復興に際して思ったのは「浪江の名前をなくしたくない」という強い気持ち 鈴木酒造店5代目蔵元・鈴木大介

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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(3月9日放送)に鈴木酒造店5代目蔵元の鈴木大介が出演。東日本大震災で被害を受けた浪江町の復興について語った。

復興に際して思ったのは「浪江の名前をなくしたくない」という強い気持ち 鈴木酒造店5代目蔵元・鈴木大介

鈴木大介  鈴木酒造店代表取締役

黒木瞳がさまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。3月7日(月)~3月11日(金)のゲストは鈴木酒造店5代目蔵元の鈴木大介。3日目は、浪江町の復興について---

黒木)東日本大震災の津波で被害を受け、地元の福島県浪江町を離れ、2011年10月に山形県の長井市で酒づくりを再開されました。長井市の皆さんは鈴木酒造店の再開をどのように受け入れてくださったのですか?

鈴木)最初は、自分たちで酒蔵を改装したのです。「東洋酒造のなかが何やら変わって来ている」という話はそれとなく市内に広がっていて、入り口が通りに面しているのですけれども、長井市の人たちがうちの会社の前を通るときにみんな覗いて行くのです。

黒木)前を通るときに。

鈴木)そういうところは奥ゆかしい感じでしたけれども、「温かく見守ってくれているな」ということは感じました。

黒木)避難先が山形だったのは、理由があったのですか?

鈴木)最初に避難したのが、同じ県の米沢市だったのですけれども、山形県の酒造組合の方たちが紹介してくださったのです。

黒木)地震のあと、すぐに奥様たちを避難させて、ご自分は地域の方を助けに行かれたということなのですけれども、地震で「すぐに避難しろ」という感じだったのですか?

鈴木)消防団に入っていましたので、消防団で地区に人を入れない。あとは地区からスムーズに人を避難させるという活動をしていましたが、その避難活動中に津波が来ました。

黒木)そのときはどこにいらしたのですか?

鈴木)地区の西側の交差点で、見通しのいい場所にいました。うちの地区に入って来た津波は15メートルほどの高さだったのですが、津波が崩れる瞬間を見ました。本当に圧倒的なものだったので、あれを見たときには「一切合切残らないな」と覚悟しましたし、取り残されている人たちもいるようだったので、そこは心配しました。

黒木)15メートル。

鈴木)自分たちで後悔していることは、次の日の朝早くから捜索が入る予定だったのですが、原発の状態が不安定だったので、捜索できなかったことです。その間、1ヵ月くらいは捜索に立ち入れなくて、「助かった命もあったろうに」と思っていました。

黒木)悔やまれてなりませんよね。でも、何かやらなければならない、何か残さなければならないということで、奮起されたと思うのですけれども。

鈴木)やはり浪江の名前ですよね。自分たちの生まれ育った請戸地区の名前はもうなくしたくないという気持ちがあります。それがいちばん強かったと思います。

黒木)地域の皆さんで横のつながりが強かったのだとは思うのですけれど。

鈴木)みんな顔見知りで、いい地区でした。お醤油を借りに行ったり、昔のいい風習が残っているような地区です。何か借りたら、それ以上に返すというような。

黒木)いろいろな催しものがあると大漁旗を振ったということですが、温かい地区だったのでなくしたくないと。

鈴木)そうですね。

黒木)でも、昨年(2021年)3月に浪江に戻られて、浪江の皆さんも喜んでいらっしゃるでしょうね。

鈴木)1つずつ取り戻すという喜びがあるのです。日常の1つが戻って来たという喜びが町のなかにあるので、自分たちがそういう1つになったというのが去年(2021年)です。自分たちがそこに入って行ったら、今度は浪江のいいものを引き上げればならないので、喜び半分、責任半分といったところです。

黒木)ふるさと納税でもお酒をやっていらっしゃるのですよね。

鈴木)選択していただきました。そこで選んでいただくというのは、本当に喜びでしかありません。

復興に際して思ったのは「浪江の名前をなくしたくない」という強い気持ち 鈴木酒造店5代目蔵元・鈴木大介

鈴木大介(すずき・だいすけ) / 鈴木酒造店代表取締役

■山形県長井市にある「鈴木酒造店」の5代目蔵元。
■もともと鈴木酒造店は、福島県浪江町の沿岸部にある請戸地区で江戸末期から酒造りをしてきた酒蔵。代表銘柄の「磐城壽(いわきことぶき)」は、“日本一海に近い酒蔵” として請戸の漁師をはじめ、地域の人々の暮らしに欠かせない祝い酒として親しまれてきた。
■しかし2011年の東日本大震災の津波ですべてを流失。また、福島第1原発の事故により、浪江町から避難を余儀なくされる。
■その後、鈴木さんは「浪江の酒を復活させて欲しい」と言う周囲の声を受け、2011年12月から、山形県長井市の老舗酒蔵を引き継ぐ形で酒造りを再開。素直に水のよさと米のよさを表現しながら、日本酒が持つ可能性を追求している。
■浪江町にある「道の駅なみえ」の敷地内には鈴木酒造店の酒蔵が設置されていて、2021年から再び浪江での酒造りを実施。製造工程を見学することができ、お酒の販売はもちろん、利き酒も楽しめる。

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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