「有事の経済戦争」であるいまこそ、「原発再稼働」が急務

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経済アナリストでSBI FXトレード社外取締役のジョセフ・クラフトが7月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の日本経済について解説した。

「有事の経済戦争」であるいまこそ、「原発再稼働」が急務

【節電要請期間始まる】デジタルサイネージ(右)は消灯、通常よりも照明が間引かれたダイソー大阪梅田店=2022年7月1日午後、大阪市北区 写真提供:産経新聞社

参議院選挙から一夜明け、岸田総理大臣が「戦後最大級の難局。有事の政権運営が求められる」と述べる

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岸田総理)いまの日本は大きな課題が幾重にも重なり合い、戦後最大級の難局にあると考えています。

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岸田総理は新型コロナやウクライナ危機などに関して、「戦後最大級の難局にある。乗り越えていくためには有事の政権運営が求められる」と強調。総理が掲げる「聞く力」と「決断と実行」を政権運営の両輪に位置付けた。

「有事の政権運営」における2つの課題 ~エネルギー供給と物価の安定

飯田)選挙に勝った会見ではありましたが、厳しい表情を見せることもありました。それだけ、やることがいろいろとあるということでしょうか?

クラフト)総理がおっしゃっていた「有事の政権運営」とは、まさにその通りで、いまは経済戦争だと考えるべきだと思います。2つ重要な課題があって、1つはエネルギー供給、もう1つは物価の安定です。この2つの大きなリスクについて、どのように対処していくのかということです。

飯田)エネルギー供給と物価の安定。

クラフト)今回の選挙で、原発の再稼働については期間限定でもいいので、総理令などを発動して早急に再稼働できるようにするべきではないでしょうか。

「資産所得倍増プラン」とは何なのか

クラフト)また、総理が掲げている「資産所得倍増プラン」も急務です。インフレは早期には下がりませんので、所得を上げていく。それと同時に、この「資産倍増とは何なのか」ということです。預貯金を投資に向けていくということですが、ここの具体化が求められている部分ではないかと思います。

日銀は金融緩和は排除せずとも、柔軟な姿勢で金融政策を運営するべき ~インフレを助長しかねない

飯田)エネルギーと物価の2つが絡まり合っているというか、物価上昇の寄与率を見ると、ガスや石油を輸入する部分の価格の上昇が相当効いているようです。

クラフト)いままでは、それが最大の上昇率だったのですが、現在、エネルギー価格は少し高止まりで落ち着いています。しかし、その他の製品等もいま上がり始めています。原油が上がると、エネルギーはいろいろな製品に使われているので、インフレはこれからさらに高止まっていくのではないでしょうか。当然、財政でどのような還元策が取れるのかということは大切です。そして、やはり金融です。いまは景気の下支えを優先しているのですが、逆にインフレも助長しかねないような政策なので、少し矛盾があります。それをどのように政府と日銀が埋めていくのかということが問われていると思います。

飯田)そこが進みすぎるとアメリカと同じように、物価を見ればブレーキを踏まなければならないのだけれど、経済を見ればアクセルも踏まなければならないということになる。

クラフト)アメリカは2021年の夏ごろにインフレが取り沙汰されましたが、中央銀行は一時的ということで、あまり危険視しませんでした。そのため、いまになって後手に回ることになっているのです。

飯田)危険視しなかったため。

クラフト)1年遅れで日本も、いままでデフレばかり重視してきて、インフレは大丈夫だと思っていると、FOMCの二の舞になりかねません。金融緩和の枠組みは排除せずとも、もう少し日銀も柔軟な姿勢を取って金融政策を運営していくべきではないか、という声が高まっています。

日銀は長期の金利は幾らか上げる枠組みを模索してもいいのでは

飯田)いま日銀は基本的に、10年債の利回りをゼロ近傍に抑えるという、イールドカーブ・コントロールを行っています。いまはゼロ近傍だということで、「ゼロよりも金利が上がったら我々は買い取る」という対応をしていますが、少し金利を容認するという感じになるのでしょうか?

