するには、このような取り締まりも強化して行く必要があります。
暗号資産が健全な運用商品になるためにも、抜け道を阻止しなくてはならない
飯田)去年(2021年)、警察庁のなかに「サイバー局」をつくり、そこに捜査権限も与えました。全国組織に捜査権限を与えるのは、皇宮警察以外では初めてであるということですが、警察サイドに危機感があるわけですか?
クラフト)「そこまでやらないとダメだ」という危機感はあるのです。もう1つ大事なのは、人材です。サイバーハッキングに詳しい人はなかなかいません。
飯田)犯罪をしていませんから。
クラフト)アメリカのFBIは、犯罪者を逆に雇うということをしています。犯罪者を仲間に入れて、牢屋に入れない代わりに、協力して追跡を手伝わせる。そうして人材を揃えるくらい、人材が少ないのです。日本も頑張らないと大変ですね。
飯田)このような取引を許すかどうかというところでは、潔癖めいた風土が日本にはありますかね。
クラフト)あります。しかし、暗号資産が正しい運用商品になるためには、犯罪に使われないようにしなければなりません。抜け道を阻止しなければ、健全な金融資産にはなりません。そういう意味でも、今後は取り締まり強化をして欲しいですね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。