数量政策学者の高橋洋一が5月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」について解説した。
インド太平洋経済枠組み(IPEF)
松野官房長官は5月10日の記者会見で、アメリカが主導するインド太平洋経済枠組み(IPEF)について、「アメリカのインド太平洋地域への積極的なコミットメントを示すものであり、歓迎する」と言及した。IPEFはバイデン政権が国内の反発が根強いTPPの代わりに打ち出した、日本や東南アジアの国々と連携して中国に対抗する経済圏をつくるという枠組みで、バイデン大統領が来日する5月下旬に発足の見込みだ。
飯田)関税等々ではなく、通商の枠組みなどが中心だということです。
IPEFはTPPの代替案にはならない
高橋)「枠組み」ということで、カチッとしたものではないということが想像できますが、正式名称は「IPEF(Indo-Pacific Economic Framework)」であり、「フレームワーク」です。フレームワークと聞くと、私は「構想」を思い浮かべます。それに対して、TPPの正式名称は「Trans-Pacific Partnership Agreement」です。「アグリーメント」は協定という意味ですから、全然違います。
飯田)まったく違う。
高橋)アメリカには政府と議会があって、政府は万能ではないのです。日本は議院内閣制だから、政府が決めたことはほぼ議会で通るのですが、アメリカの場合は違います。
飯田)アメリカは。
高橋)アメリカ議会と政府の間の関係を取り持つときに、議会がどのくらい政府に権限を与えるかという「貿易促進権限(TPA)」があって、これがポイントだったのだけれど、去年(2021年)の7月に失効してしまい、結果的にできないのです。
飯田)いまは。
高橋)中間選挙もあるので、議会を刺激したくないということもあり、このようなことになるのですが、代替策にはならないですよ。議会のコミットメントがまったく違うのでね。
飯田)一応やっている感は出すけれども。
「こういう構想があります」というくらいのもの ~TPPとはまったく違う
高橋)政府の方で議会の琴線に触れるような話はできないと思います。苦肉の策として出てきたのでしょうけれど、中身がTPPとはまったく違います。バイデン大統領が訪日する5月下旬に発足すると言うのだけれど、「考えます」というくらいでしょう。
飯田)「こういう構想があります」と発表する。
高橋)アメリカの場合、議会を通らないと、きちんとしたものはできないので、同じものとして扱うと肩透かしになってしまうかも知れません。TPPとはまったく違うものだと思います。
飯田)関税などの話になると、当然ながら議会とぶつかってしまうし、選挙にも悪影響が出る。
高橋)どこまで中身があるのか。期待しても無理だと思います。
飯田)TPPは相当、公的セクターへの参入などがきちんと決まっています。あのレベルではない。
高橋)議会との関係で、どれだけ中国を抑え込めるかということです。資本取引のようなものの方が対中国には効くのです。実質的に効くのであれば評価しますが、いまの段階ではわかりません。
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