クラフト)そうですね。キーポイントはイールドカーブを立たせるというか、手前の金利は低く抑えつつも、長期金利は多少の柔軟性を持たせて、幾らか上げてもいいのではないかと個人的には思います。国債市場の機能も日銀ばかりが買っているので、機能不全になりつつあるという懸念が高まっています。ここも少し日銀が柔軟性をもたらしてもいいのではないかと思います。

飯田)イールドカーブというと、グラフのカーブのように思うのですが、中心が10年国債をゼロとして、それよりも年限の短いものは「マイナスも許容してゼロぐらいで」となる。本来であれば、「1年預金や2年預金は少し利率がいい」ということになっているのが、いまはほとんど寝てしまっています。ほとんどすべて金利が付かない。

クラフト)イールドカーブというのは長期の方が高くて、短期が短いですね。ただ、今回は10年ばかりを抑えていたので、5年~7年の金利が10年を上回るという、少し異常な情勢にもなっています。そのため、日銀も少し手前を抑えつつ、長期は少し上げてもいいような柔軟な枠組みを構築・模索してもいいのではないかと私は思います。

「有事の経済戦争」であるいまこそ、「原発再稼働」が急務

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

政府と日銀の言っていることの矛盾 ~市場にメッセージとして伝えるべき

飯田)その辺りを政府と日銀が、どのように歩調を合わせていくのかということになるのですね?

クラフト)そうです。「物価を抑える」と政府は言い、日銀は「金融緩和を続ける」と言って、矛盾しているわけです。もう少し波長を合わせていかなければ、結果として何が起きるのかというと、円安になります。そして円安によるインフレ助長ということになりますので、その矛盾をもう少し市場にメッセージとして伝えていかなければならないと思います。

エネルギーの供給安定が大切 ~一時的な国内の原発再稼働が急務

飯田)経済対策、財政出動も、やり過ぎるとインフレになってしまう。そうは言っても、日々暮らしている身からすると、「賃金も上がらないし景気もよくない」ということを実感する人も多いと思います。この現状に対して、政府としては、どのような政策が打てるのでしょうか?

クラフト)気になるのはエネルギー価格、特に電気代やガス代です。夏場に大幅に上がり、停電のリスクもあります。

飯田)「節ガス」という文字が、経済新聞などにも出てきています。

クラフト)いま「経済戦争」と言っている趣旨の1つは、ロシアが日本へのガス供給を止めるかも知れないということです。このようなリスクがあるなかで、一時的に国内の原発再稼働が急務ではないかと思います。それによってエネルギー価格を安定させ、インフレを抑制する。プラスアルファで、財政でどこまで家計の支援ができるかを模索していくということが、まず先だと思います。

飯田)電気代やガス代がかなり家計の負担になっていることが、家計調査の数字などでも如実に現れています。

クラフト)当然、お店や企業もコストが高くなり、収益が減り、給与が上がらないという悪循環になりますので、少なくともエネルギーの安定供給は大事だと思います。

消費税を下げることは年金支給の不安につながる

飯田)今回の選挙では、財布にお金を戻すという意味で、「時限的でもいいから消費税を下げるべきではないか」という議論が野党から出てきましたが、この辺りについてはいかがですか?

クラフト)個人的には反対です。消費税には年金を安定させるという目的があります。一旦下げた消費税を上げるということは、政治ではなかなかできません。年金の支給に不安があると、生活不安が経済を逆に押し下げてしまいます。消費税を下げるのではなく、他の減税や財政出動で補っていくべきだと思います。

飯田)ガソリンに関しては、補助金で手当てする形で元売りに出していますが、電気代などは何もしていないのと同然ですよね。

クラフト)何もしていないですね。日本はポイント好きなので、節電ポイントを出しています。それが節電につながればいいのですが、大きな解決方法ではありません。やはり供給面を確保するという意味では、原発再稼働を短期間でもやらなければいけないと個人的には思います。

有事の経済戦争であるいまこそ、原発再稼働が急務

飯田)経済戦争の引き金となる部分で、ロシアによるウクライナへの侵攻があります。これが長引くうちは、経済戦争の環境もあまり変わらないということでしょうか?

クラフト)変わらないどころか、今後、プーチン大統領はいろいろな揺さぶりをかけてくると思います。日本だけではなく、欧米にもかけてきます。そうするとエネルギー供給が減らされて需要が高まり、価格が上がってしまう。

飯田)エネルギー需要が高まり。

クラフト)対応策を打ち出さないと、プーチン大統領の思う壺になってしまいます。しかし、プーチン大統領にひれ伏してもいいのかと言うと、まったくそのようなことはありません。国内にはエネルギー供給となる原発があるので、安全を確認しつつ、有事ですから、いままで以上に敏速に再稼働を進めていかなければいけないと思います。

飯田)冬に向けてと考えると、特にヨーロッパはいままではロシアからのパイプラインでガスを供給していて、それが暖房などの命綱でもあったわけです。冬に向けて相当、供給が引き締まる可能性が高いということでしょうか?

クラフト)そうですね。夏は熱中症、冬は寒さというように、これは命に関わる問題です。ただ単に家計の可処分所得が減るという問題ではありません。そのような意味で有事、経済戦争なのです。人の命がかかっていると考えて、原発再稼働を急務として進めていただきたいと思います。

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