まずは他国より「約2倍高い日本の電気代」を見直すべき

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ジャーナリストの有本香が6月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。6月22日公示となる参議院選挙での争点となる政策について解説した。

まずは他国より「約2倍高い日本の電気代」を見直すべき

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

参議院選挙、6月22日公示 ~政府は「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合を開催

参議院選挙は6月22日公示、7月10日投開票となる。多くの政党は物価高に対応するため、賃金の引き上げを選挙公約に掲げている。そんななか政府は21日、「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合を開く。

物価高と安全保障の問題が争点に

飯田)参院選の公示直前になりました。争点の話になりますが、ここに来て物価がクローズアップされています。

有本)物価に関しては日本だけでなく、各国の選挙にも大きな影響を与えています。いまはどの国でもインフレ率が上がっていて、例えばフランスの総選挙でも与党が苦戦を強いられる結果になりました。また、少し前ですが、オーストラリアでの選挙結果も与党に厳しいものでした。

飯田)そうでしたね。当時の与党だった保守連合が下野する形になりました。

有本)日本はそこまでドラスティックな結果にはならないだろうと、いまのところは予想されていますが、ロシアのウクライナ侵攻によって世界的に厳しくなっている状況です。日本でも岸田さんが早々に「物価高がいちばんの争点だ」とおっしゃっていましたが、日本の場合、それに加えて安全保障の問題が世界で最も大変な環境にあるのではないでしょうか。

飯田)東アジアの環境というものは。

賃金が上げられる環境をどのようにつくるか ~「どのように」が具体的に示されていない

有本)リンクしているでしょう? そういう点では、ここに対してどれだけ鋭い対策を訴えられるかどうかで、選挙結果が変わってくると思います。各党が何を言っているのかを見ると、どこも抽象的ですよね。

飯田)抽象的。

有本)要するに「賃金を上げる」とみんな言っているのだけれど、「どうやって」の部分が具体的ではありません。あるいは「補助金を出す」と言っていますが、それをやると、かえってのちのちまずいのではないかと。経済の循環をうまくつくり、賃金が上げられる環境をどうやってつくっていくかというところだと思います。

他国と比べて約2倍高い日本の電気代を見直すべき ~賃金を上げる環境にならない

有本)最近、私がどこでも言おうと心掛けていることがあるのですが、日本は電気代を下げないとダメです。国際比較でも日本の電気料金は、家庭はもちろん、産業用の電気代も高い。中国などとは比べてはいけないのだけれど、韓国と比べても倍額ぐらい違います。

飯田)倍。

有本)ヨーロッパの先進国と比べても、産業用の電気料金はかなり高い。円安で製造現場を日本に戻したいと考える企業があっても、戻せないですよ。

飯田)電気代がコスト高になってしまって、円安のメリットが相殺されてしまう。

有本)そうすると雇用の幅も広がらないし、賃金を上げる循環になりません。これは見直さなければいけない。

「エコ」への政策は世界の流れと逆

有本)きょう(21日)の新聞各紙を見ると、未だに「エコ」の方向に政策が行っているのですが、これは各国が見直す動きでしょう?

飯田)ドイツは石炭火力に戻るそうですね。

有本)ドイツは石炭です。フランスは物価指数が5.8%上昇で、過去最高のインフレ率だったのですが、それでもヨーロッパの他の国と比べればましなわけです。なぜかと言うと、天然ガスなどに対する依存度が低いからです。フランスは原発ですよね。

飯田)フランスは原発大国だと言います。

有本)フランスは原発で、ドイツは再び石炭に舵を切る。そしてイギリスは、これまで出していた電気自動車(EV)への補助金を打ち切るようです。電力は国力そのものなのです。日本はこの夏「テレビは一部屋で観て」などということを経産大臣が言って、節電だけを呼びかけていますが、賃金を上げることとは逆方向の動きですよね。

飯田)そうですよね。我慢ばかりですし。

まずは他国より「約2倍高い日本の電気代」を見直すべき

ドイツ西部ダッテルンの石炭火力発電所 EPA=時事 写真提供:時事通信

根本的に日本国内に産業を取り戻すことを考えるべき

有本)目標はどこだということです。もう少し根本を考えた方がいいと思います。賃金を上げるために自民党もいま、トヨタなどの労働組合と連携を始めています。

飯田)かなり近づこうとしていますね。

有本)政府と労働組合が一体となって賃金を上げていこうという、そういう発想ではもう難しいと思いますよ。

飯田)本気で賃金を上げたいのなら、春闘が行われる春先にやればいいのにと思いますよね。

有本)「なぜ、いま言うのですか? 選挙のためでしょう」ということです。このような付け焼き刃的なことでは、みんなが求める本当の意味での賃上げにはなりません。日本国内に産業を取り戻さないとダメですよ。

