戦車や長距離火砲など ゼレンスキー大統領が「攻める兵器」を求める方向へ変化

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ウクルインフォルム通信日本語版編集者の平野高志氏が4月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演(日本時間午前5時収録)。ロシアによるウクライナ侵攻の現況について、現地からレポートした。

戦車や長距離火砲など ゼレンスキー大統領が「攻める兵器」を求める方向へ変化

演説するゼレンスキー大統領=Ukrinform/時事通信フォト

ロシアの大統領報道官が大量虐殺への軍関与を否定

ウクライナ当局は首都キーウ近郊のブチャなどで400人を超す市民の遺体が見つかったと発表した。ゼレンスキー大統領はロシア軍による「ジェノサイド(集団殺害)だ」と指摘。一方、ロシアの大統領報道官はロシア軍の関与を否定し、「いかなる非難も拒否する」と述べた。

飯田)4月5日の朝刊各紙では、「ロシア軍が市民を虐殺している。キーウ近郊のブチャで大変なことが起こっていた」という報道がありました。ウクライナの方々にとっては語るのも辛いと思いますが、どのような形で受け止めていらっしゃいますか?

平野)衝撃ですよね。1ヵ月近く占領されている間は、情報があまり入りませんでした。その間にどのようなことが行われていたのかということがいま明らかになり、とんでもないことが起きていた。それと同時に、現在もまだ占領されている他の地域があるわけです。そこから情報が入りにくくなっていることを思うと、ブチャで行われていたことが他の地域でも起きているかも知れない。そう考えると胸が苦しいです。

戦況が変わり、ウクライナによる情報の出し方に変化が

飯田)これまで、映像や画像などがさまざま出てきましたが、南部から東部の最前線に関しては、少し情報の出方が変わっているような気もします。その辺りはいかがでしょうか?

平野)ロシアがミサイル攻撃などをしてきた際、「着弾した瞬間の映像や写真をアップロードしないように」ということを、ウクライナ政府が国民に向けて発信しています。それはロシア側に対してミサイルの精度を教えてしまうことになり、相手に利する行為になってしまうからです。

飯田)ロシア軍に確認させてしまうと。

平野)戦争が始まった当初は、ミサイル攻撃があると、みんなで映像や写真などをアップロードしていたのですが、そのようなものがなくなった。そのため、ミサイルは着弾しているのだけれど、「どのような被害が出ているのか」ということなどが映像では伝わらなくなってきました。

飯田)戦争が始まった当初、さまざまな映像が出て、それが全世界に広がり、「みんなでウクライナを応援しよう」ということになったわけですが、情報の出し方なども、気を遣う局面に戦況が変わってきたということですか?

平野)そうですね。軍事的にはそのような映像を出さない方がいいけれども、被害がわかる方が世界は応援しやすくなる、報道してもらいやすくなるというジレンマはあると思います。ブチャの被害などであれば、「外国の記者が現地に行って正確な情報を世界に伝えて欲しい」と言っていますが、「軍事的に不利になるような情報は出してはいけない」ということは徹底するのだと思います。

ゼレンスキー大統領が求めているものが戦車など、攻めるための武器に変化 ~戦車の提供が始まれば、第2局面に

飯田)これはウクライナの方々が約1ヵ月間、多大な犠牲を払いながら戦い続け、そして局面が変わってきたと見てもいいのでしょうか?

平野)ゼレンスキー大統領の求めるものが、少し変わってきています。最近は戦車、航空機、そして長距離の火砲などを求めるようになっています。

飯田)求めるものが。

平野)推測するに、当初もらっていた対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」などは防衛用の武器で、待ち伏せをしてロシアが攻めてきたときに撃ち落としたり、戦車を壊したりするものなのですが、戦車は攻めるための武器です。ウクライナ側が進軍して取り返したい。南部や東部を攻めていくためには戦車が必要だということで、当初とは違うものを求めるようになっているのだと思います。

飯田)なるほど。

平野)そのようなものが入ってくるという情報もありますので、どこかのタイミングでどこかの国が提供するということになっているのではないでしょうか。ただ、具体的に「どこの国が何台出す」というような情報は出ていません。それは当初の戦争とは違う、第2局面と言えるのではないかと思います。

戦車や長距離火砲など ゼレンスキー大統領が「攻める兵器」を求める方向へ変化

2022年2月7日、モスクワでの記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

戦勝記念日に「ウクライナを非ナチ化した」と宣言する可能性も

飯田)第二次世界大戦の戦勝記念日である5月9日に合わせて、東部に関してプーチン大統領が勝利宣言をするのではないかと、アメリカ側が伝えていますが。

平野)5月9日はロシアにとって重要な対独戦勝記念日ですので、あり得る話ではないかと思います。ソ連時代からですが、ナチスを打倒したことがいまのロシア国家の正しさを担保するイデオロギーになっています。

飯田)そうですね。

平野)「ナチスを倒したから私たちは正しいのだ」というイデオロギーがあるのですが、今回、ロシアがウクライナを攻めるときに、非ナチ化、ウクライナをナチ化から解放することを目的に掲げ、第二次世界大戦でソ連がナチスを倒した当時を模倣するような形で、ウクライナに攻めてきています。

飯田)ナチ化から解放するためにと。

平野)そのため、5月9日に「ウクライナを非ナチ化した」と宣言して、パレードを行いたいと思っている可能性はあると思います。他方、軍事的にそれができるかどうかについては、疑問を持っています。どれくらいの戦果を得た時点で「非ナチ化」と言えるのか。もしくはシンボリックに、東部マリウポリだけを陥落させる可能性はあるかも知れませんし、ドネツク、ルガンスクの東部2州全域だけを制圧したいと考えているかも知れません。

勝利宣言をしたあとも戦争が続く可能性も

平野)また、それが達成されて5月9日に勝利宣言をしたからといって、必ずしも戦争が終わるとは思いません。その間に、ロシアとウクライナが合意に達するかどうかということも不明ですし、勝利宣言やパレードが終わったあとも、戦争が続く可能性も排除できないと思います。

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