尖閣有事の際、アメリカは「あらゆる協力」をするだけ まず動くべきは日本

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ジャーナリストの有本香が5月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日米首脳会談後に行われた共同記者会見での米バイデン大統領の発言について解説した。

2022年5月23日、日米共同記者会見~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/23usa.html)

米バイデン大統領が台湾有事の場合、軍事関与を行う考えを示す

アメリカのバイデン大統領は5月23日に行われた日米首脳会談後の共同記者会見で、中国が台湾に侵攻した場合にアメリカが軍事介入する意思があるかと問われ、「イエス。それが我々の責務だ」と明言した。この発言を受けて中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)副報道局長は「強烈な不満と断固とした反対を表明する」と反発した。

飯田)「インボルブド・ミリタリー(involved militarily)」と聞かれて「イエス」と答えたと。これを派兵と捉えるかどうか。いろいろな捉え方があると言う人もいますが。

有本)きっぱり「イエス」とおっしゃったので、みんなが「お?」となりました。でも「インボルブド(involved/関与)」ということであれば、「それはそうでしょう」という話です。アメリカは「台湾関係法」という法律を持っていて、戦略的曖昧さが言及されることもありますが、過去を振り返ると台湾海峡で危機と言われたときには、それなりの動きをしてきていますからね。

1996年、米国が台湾海峡に空母を派遣

飯田)かつては空母を派遣したこともあります。

有本)特に台湾に関心の高かった人間としては、記憶が鮮明です。1996年ですね。

飯田)ちょうど総統選をやっていたときです。

有本)総統選をやっているときに、中国がミサイルで脅したということがありました。あのときは空母を台湾海峡に入れています。

飯田)あれでむしろ台湾は結束しましたね。「李登輝さんで」ということになりました。

有本)そうですね。逆に中国が下手を打ったという話でした。1979年に台湾関係法を結ぶ前は、中華民国との「米華相互防衛条約」だったわけです。それを曖昧にしてきたのですけれども、軍事的な関与・介入はあり得るということです。ホワイトハウスが会見直後に打ち消すような言い方をしましたが、インボルブドであれば「別にイエスでいいのではないか?」という感じですね。

飯田)あらゆる選択肢があるということですね。

いざとなれば、アメリカはそれなりの動きはする

有本)いままでもアメリカは政権や情勢によって、政権関係者や軍関係者によるかなり踏み込んだ発言がありました。最近ですと昨年(2021年)、当時のインド太平洋軍司令官だったデービッドソンさんが、中国の台湾侵攻の可能性について「今後6年以内に」という強い発言がありました。

飯田)ありましたね。

有本)あれは予算を取るための発言だとも言われましたが、「中国はアメリカに取って代わろうとする野心を持っている」と明確に言ったのは、大きな意味がありました。常に危機感は持っていて、状況によっては強い言葉で牽制しながら、いざとなったらそれなりの動きをするということだと思います。

ウクライナ情勢を見て「本当にアメリカが動いてくれるのか」と懐疑的になった台湾国民

飯田)台湾国内で世論調査をしたときに、ウクライナ情勢を受けて、「本当にアメリカが動いてくれるのか」と少し懐疑的な意見が増えてきています。それをアメリカは見ていますよね。

有本)世界がそれを見てしまいましたからね。ウクライナはアメリカと同盟関係にありませんし、北大西洋条約機構(NATO)にも入っていませんから、当然、軍事的な動きをすることはない前提なのですが。

飯田)事前に防衛義務的なものは一切ありませんでした。

有本)ただロシアという安保理の常任理事国が、あれほどあからさまな侵略戦争を起こせる。そして核による恫喝を行えばアメリカは動かないという状況を見てしまったので、台湾で国内の危機感と結束が高まるのは当然の動きだと思います。

2022年5月23日、日米首脳会談~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/23usa.html)

現状の憲法では、どこかの国に侵攻された場合、日本はウクライナのように戦うことができない

有本)それに引き換え、日本はどうでしょう。国民の意識は変わってきていますが、国会を見ていると相変わらずです。

飯田)憲法審査会の議論を見ても、相変わらず「必要最小限の守りとは一体何なのだ?」というような議論をしています。

有本)「守らないように、守らないように」と議論しているようにしか思えないですよね。いちばん注意すべきは我が国なのですけれど。

飯田)昨日(23日)の日米首脳会談では、防衛費の増額が表明されました。

有本)「このタイミングで言うだろう」とは言われていましたし、アメリカからも求められているのだろうと思います。ただ、気になるのは憲法の問題です。防衛費の増額は当然、必要なことで、国内でもこれに関してはコンセンサスが醸成されてきたと思います。