飯田)そうですね。

有本)コロナがようやく収束してきて、通常の経済活動に戻していこうというときに、「電力が足りません」ではあまりにもちぐはぐ過ぎます。

電気を何からつくるか ~原発をどうするのか

飯田)物価が上がる要因として、かなりの割合をエネルギー価格が占めていて、電気も含めて何を原料につくるかということです。化石燃料であれば輸入に頼ることになり、物価が上がってしまう。ここが連動しているということです。

有本)そうですね。ヨーロッパはそれがわかっているので、エネルギー対策に舵を大きく切っているわけです。日本の場合は、まず原発をどうするかという話ですが、みんな明確なことを言いません。

飯田)言いませんね。

有本)原発が政治的なイシューになりすぎてしまって、この話をすると叩かれてしまう傾向にあるのですが、現実論を避けているようでは難しいのではないかと思います。

石炭火力発電の高い技術を持っている日本

有本)化石燃料は先ほど、ドイツが石炭に回帰するという話がありましたが、日本も考える必要があるのではないかと思います。日本は石炭火力の技術を持っているし、いまは新しい技術にバージョンアップされているわけです。

飯田)石炭ガス化発電など。

有本)石炭に関して言うならば、安全保障上も日本と関係が強くなっているオーストラリアから輸入することは可能です。

飯田)かなり良質な石炭が取れると。

有本)そうです。しかも採掘している技術は、かなり日本に寄っているところがありますから。

飯田)日本の商社も入っていると。

有本)日本の機器を使って採掘しているということもあるので、いままでグリーンの方向にシフトしてきたのだけれど、状況を考えて現実論に転換することを言わなければいけません。

飯田)しかもまったくグリーンのことを考えないわけではなく、高効率なやり方です。

まずは他国より「約2倍高い日本の電気代」を見直すべき

ロシア軍から奪った戦車の上に立つウクライナ兵=2022年3月27日、キエフ郊外(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

再生可能エネルギーのリスクを考えると、旧来の電源を見直すべき

有本)バランスの問題で、例えば原発46基分の電力を今後、再エネでやっていくということですが、どう考えても現実的ではありません。家庭用の電気代に関しても、いま1割強の再エネの付加金が乗っているではないですか。

飯田)そうですね。

有本)「これを増やしていくのですか?」という状況です。再生可能エネルギーに関しても、さまざまなリスクが具体的にアナウンスされ始めています。例えば太陽光発電のパネルの約8割が中国産で、そのうち6割近くは新疆ウイグル自治区産である。ですから、アメリカは基本的に輸入しない方向になっています。

飯田)アメリカは。

有本)それから太陽光パネルそのものの劣化、あるいは災害での対応の問題があります。風力もそうなのですが、こういうことを考えると、旧来の電源を見直すべきで、経済のインフラをつくっていくところから始めなければいけないと思います。

安全保障への国民の関心は高いが、遅々として進まない「憲法改正」

飯田)物価やエネルギーと並んで争点とされているのが安全保障です。

有本)安全保障に関しても、みんな「フワッ」としたことを言っています。例えば自民党は憲法改正を早期に実現すると言っていますが、「既に早期ではないのですけれど」という感じがします。

飯田)自民党は「党是として改憲」と言っているので、そうすると60年以上ということになります。

有本)去年(2021年)、一部の党派の代表からも「この参議院選挙に合わせて国民投票をやるぐらいの」という発言もあり、そのくらいのスピード感が求められると思っていましたが、そうはならず、という感じですね。

飯田)野党側も立憲民主党は「国民投票法は改正すべきだ」という話で、共産党は「憲法を守れ」と。国民民主党は「緊急事態条項を創設しよう」。日本維新の会は「自衛隊を明確に規定しよう」、公明党は「自衛隊の明記を検討」というような形で、さまざまな主張をしています。

有本)難しいですよね。果たして今年中に憲法改正の発議が現実のものになるかというと、いまの各党首の方々の話を聞いても、そこまでの勢いは見えないですね。

飯田)世論調査などを見ると、安全保障への関心が高まっているだけに。

有本)テレビ番組などでリアルタイムのアンケートを実施すると、防衛費の増額については多数の国民が賛成しています。これはいままでになかったことで、おそらくウクライナの現状を目の当たりにしたことと、日本が3ヵ国の脅威と対峙しなければならないということを、国民はわかってきたのだと思います。

飯田)中国、ロシア、北朝鮮ですね。

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