黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(3月10日放送)に鈴木酒造店5代目蔵元の鈴木大介が出演。10年ぶりに浪江町でつくった酒「ただいま」について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。3月7日(月)~3月11日(金)のゲストは鈴木酒造店5代目蔵元の鈴木大介。4日目は、浪江町で10年ぶりにつくった酒「ただいま」について---
黒木)10年ぶりとなる浪江町での酒づくり、いかがでした?
鈴木)浪江でやっていた感覚が酒づくりで身につけた感覚でもあるので、10年間できなかったことを埋めて行くような作業で、1つ1つ、「浪江ではこれだ」、「こうだった」と進めて来ました。
黒木)その10年ぶりにつくられたお酒の名前が「ただいま」ということです。この名前に込めた思いをお聞かせいただけますか?
鈴木)自分1人では実現できませんでした。多くの方たちから支援していただいて辿り着いたので、感謝を込めて、素直に「ただいま」という名前にしました。
黒木)万感の思いですよね。「ただいま」という名前でね。浪江のお米、浪江の水で「ただいま」という思いで再開されたのですね。「磐城壽」もつくっていらっしゃるのですよね。
鈴木)「磐城壽」は半年ぐらい経ったあとから、出荷が始まりました。
黒木)「ただいま」と味は違うのですか?
鈴木)同じ浪江町内でも水が若干変わりますので、いろいろな組み合わせがあるのなのです。麹菌であったり、酵母菌であったり、「何がいい組み合わせになるのか」というのを最初の何ヵ月かは試しながら作業しました。「磐城壽」の場合は、地元の浜に揚がる魚と合わなければいけないので、そこを再スタートとして探りました。それが出きたあとに「磐城壽」の名前で販売を始めました。
黒木)まだまだやるべきことがおありなのですね。
鈴木)浪江で一次産業に関わっている人たちが、気持ちの強い方、未来志向の強い方が多いので、いい意味で、何かしら「浪江はこういうところだよ」「おいしいものがありますよ」ということを広げることができるのかなと思います。少しでもいいので、その手伝いをしたいですね。
黒木)お酒でつくったお菓子もあるのですって?
鈴木)酒粕や砂糖を米からつくっています。それでおかきをつくって、浪江で販売しています。狭くなるのですけれども、請戸で水揚げされる魚種専用酒というのもつくっています。
黒木)漁師の方々も再開したのですよね。市場とか。
鈴木)市場は2021年の4月から水揚げが始まりましたが、船の数が震災前の3分の1になっていて、漁も制限されている状況です。白身魚で有名だった港でしたが、船の上で活け締めをするという技術が10年休んでいる間に上がっています。再び、この請戸の魚と一緒に酒を売り出せないかということを考えています。
黒木)やりたいこと、これからの目標がたくさんありますね。
鈴木)自分たちの酒は、浪江町の人々の暮らしのなかで成り立って来ました。震災前からやっていたことですが、東京などの大都市圏の「違う文化圏に自分たちの暮らしの文化を売る」というのが、1つの喜びでもありました。もう1度それをやり直そうという入口にいるところです。
鈴木大介(すずき・だいすけ) / 鈴木酒造店代表取締役
■山形県長井市にある「鈴木酒造店」の5代目蔵元。
■もともと鈴木酒造店は、福島県浪江町の沿岸部にある請戸地区で江戸末期から酒造りをしてきた酒蔵。代表銘柄の「磐城壽(いわきことぶき)」は、“日本一海に近い酒蔵” として請戸の漁師をはじめ、地域の人々の暮らしに欠かせない祝い酒として親しまれてきた。
■しかし2011年の東日本大震災の津波ですべてを流失。また、福島第1原発の事故により、浪江町から避難を余儀なくされる。
■その後、鈴木さんは「浪江の酒を復活させて欲しい」と言う周囲の声を受け、2011年12月から、山形県長井市の老舗酒蔵を引き継ぐ形で酒造りを再開。素直に水のよさと米のよさを表現しながら、日本酒が持つ可能性を追求している。
■浪江町にある「道の駅なみえ」の敷地内には鈴木酒造店の酒蔵が設置されていて、2021年から再び浪江での酒造りを実施。製造工程を見学することができ、お酒の販売はもちろん、利き酒も楽しめる。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