飯田)防衛費に関しては。

有本)でも憲法に関して、現状は自衛隊の手足を完全に縛っている状態です。ウクライナのように、日本がいきなりどこかの国に一方的に侵攻された場合、どうするのか。もちろん日米同盟がありますから、これに伴ってアメリカがそれなりのアクションをするだろうという希望的観測はありますが、ウクライナは防衛のために戦っているではないですか。あの動きは日本ではできないという状況です。

日米でつくる防衛に関するガイドラインでは、「島嶼の防衛に関しては日本が主体的に行う」 ~アメリカは「あらゆる協力をする」というスタンス

飯田)これは憲法9条にも関わってくる話ですが、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書いてあるなかで、どこまで対応できる想定なのでしょうか。

有本)もちろん、米軍との連携が前提ではあるのですが、誤解してはならないのが、「日米同盟」と言われている関係についてです。

飯田)日米同盟の関係。

有本)関係は深まってきてはいるのですが、それでもまだ対等ではない状況です。日米で防衛協議をするなかで、2005年くらいからいろいろなガイドラインを出してきています。

飯田)そうですね。

有本)尖閣の状況が厳しくなっていくなか、2010年の段階で日米の防衛当局がどのようなコンセンサスを持っていたかと言うと、「島嶼の防衛に関しては日本が主体的に行う」というものでした。日本の領土なので当たり前なのですが、島で何かが起きたときには日本が主体的に防衛する。それに対してアメリカはあらゆる協力をするというスタンスです。

飯田)主体的な防衛は日本がする。

有本)ですから、仮に尖閣諸島や他の島で何かがあった場合、まず動くべきは、当たり前ですが「日本なのですよ」ということです。その段階で自衛隊が他国の軍隊のように、絶対にやってはいけないこと以外、あらゆるオプションを持っている存在ではないとすると、制限がかかっている状態で島の防衛をしなければならないということです。

飯田)一旦獲られてしまうと、獲り返すのは難しいですよね。

有本)かなり難しいでしょうね。「盾と矛の役割分担」とよく言われますが、本当にアメリカが矛の役割を十分に果たすとは考えにくいところもあります。

飯田)「あらゆる協力」の部分で、まずは日本が動かなければならないですね。

有本)そうですね。

飯田)例えば相手が迫ってきているときに、「迫ってきているのだから、こちらから」ということができないとなると、先に獲られたものを獲り返すというパターンしかないということですね。

有本)難しい戦いを強いられることになります。

飯田)とんでもない犠牲を伴いながら。

2022年5月23日、日米共同記者会見~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/23usa.html)

台湾有事は日本有事と同じこと

有本)台湾海峡の危機が近づいてきている認識は皆さん持っているのですが、台湾有事は日本有事ですからね。与那国島と台湾は約100キロしか離れていません。

飯田)そうですね。

有本)「台湾で何かが起こる」ということは、「日本で何かが起こる」ということとほぼイコールなのです。そういう認識があれば、いまのような憲法審査会や国会での議論の状況にはならないと思うのです。

飯田)先週、沖縄の復帰50周年の取材で安全保障関係者と話をしたのですが、台湾有事のときに軍事的な効率性を考えたら、周辺の海域を中国軍が封鎖することは普通に考えられると言っていました。

有本)あり得ますよね。

飯田)海上封鎖されるということは航空も封鎖されるわけで、そうなると、沖縄本島などに物資が入って来なくなるのです。それを主権国家として許すかと言ったら許せないので、防衛出動せざるを得なくなる。

有本)そうですよね。

飯田)イコール日本有事だと。1つひとつドミノを倒していくと、ここにつながるということはすぐにわかる話です。

有本)しかも中国の言い分では、「尖閣は自分たちの領土」だと言っているのですから、当然、海峡封鎖はあり得ます。そこまでの想定は日本の防衛当局もしているのでしょうが、国民的な共有として国会の議論に結びつかせる必要があります。現状、あまり国防の体制変更の動きに結びついていないと考えると、自分の国のことながら、心配ですね。

専守防衛ということは、いきなり本土決戦になるということ

飯田)「専守防衛ということは、いきなり本土決戦になるということをわかっていますか?」と、自衛隊の人に言われたことがあります。

有本)そうなのですよ。

飯田)法律も、建て付け上は「やられなければこちらはやり返さない」ということです。

有本)「やらない」ということですね。「いきなり本土決戦である」ということは、ごく一部の識者が言っているだけです。「専守防衛」と言うと、いいことのように聞こえますが、実際は大変なことです。

飯田)そうですね。

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