「勤め先と居住地の違い」によって異なる保健所の管轄 ~勤め先の近くの医療機関で診てもらっても疫学調査は居住地の保健所が行う

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東京都医師会副会長で「平成立石病院」理事長の猪口正孝氏が3月30日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、確立した新たな医療体制について解説した。

「勤め先と居住地の違い」によって異なる保健所の管轄 ~勤め先の近くの医療機関で診てもらっても疫学調査は居住地の保健所が行う

ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」

自宅療養者への健康観察、往診体制の確立

飯田浩司アナウンサー)医療提供体制についてですが、第5波までを経験してきて、さまざまなことが備えられたと思います。それを踏まえて、第6波での提供体制はいかがでしたか?

猪口)第5波のときに、病院、宿泊療養施設に患者を収容しきれなくなり、自宅療養、もしくは「入院を調整中」という方たちが増えました。そこで、自宅療養されている方々の経過を見守るのが大事であるということが1つ、第5波のときの経験としてありました。

飯田)自宅療養の方が増えましたね。

猪口)それを踏まえて、自宅療養の方たちの健康観察をしっかり行い、それから往診体制などの医療につなげていく方法を確立する。そこに視点を置いた体制を、第5波から第6波にかけて一生懸命準備しました。

保健所の管轄は医療機関のある地域ではなく、患者の居住地があるところ

飯田)感染症法上、采配するのは保健所だという話でもありましたけれども、そこに地域のお医者さんたちも一緒になってコミットし、地域全体で見るのだという体制を東京都医師会も整え続けてきたわけですが、その体制は機能したと見ていいのですか?

猪口)感染症法上、保健所は多岐にわたる仕事を担うようにできているのです。

飯田)そのようですね。

猪口)新型コロナ感染症だとわかれば保健所に届け出るのですけれど、医療機関のある保健所へ届けるわけです。そして次に、「あなたはどのようなところで感染しましたか」、「どういう生活をしていましたか」、「濃厚接触者はどういう方ですか」というようなことを調べる疫学調査があるわけですけれども、それをやるのは、患者さんの居住地にある保健所なのです。

飯田)医療機関のあるところではなく、住んでいるところの。

猪口)医療機関が所管する保健所ではないのです。東京では、港区の保健所への届け出が最も多いのですけれど、まず、港区の保健所で届け出の仕分けをします。

飯田)港区の保健所で。

猪口)そうすると、「この人が住んでいるのは千葉県ではないか」という話もたくさんあるわけです。

飯田)会社と家が違うというのは、関東ではよくある話ですね。

猪口)その仕分けをして、所轄の住所地の保健所に知らせて、そこで療養が始まるわけです。住んでいるところで。

「勤め先と居住地の違い」によって異なる保健所の管轄 ~勤め先の近くの医療機関で診てもらっても疫学調査は居住地の保健所が行う

猪口正孝氏、飯田浩司アナウンサー

一部の業務を保健所から医療機関へ ~保健所が本来の業務に戻れた

猪口)以前は、届け出たら保健所の仕事だということで、保健所が「そのあとは私たちがやるからいいです」と、医療機関は介入しなかったのです。個人情報の問題などもあるので。

飯田)以前は。

猪口)そこを医療機関が「私たちもやるから」と働きかけたのです。「保健所さんは他の仕事をやってください」と。なるべく早くコンタクトを取ってくれという話になり、陽性者の健康状態を管理するHER-SYS(ハーシス)への入力など、保健所がやっていたことを我々がやるようになりました。そして、患者さんから一時も目を離さないようにしたのです。患者さんがフリーになる時間をなくしたというところが大きかったと思います。

飯田)患者さんが放置されることがなくなった。

猪口)そうすることによって、保健所は保健所の本来的な業務に戻れるのです。保健所の業務のなかで「こういうところは民間に委ねられる」ということが広がってきたので、保健所にとってもよかったのではないでしょうか。

番組情報

モーニングライフアップ 今日の早起きドクター

毎週月~金曜日 朝6:15~

番組HP

医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます

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