「サハリン2」からの撤退に反対してきた「経産省の責任」は極めて大きい

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ジャーナリストの須田慎一郎が7月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本の商社も参加する石油・天然ガスの開発事業、「サハリン2」について解説した。

「サハリン2」からの撤退に反対してきた「経産省の責任」は極めて大きい

ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同) 写真提供:共同通信社

プーチン大統領が「サハリン2」の事業主体をロシア企業に変更する大統領令に署名

ロシアのプーチン大統領は6月30日、日本の商社も参加する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について、事業主体をロシアが新設する企業に変更し、現在の事業会社の資産を無償で譲渡するよう命じる大統領令に署名した。事実上ロシア政府が接収することになる。

飯田)「経済制裁に対する日本への報復ではないか」というようなことも言われています。

須田)報復であることは間違いないでしょうね。イギリスの石油大手シェルがいち早く4月の段階で撤退を決めて、事業譲渡に動き出していたのですけれども、その一方で、会計処理上、全額損金処理で落としていたのです。そういった点で、日本サイドの動きがあまりにも鈍かったということは言うまでもありません。

飯田)日本の動きが鈍かった。

須田)日本が輸入している天然ガスの約9%が、ここに依存しているのです。その代替をどこに求めるのかというところも、まだ方向性が見えていません。この辺りも大きなミスだと思います。

「サハリン2」からの撤退に一貫して反対してきた経産省の責任は極めて大きい ~未だに代替案もない

須田)なぜこんなことになってしまったのか、新聞等々が報じないのだけれども、これに関しては資源エネルギー庁を中心とする経産省が、一貫して撤退に反対してきたからです。

飯田)経産省が撤退に反対してきた。

須田)民間企業である出資会社としては、撤退を含めて検討し、その可能性を模索していくべきだったのに、国の方針に企業が引きずられてしまった。もともとサハリン2自体が国策に近いものだったから、そうなってしまうのは当然なのだけれども、経産省の責任は極めて重いと思います。

「アークティックLNG2」と「サハリン2」をワンセットで進めていた日本 ~「サハリン2」から撤退してしまうことで「アークティックLNG2」も失うことを恐れたか

飯田)サハリン2については、2月にロシアがウクライナ侵攻を始めたところから取り沙汰されていた話ですよね。

須田)なぜ撤退しなかったのかと言うと、ロシアのサハ共和国の北極海に面したギダン半島という半島があるのですが、実は日本は官民一体となり、兆円規模の大規模な投資を行って天然ガス開発を進めていたのです。そことのワンセットでした。これもあまりうまくいってはいないのですけれども。

飯田)「アークティックLNG2」というものですか?

須田)そうです。日本はいきなり再生可能エネルギーにシフトしていくのは難しいということで、水素エネルギーの可能性を模索しているのです。水素は天然ガスから分離するということで、一旦、水素でワンクッションおいてカーボンニュートラルを目指していくということです。水素は燃やしてもCO2を出しませんから。

飯田)水になるだけですものね。

須田)そうです。経産省の日本のエネルギー戦略、加えてカーボン・オフセット戦略とワンセットでロシアとの関係、天然ガスの開発を捉えていた。サハリン2から簡単に撤退してしまうと、そちらを失いかねないという恐れがあったのだと思います。

ウクライナ戦争が終わったらロシアとの関係が「元の状態になる」という日本の状況認識の甘さ

飯田)なるほど。菅政権時代、「2050年までにネットゼロ」ということを国際公約的に掲げてしまっていますものね。未だにそこに囚われているところがありますか?

須田)日本はウクライナ戦争が終わったら、「ロシアとは元の状況になるのだ」という変な思い込みがあるのです。しかし、欧米にはまったくありません。戦争が終わってもロシアとはいまの状況が続く。だからみんな撤退するのです。日本政府の状況認識の甘さが表れています。

今後のエネルギーに関しての対策がされていない日本の危うさ

飯田)撤退もするし、ドイツは再度、石炭火力の方向に向かう。あるいはLNGをスポットで買っていこうというような話になっています。日本だけが何も手を打っていないということでは、今度は冬が心配になってきますね。

須田)戦争が終わったあとに元の状況に戻る、その間の代替として、期間をつなぐ措置としてスポットで買えばいいではないかという考えです。少々高くても、元に戻るのだからと考えているのかも知れませんが、そうではありません。元には戻らないのです。イギリス、そしてEU域内には、実はロシアと同等の化石燃料が埋まっているのです。

飯田)そうなのですか。

須田)ただ、環境活動家の反対が大きいので、そこは活用してこなかった。しかし、いまはその活用も含めて模索し始めています。

飯田)事ここに及んだら環境も大事だけれど、そちらは一旦置こうかという議論になるのですか?

須田)それに比べて日本はないのだから、どうするのかということです。その辺りの青写真がまったくない。ノープランだというところがいちばん問題だと思います。

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